片思いを歌っている?
2010年に発売された清竜人の代表作『痛いよ』。主人公が抱いている心情を、意味深な歌詞から読み解いてみましょう。
----------------
ねえ きみが思っている程 ぼくは馬鹿じゃないよ
鈍感なフリするのも 堪えられなくなってきたんだ
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
冒頭の歌詞をみてみると「きみ」が何かを隠している様子が歌われています。
この時点では「きみ」が、片思いの相手なのか恋人なのかはわかりません。
しかし、本心を隠しながら過ごすことに限界を感じているようです。
----------------
ぼくのために さりげなく隠している過去も
たまにつくやさしい嘘も 気付いているんだよ
きみが使う ことばひとつで ぼくはいつも 胸が痛いよ
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞から「きみ」は、主人公に何かを隠していることがわかります。
一体何を隠しているのでしょうか?
具体的なことは書かれていませんが、歌詞の内容から推測されるのは他の人の存在です。
主人公は「きみ」のことが好きだけど「きみ」は他に好きな人がいるのかもしれません。
対する「きみ」は主人公の気持ちに気づいているものの、付かず離れずの関係を続けているのでしょうか。
もしくは、主人公と「きみ」は現在恋人関係にありますが、何らかの理由があって主人公に過去の恋人の存在や恋愛を隠していると考えることもできます。
いずれにせよ、主人公は「きみ」に思いを寄せていること、しかし「きみ」と主人公には心理的な距離があることがわかります。
何かを問い詰める主人公
----------------
平然と振る舞うぼくも 内心は穏やかじゃないよ
全神経を尖らせて 君を探ってるの
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
こちらは先ほどのパートに続く歌詞。
一緒にいるときは普通を装いながらも、何かを隠す「きみ」に対して心穏やかではいられないようです。
----------------
乱れる呼吸 泳いでる目 はぐらかす表情
一挙手一投足が 恐くて仕方ないんだよ
きみが作る しぐさひとつで ぼくはいつも 胸が痛いよ
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞からは、主人公が「きみ」に対して何か言葉をかけたにも関わらず、はぐらかされてしまった様子。
しかし「きみ」が、かなり動揺している様子もわかります。
そしてその様子を見て、主人公は「真実を知るのが怖い」と思ったようです。
はっきりさせたいけど、本当のことを知るのは怖いという心情は誰しもが抱いたことがあるのではないでしょうか。
では皆さんは、一体どんな時にこのような心情を抱きますか?
多くの人は「恋愛」と回答するでしょう。
好きな人が、他に好きな人がいるといった事実に直面した時、同じような心情を抱くかもしれませんね。
他の人との関係がチラリ
----------------
気に入ってるその洋服も ヘアースタイルや厚化粧も
思い出話も 価値観も 喜怒哀楽も
変なくせのあるキスも ベッドで喘ぐ声も
ぼく以外の誰かにも見せていたんでしょう
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
この部分はかなり衝撃的な内容が歌われています。
主人公は「きみ」の趣味嗜好、そしてかなりディープな部分まで知っている様子。
つまりこの2人は恋人同士、もしくはそれに近い関係であったことがわかります。
しかし、衝撃的なのはその先の「ぼく以外の誰かにも見せていたんでしょう」というフレーズです。
楽曲の冒頭部分で主人公が「きみ」に対して抱いていた疑念と「きみ」が主人公に隠していたこと。
このことから推測すると、隠された秘密とは「浮気」だったのではないでしょうか?
それを踏まえてもう一度冒頭から歌詞を見てみると、楽曲の内容がクリアになります。
「好きな人は他に好きな人がいるみたいだけど、それでも好き」という純粋な片思いが歌われていたわけではなかったのです。
溢れ出す彼の思いが辛い!
楽曲の後半は、彼の「きみ」に対する思いで溢れています。----------------
やさしい嘘をついてまでも 喜ばせるよりもさ
本当のことを言ってくれよ そして ぼくを悲しませて
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
「切ない」の一言につきますね。
自暴自棄になってしまう様子に胸が締め付けられます。
----------------
気付いたらぼくはもう 独占欲に溺れていて
エゴイズムを振り翳して くだらない愛を語っていたよ
でもぼくはきみが好きで どうしようもない程に 好きなのさ
これだけは 信じて欲しいんだよ
きみが生きる ひとつひとつが ぼくにとって 喜びなんだ
きみが生きる ひとつひとつが ぼくにとって 悲しみなんだ
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
「きみ」のことが心から好きだから「きみ」が生きているだけで幸せ。
だからこそ、手が届かなくて悲しいのです。
まさに『痛いよ』というタイトル通り、胸に痛みを感じさせる内容です。
最後はそんな自分の思いは、エゴイズムではないかと問うような歌詞で締めくくられます。
----------------
ぼくが抱く この思いは きみにとって 愛と言えるの?
教えてくれよ 教えてくれよ 胸が痛いよ
≪痛いよ 歌詞より抜粋≫
----------------
似たような経験がある方は、涙なしでは聞けない一曲です。
『痛いよ』を聞いて、感傷に浸ってみるのもいいかもしれませんね。
TEXT ゆとりーな