この曲はポッキーCM曲として使われました。それまでバラードなどじっくり聴かせる曲が多かったいきものがかり。このグループの新たな、テンションの高い一面を見せたハジけた楽曲です。非常にPOPな曲調で、歌詞もPOP。歌詞はひらがなとカタカナと英語と漢字を全て混ぜて使っています。
公開日:2016年1月9日
いきものがかりの楽曲の一つ『じょいふる』。2009年発売の『YELL』との両A面シングルです。
この曲はポッキーCM曲として使われました。それまでバラードなどじっくり聴かせる曲が多かったいきものがかり。このグループの新たな、テンションの高い一面を見せたハジけた楽曲です。非常にPOPな曲調で、歌詞もPOP。歌詞はひらがなとカタカナと英語と漢字を全て混ぜて使っています。
グループ名の「いきものがかり」はひらがな表記。こうすることで生き物係という元の意味以上に、物語がかかっているように見えるし、神がかっているようにも感じる。そういう響きを狙っています。狙っていないで感覚だけで出来ているならもっとすごいですね。いきものがかりはこういった言葉の使い方が巧み。それがこの『じょいふる』でもよく分かります。
タイトルの「じょいふる」は「楽しい」「嬉しい」の意味の「JOYFUL」。これがひらがな表記の「じょいふる」なのは親しみをもってもらいたいからです。「JOYFUL」と「じょいふる」で並べるだけでも、日本人の目にはひらがなのほうがすぐ入ってきて、かつ柔らかく感じます。また、この英単語自体の意味が比較的浸透しているので、ひらがなでも意味が伝わりやすい。そこを狙っています。
“キミノコエヲキカセテ サア ボウケンシテミナイ タノシイコトハジメヨウ”
歌いだしのフレーズは全てカタカナ表記。「君の声を聞かせて さあ 冒険してみない 楽しい事始めよう」をあえてカタカナにしているのはなぜでしょう。これは、真剣に言うのは気恥ずかしいことをカタカナにしてPOPにしているんですね。漢字だとちょっと硬いイメージもあり、カタカナにすることで記号のようにもできる。そんな効果。
「JOY」「POP」「HAPPY」などの英語はそのまま英語表記。これは英語の意味をそのまま伝えたいからです。
では漢字で表記している内容は何を表しているのでしょうか。歌詞上で「遊びたい」「笑いたい」という願望は漢字で表記しています。漢字で表記する内容はわりと真剣に思っていること。
“この指に 止まるのは どんな運命なんだ ぜんぶしたいな
じょいふるだって終わっちゃう エビバデいつか終わっちゃう
いついつも このトキも 最終型は きっと修正なしで“
このあたりの歌詞は漢字が多くなっています。漢字は真剣に思っていること。「じょいふるだっていつか終わっちゃう」ということを真剣に思っています。楽しいこともいつか終わることを自覚している。だから指に止まる運命はぜんぶ受け止めたい。この曲は楽しさの中に、楽しいこともいつか全て終わるという現実を密かに盛り込んでいるのです。だからこの曲は好かれるのだと思います。それはただ単に表面的な楽しさをなぞっているわけではないから。
こうして歌詞を一通り見てからタイトルの「じょいふる」を見返すと、英語の言葉にひらがなをあて、日本の情緒を入れ込んでいることが分かります。このグループは、やはり言葉の感覚が優れているんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)