LiSA「愛錠」がタイアップに
本楽曲『愛錠』は、桜庭ななみ主演ドラマ「13」の主題歌に起用されました。
この物語は、イギリス・BBCテレビの人気ドラマ「サーティーン/13 誘拐事件ファイル」を日本版にリメイクした作品。
何者かにさらわれ13歳から13年間、監禁されていた少女が、突如家族の元へ帰ってきたところから物語が始まります。
悲惨な事件に巻き込まれた少女と、翻弄された家族と周りの人々の想いを描いた物語。
その物語から生まれたのは、複雑に絡まる愛情に錯綜する心を歌った一曲でした。
ここでは、その歌詞の意味を読み解いていきます。
「愛錠」の歌詞に隠された想い
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話してしまえば 想い出
隠してしまえば 幸せ
時間がすべてを奪ってく
≪愛錠 歌詞より抜粋≫
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まず初めの、「話してしまえば 想い出」と「隠してしまえば 幸せ」という部分は、素直に周りに伝えられない、後ろめたい感情を歌っていることが分かります。
自らが経験した辛いことや悲しいことは、経験した事実の表面だけを見れば想い出として話すことができます。
そしてその感情を表に出さなければ、想い出のまま何事もない日々を過ごせます。
しかしこの歌詞の中で、「話せば 想い出」ではなく「話してしまえば 想い出」と表現。
そのことからそれをすることへの躊躇いを感じ取ることができます。
地獄と分かっていても
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愛してしまえば 地獄で
離れてしまえば 孤独だ
もう戻れない
≪愛錠 歌詞より抜粋≫
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ここで先程の、「隠してしまえば 幸せ」にあった後ろめたさは、誰かに対する愛情のこと。
それは一般的な恋愛とは異なる形から生まれた感情であることが分かります。
その人を好きになれば、「地獄」のような困難が訪れてしまう。
それでもこの気持ちから距離を置けば、心は空っぽになってしまうという、複雑な状況の中で生まれてしまった感情。
その心が自らを苦しめるものだとしても、忘れることも無くすこともできない想いを「もう戻れない」という言葉に込めているのでしょう。
掛けられた歪な愛の錠
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あぁ、想う 想うほど 絡まる愛錠
この手を繋ぐ鎖のように
≪愛錠 歌詞より抜粋≫
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愛によって地獄が生み出されてしまうとしても、相手のことを求めてしまう。
その想いが強くなりすぎて、相手のことを傷つけたり、憎しみを向けてしまうことになっても、相手から離れられずに求めてしまう。
そうやって相手のことを歪んだ感情で縛り付けることを、ここでは「愛錠」と表現しているのでしょう。
ドラマとも繋がる歌詞
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ただ目の前の明日を信じられるのならば それだけでいい
今そっと手を伸ばした
≪愛錠 歌詞より抜粋≫
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この歌詞には、愛錠で絡められた2人が、同じ想いで同じ時間を生きたいという想いが見受けられます。
しかしそこには、それ以外の全ての物事に対して目を逸らし、放棄していることも感じ取れるでしょう。
それはドラマ「13」で描かれた、13年間監禁された少女と、監禁した犯人に照らし合わせることができます。
13年間監禁され続けた少女は、特殊な環境と向けられ続けた歪な愛によって、ストックホルム症候群となり、犯人に好意を持ってしまいました。
異常な状況で、想い合ってしまった2人の感情は、この歌詞に出てくる「愛錠」なのではないでしょうか。
この楽曲は、歪で複雑に絡み合った愛情で繋がった2人だけの世界を最後まで描き続けています。
それは、その事実が本当に幸せだと言えるのか、という問題を聴き手に考えさせる為とも言えるでしょう。
TEXT 京極亮友