舞台は欲望の塊となった「都」
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欲のまま繰り返し進化したその都
争いが武器を生み出して
≪迷的サイバネティックス 歌詞より抜粋≫
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楽曲の舞台になっているのはある都市。
曲のイメージから、現代ではなく少し昔の都市を想像させますね。
その都は人間の手により、欲しい物は欲しいままに後先を考えずに成長させられました。
その結果「都」は、少し押すだけで崩壊する、積み上げられた積み木のような状態までになっています。
今にも倒れそうな積み木の状態から、人間に新しい「欲」が生まれたら、一体どうなるのでしょうか?
積み上げられている場所にはもう積み木は積めないので、新しい場所に積み上げるしかありませんよね。
新しい場所を手に入れるため、考えられる行動は1つ、「侵略」です。
こうして、侵略を行うため人間による「争い」の日々が始まってしまいます。
始まってしまった争いの日々。この状況に「都」は何を思う?
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武器がまた争いを生んで無限ループ
咲き誇る花、踏みつけられて
枯れゆく姿さえ影に埋もれた
≪迷的サイバネティックス 歌詞より抜粋≫
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争いに必要な武器が人間によって生み出され、次の争いでまた強い武器が生み出されていく。
都に咲く綺麗な花さえも人間によって踏み潰され、枯れていく姿など誰にも見られることはありません。
人間の争いによる出口の見えないスパイラルに、あるところから声が上がります。
それは、現状を眺めている「都」からでした。
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"助けて下さい"と
意思の持つ都は声を上げ
気付いて下さい、早いうちに
≪迷的サイバネティックス 歌詞より抜粋≫
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人間の欲しい物をありのまま手に入れ続けた「都」は、いつしか意思までも獲得していました。
人間同士の争いは何も生み出さず、最後に待つのは絶望だけ。
「都」はすでにこの争いの結末に気づいているのではないでしょうか。
「都」が助けてほしいと訴えても、人間と違って実際に声に出して伝えることはできません。
人間自身がこの事実に自ら気づかないといけないのです。
「都」の願いは人間に届くのか?
2番に入っても、1番と全く同じ歌詞が続いていることから、「都」の願いはまだ人間には届いていないことが分かります。
むしろ、感情の変化すら起こっていないとも解釈できそうです。
この事態に、「都」はさらに別の訴えを起こします。
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愛したいなんて思えないのならそれでもいい
せめて迷って下さい、早いうちに
灰が降るその前に
≪迷的サイバネティックス 歌詞より抜粋≫
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「都」を愛するという感情は持たなくてもいい。
せめて今のままでいいのかという「迷い」を早く起こして欲しい。
前回の願いに比べて、更に悲痛さが増した訴えに感じ取れます。
その後に語られる、「灰が降る」というフレーズは最後の行末を匂わせていますね。
この灰というのは1945年8月、広島と長崎に落ちた原子爆弾が関係しているのでしょう。
投下されたときの大きな衝撃で舞い上がった土ぼこりが、灰のように舞い上がる光景。
「都」が気づいていた最期は、この光景だったのではないでしょうか。
しかし、現実は辛いものです。
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争いが武器を生み出して
≪迷的サイバネティックス 歌詞より抜粋≫
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これまでと同じフレーズが流れ、この曲は終わっていきます。
一向に気づく様子がない人間たち。
果たしてタイムリミットまでに、「都」の願いは人間に届くのでしょうか。
曲のタイトルになっている「サイバネティックス」とは、人工頭脳学のことを指します。
意思を持っていた「都」は、どこか人工頭脳のような雰囲気を醸し出しているような気がしませんか?
人工頭脳が人間たちの姿を見て、なぜ争いという行為をするのか迷いを感じている、そんな風にも感じ取れますね。
TEXT こびぃ