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King Gnu「どろん」が描く現代のネット社会の脆さや怖さ

驚異の才能を持ったメンバーで構成されているトーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンド『King Gnu』。今年の1月に発売された3rdアルバム「CEREMONY」の収録曲『どろん』から現代のネット社会の脆さや怖さについて独自の視点で読み解いていきます。

「どろん」の意味とは?

▲King Gnu - どろん

『どろん』は映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」の主題歌に起用されています。

この曲は映画で描かれる「愛情への不安や焦燥感」を「ネット社会の脆さ・怖さ」をシンクロさせて描いています。

登場人物である刑事・加賀谷と殺人鬼・浦野の関係性に、キツネとタヌキの化かし合いを感じ、そこから『どろん』というタイトルに結びつけたそう。

キツネとタヌキの化かし合いは「悪者同士がお互いに騙し合う」という意味です。

ネット社会は、見えない者同士のやり取り。誰が悪者かは分かりませんよね。

そんな現代はネット社会であるため、キツネとタヌキの化かし合いは私たちのすぐそばにあるのかもしれません。

『どろん』の歌詞からネット社会の脆さや怖さについて読み解いていきます。

自分の味方はどこにいる?


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いつだって期限付きなんだ
何処までも蚊帳の外なんだ
血走って噛み付いた
味方は何処にいるんだ?
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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蚊帳の外とは、仲間外れ・集団の中で無視されるという意味。

主人公は現実の世界で孤独感や疎外感を感じているのでしょう。


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今日だって
傷を舐めあって
面の皮取り繕って
居場所を守ってるんだ
あなたの事を待ってるんだ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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このフレーズは私たち人間のリアルな心情を表現しているのではないでしょうか。

現実と同じようにネットの中にも自分の居場所というのは存在します。

また、ネットやSNSが普及したことにより、今はどこにでも自分の居場所を作ることができます。

主人公は現実の世界ではなくネットの世界に、自分の味方を一生懸命探しているのでしょう。

味方、つまり自分と同じような人間を待っているのかもしれません。

自分と同じ人間がネットの社会にいたら孤独感や疎外感はなくなりますよね。

そんな今日もお互いが見えない世界で、自分を取り繕いながら似たもの同士が集まる。

そして、自分の居場所を守っているのでしょう。

ネット社会は一歩踏み間違えば人生が狂う


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人生にガードレールは無いよな
手元が狂ったらコースアウト
真っ逆さま落ちていったら
すぐにバケモノ扱いだ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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ここではネットの恐ろしさを表現しているのでしょう。

人生にもネット社会にもガードレールのように守ってくれるものはありません。

守ってくれるものがないからこそ、一歩踏み間違えれば自分が思ってもいなかったことが起きることもあるのでしょう。

ネット社会の恐ろしいところは、誰もが簡単に闇に落ちてしまうこと。

ある日突然、自分の何気ない発言やたった一言が大きな影響を与えたり、批判を浴びたりすることもあります。

いままで味方だった人が突然敵になることもあるでしょう。

その結果、人生が一気に狂うこともあり得るのです。

そして、ネットで話題になった人に対して、世間はすぐにバケモノのように悪者として扱う。

それもまたネット社会の怖さであり脆さでもあります。


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其処を退け、其処を退け
今じゃ正義か悪か
それどころじゃないんだ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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ネット上で何が正義で悪かを言い合っている場合ではない、ということを言っているのでしょう。

顔が見えない者同士がネットで正義か悪かを言い争うのも、化けの皮を被って自分の正体を隠しているから。

そんな風に自分の存在を隠しネットで正義か悪かを言い争うのは、人間の弱さのせいなのではないでしょうか。

広い世界だからこそ分からなくなる存在意義


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駅前を流れる
人々を眺めてる
大都会
他愛のない
会話さえ
やけに煩わしくて
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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駅前で人の様子を傍観しているようです。

たくさんの人が行き交う中で現実の自分の孤独さを実感し、わざわざ気にする必要のない会話も煩わしく感じたのではないしょうか。


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ここはどこ、私は誰
継ぎ接ぎだらけの記憶の影
煌めく宴とは無関係な
日常へ吸い込まれ、おやすみ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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ここでは主人公が現実の自分の存在意義を見失っているのかもしれません。

あまりにもネット社会が身近すぎて、思わず現実の自分の存在意義が分からなくなってしまう。

そこがまたネット社会の恐ろしさでもあります。

そんな主人公は、愛情が溢れた華やかな世界とはかけ離れた日常を過ごしているのでしょう。

いつの間にかネット社会に葬られ、後に引けない私たち


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明日を信じてみませんか
なんて綺麗事を並べたって
無情に回り続ける社会
無駄なもんは切り捨てられるんだ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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主人公は現実の世界に冷めていて、呆れているようです。

社会に必要とされなくなったり、使えなくなったらどんどん切り捨てられてしまうのが現実の社会なのかもしれません。

だからこそ、主人公は現実の社会には何も期待していないのでしょう。


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大義名分のお通りだ
この通り不条理まかり通り
知らずのうち葬られようが
後には引けやしないんだ
≪どろん 歌詞より抜粋≫
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そんな現実もネット社会も人として守るべきだと言いながら、不条理を押し通されているのでしょう。

もはやこの世の中では、不条理を押し通すことが当たり前になっているのかもしれません。

「葬る」にも死体などをお墓などにおさめる・存在を隠して忘れさせるという2つの意味があります。

人生が狂ってしまうこと、ネットに自分の存在を隠しキツネとタヌキの化かし合いをしていること。

『どろん』はどちらの意味にも当てはまるのではないでしょうか。

そんな脆くも怖いにネット社会に私たちは知らずのうちに入り込み、葬られているのでしょう。

ネット社会に足を踏み入れたら、もう後には引けないのかもしれませんね。


TEXT 萌依

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。 その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Guitar/Vocal)、勢喜遊(Drums/Sampler)、新井和輝(Bass.)、井口理(Vocal/Keyboard)の4名体制へ。 SXSW2017、Japan Nite US Tour ···

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