手の届かない甘い実
『Raspberry Lover』は、2019年11月に発売された秦基博23枚目のシングルです。
カップリングには卒業ソング『仰げば青空 ~Acoustic Session~』が収録。
初回限定盤にはDVDがついており、「GREEN MIND at The Room」のスタジオライブの映像も収録されています。
これまでの作品とは違った情熱的でアグレッシブなメロディと歌詞に、驚いたファンも多いのではないでしょうか。
手に入れられない甘い実ほど手に入れたくなる。
そんな恋の苦悩が描かれた切ない歌詞を見ていきましょう。
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さも 彼女だけが童話の中にいるように
どれだけ近くにいても この手は届きはしないのに
その木苺色 纏った唇に
それでも 触れたいと願う 僕は間違ってるのかな
≪Raspberry Lover 歌詞より抜粋≫
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近くにいるはずなのに、まるで彼女だけが「童話」の世界にいる遠い存在のようです。
出来ないとは分かっていても、彼女の唇に触れたい。彼女のことを好きな気持ちが表れています。
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今 彼のことを見つめる横顔に
一切 入り込む余地なんてありそうにもないけど
なら 友達の輪で道化を演じる僕に
一瞬 目配せして 微笑んだ あれはなんだったの
≪Raspberry Lover 歌詞より抜粋≫
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彼女とその彼氏、主人公の3人は友達関係にあるようですね。
彼を見つめる彼女の顔が幸せに満ちていて、彼以外のことは考えられない様子です。
友達の間では盛り上げ役の主人公。
いつも笑わせてくれる主人公を見て微笑んだ彼女に、自分に気があるのでは?と期待を持ってしまったのでしょう。
主人公が微笑んでくれたと感じたのは、まだ彼女が友人と付き合う前のことだったのかもしれません。
自分に期待をさせといて、友人と付き合った彼女に「あれはなんだったの」と嘆いているのではないでしょうか。
彼女は主人公が面白かったから笑っただけで、それを勘違いしたと考えると切ないですね。
王子様は自分ではなかった
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また ポーカーフェイスで会話を続けながら
一体 何回 頭の中で抱きしめるんだろう
そう 彼の前では怒ったりもするんだね
なんで ガラスの靴を拾うのは 僕じゃなかったんだ
≪Raspberry Lover 歌詞より抜粋≫
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友人たちと話をしているときも、頭の中は彼女のことでいっぱいの主人公。
彼女が彼の前だけで見せる怒った姿にさえも、主人公は羨ましさや嫉妬を感じています。
彼氏と主人公は「彼女の友人」として同じ立場だったはず。
しかし、シンデレラのガラスの靴を拾った王子様のように、彼女が落とした恋のきっかけを主人公は拾うことができなかったのです。
そんな主人公の後悔が綴られています。
甘い実にはトゲがある
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Raspberry Lover
僕だけの彼女をもっと知りたい
教えてくれるなら
その粒が毒入りだって構わない
Raspberry Lover
幸せな結末なんていらない
何を差し出せば
この僕に その甘い実をくれますか
≪Raspberry Lover 歌詞より抜粋≫
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ラズベリーには「嫉妬」「深い後悔」「愛情」といった花言葉があります。
彼氏にだけ見せる姿に対する「嫉妬」。
恋のきっかけを拾うことができなかった「後悔」。
僕だけが知る彼女を知りたいという「愛情」。
ラズベリーの花言葉が歌詞で上手く表現されていますね。
また、冒頭の歌詞で彼女のことを「木苺色 纏った唇」と表現しています。
「その粒」は彼女の唇であり、例え毒入りだったとしても、彼女を手に入れたい気持ちが渦巻いているのでしょう。
主人公にとって彼女はどんなものを引き換えにしても、手に入れたい甘い実なのです。
ラズベリーはバラ科の植物。
一見甘くて美味しそうな実に見えて、触れるとトゲがある危険な植物です。
甘い実を手に入れても、残るのはトゲ。
彼女を手に入れても、最後に残るのは後悔だけということを表しているのかもしれませんね。
TEXT サトイ モノコ