ファンシーでファンタジーな歌詞
ボカロ界にて独創的な楽曲を生み出し続ける2人のボカロP「monaca:factory」と「k_zero+A」chiptuneからオーケストラ風の楽曲や、ジャズにポストロックなど、多種多様のジャンルで様々な楽曲を作り続けている彼らが「共作」し、生み出した楽曲がこの『夜更けのシュクレ』です。
2人のボカロPによる自由奔放な音使いで奏でられたこの楽曲は、「かわいい」「綺麗」「おしゃれ」と多くの人々から称賛されています。
今回はそんな楽曲の歌詞の意味を紐解いていきます。
それではまずは始まりの歌詞から見てみましょう。
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ラジオが途切れた映画も終わった
電気を消したらどこかで星が降った
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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どうやらとても夜が遅い時間のようです。
ラジオが放送を休止してしまう程の遅い時間であることがわかりますね。
続く映画というのも、夜中のテレビでやっている映画を指しているのかもしれません。
これらの放送が終わってしまう程の遅い時間、それこそタイトルの「夜更け」にあたる時間帯で歌われていることが、この歌詞からは想像できます。
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パパパパ キラリラリラリ パパパパ
パパパパ キラキラリラリ パパパパ
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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これはどこかで降った星の擬音語なのかもしれません。
MVの中でも、この歌詞にあわせて星が瞬いていて、まるでこれから始まる非日常への合図音にも感じられます。
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ベーグルに乗って迎えに来た未来人
目の前が真っ白砂糖菓子のはしご登って
心配事ひとさじ紅茶に溶けた。
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、そんな合図の後を継ぐように、ファンシーな言葉が飛び交う歌詞となっています。
丸いドーナツのような形をしたパン「ベーグル」に乗って登場する「未来人」、「砂糖菓子のはしご」。
現実ではあり得ないファンタジーです。
ですが、なんだか胸躍る気持ちにもさせられるとても可愛らしい光景でもあります。
この楽曲が多くの人達から「かわいい」と言われている理由は、この部分の歌詞にあるのかもしれませんね。
そして、そんな可愛らしい歌詞では、未来人が主人公を迎えに来たことが歌われています。
「心配事」を「紅茶」に溶かしたところから察するに、主人公はどうやらその未来人の手を取ったようですね。
はたして主人公は、一体これからどこへ連れられるのでしょうか。
連れていかれたのは月? 未来人の正体は?
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飛べるわ ポッケにニンジン詰め込んで
月面でクロワッサン買って笑ったらもう
パジャマのまんまで踊りましょう大人はおやすみ
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞の中に現れた「月面」の言葉。
どうやら主人公がやってきたのは「月」のようです。
月型のパンである「クロワッサン」を月で買うなんて、不思議だけどどこかおかしな気持ちになる光景が歌われています。
主人公も面白くなってしまったのか、続く歌詞で笑っているさまが歌われています。
思えば、未来人達が乗って来た「ベーグル」はその形だけを見れば、円盤、いわゆる「宇宙船」と呼ばれるものに形が近いことがわかります。
ということは、未来人は宇宙人なのでしょうか。
そのヒントとなるものは、主人公がポッケに詰め込んでいるもの。
主人公はサビの冒頭でポッケに「ニンジン」を詰め込んでいます。
そして主人公が今いる場所は「月面」。
月には「ウサギ」がいる、というのは有名なお話ですよね。
そしてそのウサギが好きそうな食べ物と言われて思い浮かぶのは「ニンジン」。
つまり「未来人」の正体は、月に住んでいるウサギであることが推理できます。
月に住むウサギに誘われて月面旅行だなんて、なんて可愛らしいお誘いなのでしょうか。
主人公が思わず手を取ってしまった理由もわかります。
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アクセルを踏み込んだらアララ頭がくらくらする!(wa!)
(ワン・ツー)
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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勢いに乗って来たのか、盛り上がりを見せてきた旅路。
彼らの旅路は、これからどこへと向かっていくのでしょうか。
不思議で楽しい旅の正体は主人公の「夢」?
----------------どうやら次は「宇宙の踊り場」にやってきたようです。
宇宙の踊り場おかしなシナリオ
白無垢ドレスを着て
飛べるわ ダンスフロアを駆け巡って
ガラスの靴すり減っちゃって困ったなもー!
パジャマのまんまの街角に砂糖(まほう)をかけたよ
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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主人公もいつの間にかおめかしをして、ダンスに参加している光景が想像できます。
けれど「おかしなシナリオ」と主人公が、自分の見ている光景に少し疑問を抱いているさまも歌われています。
と、同時に歌詞の背後ではアラーム音のような音が大きく鳴っています。
まるで主人公を起こす目覚ましの音のようです。
ここから考えるに、もしかしたらこのおかしなシナリオで紡がれる旅は、主人公が見ている「夢」なのかもしれません。
本当の主人公はすでに布団の中で眠りについており、夢の中で不思議な旅をしているのです。
もしかしたら寝る前のラジオや映画といったものに影響を受けて、そんな夢を見てしまったのかもしれません。
しかし、続く歌詞で未来人はこのように歌っています。
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明日またおいでよ会えるから
≪夜更けのシュクレ 歌詞より抜粋≫
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旅の終わりを告げるような言葉。
ですが反面、また明日のこの時間に会おうという約束が取り付けられています。
「夢」というのは次の日も見れるかどうかはわかりません。
ですが、この約束の前には「砂糖(まほう)をかけたよ」という歌詞が歌われており、もし本当に未来人がいて、主人公に「夢」という形でこの旅を見せてくれていたのだとすると、また明日本当に同じ「夢」を見れるのかもしれません。
本当のことはわかりませんが、だからこそ素敵な「夢」物語にもなっているのでしょう。
そんな「夢」物語の最後に輝き瞬く星達。
まるで「夢」物語の余韻を感じさせるような輝きに、またこの「夢」を見に来たくなる、聴きに来たくなる気持ちにさせられてしまうでしょう。
TEXT 勝哉エイミカ