白い雪のプリンセスの正体は?
歌詞を考察する前に、曲のタイトルにもなっている「白い雪のプリンセス」とは、一体誰のことなのかを考えていきます。
ディズニー映画「白雪姫」はご存知でしょうか。
継母が作った毒リンゴを食べて、眠るように倒れこんだ白雪姫が王子様のキスで目覚めるストーリーは有名ですよね。
しかし、この曲をディズニー映画の「白雪姫」についての曲だと思って聴いていると、途中から違和感が生まれます。
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鏡よ鏡よ鏡さん ネクタイ任せや 頬に挨拶するから
妬みを買われてしまった
7つの小人はいるけど 助ける素振り、知らん振りね
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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これは2番の冒頭部分ですが、歌詞の中に「ネクタイ」という現代のワードが登場します。
さらに童話では白雪姫に協力する「七人の小人」を類推させる「七つの小人」という歌詞が出てきますが「知らん振り」とあり、童話の内容とかけ離れています。
この歌詞から「白い雪のプリンセス」は白雪姫ではない別人、つまり現代にいる少女ではないかと思われます。
「七つの小人」という表現も現代風に解釈すると「七歳の小学生」と表現できそうです。
童話の小人が男の子であるところから、主人公は弟を持つ姉だと思われます。
この前提を念頭に置いた上で、歌詞を考察していきましょう。
現代で起こった「嫉妬」が生み出す衝撃的な内容
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優しいフリした彼女が 素敵な晩餐もてなさった
そっと口に含むと [笑み]
薄れゆく意思の中で 夢を見てる いつかのおとぎ話
時が止まる
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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この「彼女」というワードに注目です。
主人公である少女は、姉という位置から家族と暮らしていると想像できます。
「彼女」とは主人公に晩餐、すなわち夕食を出す人ということから、主人公の母親と考えられそうです。
主人公がその夕食を食べた途端、意識がなくなり時が止まり倒れてしまいます。
その時、母親は笑みを浮かべている。
この光景、見覚えがありませんか。
そう、毒リンゴを食べてしまった白雪姫とそれを食べさせた女王という映画「白雪姫」と同じ構図が展開されているのです。
この時主人公は、自分が倒れている姿を白雪姫のようだと感じています。
ではなぜ母親は、自分の娘にこのようなことをしたのでしょうか。
その理由はこの歌詞の前、冒頭部分にありました。
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鏡よ鏡よ鏡さん 世界で一番可愛がるのはやめてよ
棘のような視線迫る
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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この「鏡」は、家族の中でまだ登場していない人物、主人公の父親を意味しているのでしょう。
子どもにも恵まれた夫婦でしたが、少女の父親はいつしか一番の愛情を妻ではなく、娘である主人公へと注ぐようになっていったと読み取れます。
その嫉妬心から、主人公の母親が娘に棘のような視線を送っているのでしょう。
夫をとられたと思いこみ、生まれた娘を妬んでいく母親。
想像すると驚きのシチュエーションですね。
実の母親ではなかなか考えにくい構図のため、この母親は童話の白雪姫と同じく継母で、主人公は父親の子どもと考えると自然かもしれません。
母親が起こした決定的行動。少女はどうなる?
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そっと首を掴まれ [笑み]
一粒の涙さえも拭えなくて 呼吸もままならない
視界失せた
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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妬みによる憎悪が限界に達した継母は、主人公の首を締めて殺そうとします。
呼吸が薄れ、感情も表現できず、主人公の意識は闇に落ちていきます。
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望まない憎まれは 深い愛の二乗
もうすぐで いなくなるのかな
途切れてく命の音 毒リンゴを食した少女のように
眠りにつく
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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可愛さ余って憎さ百倍という言葉がある通り、主人公に夫をとられたと思っている母親は、夫に与えていた愛よりもはるかに大きな憎しみを主人公にぶつけます。
主人公もとうとう自分の心臓の鼓動が途切れるのを感じ、死を覚悟し始めます。
絶体絶命な少女。王子様は現れるのか?
まるで映画のヒロインのような状況に陥っている主人公。
白雪姫になくてはならないのは、救出する王子様の存在です。
彼女は王子様のキスで目覚めてハッピーエンドという結末が待っていますが、果たしてこの主人公には王子様という救世主は現れるのでしょうか。
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お願い KISS で目を醒まして欲しいの
白い棺から 連れ出すように
突き刺さる憎しみは ドラマ的な事情
祈っても 王子様は まだ来ない
消えてしまうその前に・・・
≪白い雪のプリンセスは 歌詞より抜粋≫
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残念ながら答えはNOです。
どんなにここから助けてほしいと祈っても、継母の手から救い出してくれる救世主は現れる様子はありません。
主人公は白雪姫のようなハッピーエンドにたどり着くことはできませんでした。
「白雪姫」の物語には、様々な種類が存在するのはご存知でしょうか。
最初にご紹介した、ディズニーが制作したハッピーエンドの映画「白雪姫」が一般的に知られている物語でしょう。
しかし、もとになっているグリム童話の「白雪姫」では、王子様のキスで目覚めるという話は全く出てきません。
そのグリム童話も何度も書き直されており、一番最初の物語である「白雪姫」では、彼女を殺そうとする女王は継母ではなく、なんと実の母親になっています。
『白い雪のプリンセスは』は、投稿されてから約10年以上経過している楽曲です。
この楽曲にここまでの深い意味があったことに気がつかなかった方もいるのではないでしょうか。
歌詞の意味を把握した後にこの曲を聞くと、また違った見え方があるかもしれません。
まだ聞いたことのない方、長らく聞いていない方も、ぜひ聞いてみてはいかがでしょうか。
TEXT こびぃ