疾走感溢れるロックナンバー
若手ロックバンドの代表格、『ハルカミライ』。
いい意味で飾り気のないストレートな楽曲が人気を集め、2019年にメジャーデビューを果たした4人組バンドです。
そんな彼らが2020年7月に2枚目のアルバム『THE BAND STAR』をリリースしました。
アルバムの収録されている全10曲の中から『夏のまほろ』の歌詞を読み解いていきます。
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35℃に届きそうな
初夏の気温でも piece of cake
強がりを美学に変えながら俺は考えた
昔に戻れたらどうする?
もう少し甘えた方が良かった
そしたら努力も運も味方に付いたかもな
≪夏のまほろ 歌詞より抜粋≫
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『夏のまほろ』というタイトル通り、冒頭では夏のある1日の様子が歌われています。
どうやら暑い夏の日、体に堪えるような暑さも気にならないほど真剣に考え事をしている様子。
何について考えているかというと、自分の過去について。
「もう少し甘えた方が良かった」なんて後悔も垣間見えますね。
誰に対してかはハッキリとは歌われていませんが、過去を思いながらややセンチメンタルな気分になっているようです。
サビはとてもノスタルジック
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夏の向日葵 向日葵
白球がフェンスを越える
PM5:00のサイレンが BGM
取り戻せなくなった眼差しが見守る
≪夏のまほろ 歌詞より抜粋≫
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こちらはサビ前半の歌詞。
まるで夏休みの1日を連想させるような言葉がたくさん並んでいます。
ここは過去の回想シーンなのかもしれませんね。
青空の下で咲く向日葵
その近くで野球でもしていたのでしょう。
夢中になって遊んでいる中17時を告げるサイレンが鳴り、「そろそろ帰らなきゃ」なんて慌て始める光景が浮かんできます。
それにしても、そんな彼らを見守る「取り戻せなくなった眼差し」とは一体誰のものなのか気になりますよね。
こちらも誰なのかハッキリと歌われていませんが、タイトルや歌詞から推測すると「母親」を指しているのではないでしょうか?
ここで一度タイトルの意味を考えてみましょう。
『夏のまほろ』の「まほろ」は、正確には存在しない言葉。
代わりに近い言葉としてあげられるのが古語の「まほら」です。
現代語でいう「まほろば」のことですね。
まほろばというのは「素晴らしい場所」「住みやすい場所」を指します。
これらを踏まえて考えてみると、『夏のまほろ』とは「夏、慣れ親しんだ場所で過ごした日の思い出」というような意味になるのではないでしょうか?
ということは、「取り戻せなくなった眼差し」というのは慣れ親しんだ場所にいる誰かのこと。
冒頭での「もう少し甘えた方が良かった」という歌詞も含めて考えると、母親のことを歌っていると考えられますよね。
夏の日に友達と野球をする自分、それを遠くから見守る母。
とてもノスタルジックな情景ですね。
サビ後半の「熱さ」とは?
サビの後半部分では少し季節が進みます。
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秋の陽だまり 陽だまり
あんなに尖ってた熱さは
全てを包み込んで
歩き続ける俺の胸を温める
≪夏のまほろ 歌詞より抜粋≫
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「陽だまり」という単語からまだ暖かい気候であることがわかります。
とはいえ、季節が進んでいることから時は流れている様子。
歌詞から推測しても、後半部分は「今の自分」の視点であるように思えます。
そんな今の自分の胸を温める「熱さ」とは一体なんなのでしょう?
明確な答えは記されていませんが、前後の歌詞から推測すると「時間を忘れるほど夢中になって白球を追い求めていた頃のまっすぐな気持ち」を指すのではないかと思われます。
昔の心温まる思い出。
当時のまっすぐな思い。
それは今の自分にとって、かけがえのないものであるようです。
続くパートは一気にメロウなトーンに転調します。
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夏の向日葵 向日葵
熱狂の中にはもうちょっと
残っていたかったなあ
帰り道に太陽が映す陽炎
≪夏のまほろ 歌詞より抜粋≫
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「熱狂の中にはもうちょっと残っていたかった」という発言は、「もう少しあの頃のまま遊んでいても良かったなぁ」という思いが込められているのでしょうか。
全体を通してノスタルジックな思い、ノスタルジーに浸る様子が歌われているようです。
「もう少し母親に甘えても良かったなぁ」
「あの時の思い出ってすごく大切だなぁ」
「もうちょっとあのままでも良かったなぁ」
なんてちょっぴりセンチメンタルな気分になりつつも、疾走感溢れるメロディーからは現在の自分もまっすぐ前進し続けているようなエネルギッシュさが感じられます。
皆さんも『夏のまほろ』を聴きながら、ノスタルジーに浸ってみてくださいね。
TEXT ゆとりーな