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映画「メゾン・ド・ヒミコ」人への観方が変わる!孤独を抱える人々を描くヒューマンドラマ

犬童一心監督と脚本家渡辺あやによるタッグ第2弾映画『メゾン・ド・ヒミコ』。ゲイのために設立された老人ホームで繰り広げられる、孤独と温もりを映し出すヒューマンドラマです。心を優しく包み込んでくれる本作の見どころを紹介します。

すべての孤独な人に送る温かい愛の物語


2005年公開の映画『メゾン・ド・ヒミコ』は、ゲイたちの日常をメインに描いたヒューマンドラマです。

2003年に公開された映画『ジョゼと虎と魚たち』で注目を浴びた犬童一心監督と脚本家の渡辺あやが再びタッグを組み、約5年もの構想期間を経て制作されました。

当時はまだLGBTを取り上げた映画作品は多くありませんでしたが、このデリケートな題材を大胆かつ優しい切り口で扱った本作は、多くの人を魅了しています。

映画のキャッチコピーは「涙はきっと暖かい」。

人の温かさに触れられる本作の魅力を、あらすじや見どころから紹介します。

ゲイのための老人ホームで生まれる不思議な関係

▲メゾン・ド・ヒミコ(予告編)

工務店の事務員として働く沙織は、地味を絵に描いたような人物。

そんな彼女の元に、岸本春彦と名乗る若く美しい男から連日連絡が入っていました。

彼女が春彦からの接触を避けるのは、彼が自身と病気の母親を捨ててゲイとして生きる道を選んだ父親「卑弥呼」と深い関係にあるから。

ついに直接会いに来た春彦から、父親が末期がんで余命わずかであることを聞きますが、父親を心底憎む彼女は取り合おうとしません。

しかし、3年前に亡くなった母親の医療費のために作った借金に苦しんでいた彼女は金が必要であることを突かれ、あるアルバイトを引き受けることに。

そのアルバイト内容とは、父親が建てた老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」で毎週日曜日だけお手伝いをすれば、3万円の給料がもらえるとのことでした。

そこには、父親以外にも7人の個性的なゲイやニューハーフが住んでおり、彼らに強い偏見を持つ彼女には耐え難い環境でした。

ところが、彼らの人となりや弱さに触れていくうちに、少しずつ彼女の観方が変わっていきます。

住人のために感情的にすらなる彼女に、春彦の気持ちも次第に変化。

ところが、彼らに残された時間は刻一刻と短くなっていくのでした。

実力派俳優陣が魅力あふれる演技で熱演!


ゲイのための老人ホームを舞台とする本作は、実力派キャストの共演で注目を集めました。

主人公の沙織役を演じるのは、女優の柴咲コウ。

ほぼすっぴんで撮影に挑み、外見に頼らない内面の強さや儚さを丁寧に演じて、女性としてのかわいらしさを表現しています。

春彦役を演じるのは、俳優のオダギリジョー。

男性的な面と女性的な面を持つゲイという難しい役どころを、自然体かつ色気たっぷりに演じ、多くの女性ファンを魅了しました。

沙織の父親であり春彦の恋人である卑弥呼役は、俳優の田中泯が演じています。

周囲の人たちに愛されてきた卑弥呼というキャラクターを体現するように、佇まいから女性を越えた美しさをまとい、存在感を放っています。

その他にも、個性的なキャラクターが多く登場するので、どのキャストがどのように演じているかにも注目してみてください。

人々が抱える孤独と人間関係の温もりに触れるストーリー


本作では、主人公の心境の変化が重要な見どころです。

沙織は当初、ゲイである彼らに最も差別的な目を向けていました。

父親に捨てられて苦労してきたことが原因でしたが、憎しみが強いあまりゲイそのものを毛嫌いしています。

ところが、住人たちと過ごすようになってから、彼らをゲイとして一括りに見るのではなく、それぞれに事情を抱える個人として見ることができるようになっていくのです。

偏見は、相手を知ろうとせず想像で勝手に決めつけてしまうために生まれます。

もっと視野を広げて周りを見るなら、彼女のようにそれまでは得られなかったかもしれない良い人間関係を築けるでしょう。

人としての観方や在り方を考えさせられますね。


また、LGBTの人たちが抱える孤独感や居心地の悪さが、柔らかなタッチで描かれています。

気持ちが分かる仲間同士で暮らしていても、周囲から受け入れられない寂しさが消えることはありません。

作中でも、近所の人に嫌がらせを受けたり、カミングアウトしていない家族に打ち明けるかを悩むシーンが出てきます。

普段は自分の生き方に自信を持っているように明るく振る舞ってはいても、人から拒絶される辛さには人一倍敏感でしょう。

だからこそ、自分たちを受け入れてくれた沙織に心を寄せるようになるのです。

彼らはLGBTの象徴として描かれているのではなく、孤独を感じ、人の温もりを求めるすべての人を象徴する存在。

誰もが持つ繊細な気持ちと人間ドラマをすくい上げるような描写で、内容に入り込みやすいストーリーになっています。

そして、父親を失おうとしている沙織と恋人を失おうとしている春彦。

2人が心を通わせていく様子にもドキドキさせられますよ。

「メイン・タイトル」は映画の世界観に寄り添うテーマ曲

画像引用元 (Amazon)

本作で音楽を担当するのは、映画音楽は18年ぶりとなるミュージシャンの細野晴臣。

アニメ映画『源氏物語』以来18年ぶりに映画音楽を手がけたことでも話題になりました。

本作でも数々の魅力的な音楽を提供していますが、特にテーマ曲となる『メイン・タイトル』の美しさは注目に値します。

温かみのある楽器の音色がベースのゆったりとした心地よい曲調は、耳なじみよく入ってくるでしょう。

そこに様々な電子音を巧みに組み合わせ、穏やかさの中にも張り詰めた緊迫感がある独特なメロディに構築。

まるで複雑な人間関係そのものを描いているようで、本作のテーマにマッチする音楽となっています。

また、本作では細野晴臣による音楽以外にも、既存のディスコミュージックなどが起用されていて、音楽面でも見応えある作品です。

「メゾン・ド・ヒミコは人の愛おしさを教えてくれる

画像引用元 (Amazon)

ゲイたちの生活を映す映画『メゾン・ド・ヒミコ』は、すべての人が共感できる思いを描いています。

人は、たとえ家族や恋人であっても全部を理解することはできず、誰しも孤独です。

その中でも、誰かを理解したい、愛し合いたいと思うのが人間の常であり、魅力でもあります。

そんな当たり前の温かい感情を持つ人は皆、性別に関わりなく愛おしい存在なのです。

映画『メゾン・ド・ヒミコ』は、きっと懸命に生きるあなたにそっと寄り添ってくれる映画になるでしょう。


TEXT MarSali

1947年東京生まれ。音楽家。 1969年「エイプリル・フール」でデビュー。1970年「はっぴいえんど」結成。73年ソロ活動を開始、同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。 78年「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者···

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