1999年生まれの新世代アーティスト
福岡を拠点に活動する新世代アーティスト・クボタカイをご存知でしょうか?2020年3月にリリースされた最新曲『春に微熱』のMVは、公開から4ヶ月で約170万再生を突破しており、彼の楽曲が広く支持されていることがわかります。
生活感を覗かせるリリックと気怠いサウンドが特徴の楽曲は、現代の若者が感じる「エモさ」を象徴。
21歳という若さを生かし、音楽性とリリックの両方の側面から若者の世界を捉え、一つの楽曲として昇華させていることが、彼が支持を集める理由と言えるでしょう。
2017年にフリースタイルラップと楽曲制作を開始した彼のキャリアは決して長くはありません。
活動当初より幅広い音楽性と文学の香りを感じさせるリリックが注目を集め、2019年3月に自主制作EP『305』を通販限定で販売したところ即完売し話題となりました。
再販が望まれる声が多く、カセットとレコードでの販売が決定。ライブイベントへの出演オファーが絶えないなど反響を呼んだことも記憶に新しいです。
12月には多様な音楽性が詰まったEP「明星」をリリースし、クボタカイの魅力が十分に詰まった音楽はさらに多くの人に知られるようになりました。
多様な音楽性と共感を呼ぶリリックの秘密
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彼の音楽が愛される秘密とは一体なんでしょうか。
一つは彼の生み出す音楽の多様性が挙げられます。
ロックやポップスをはじめ、R&Bやファンクを感じさせる音楽は、様々な時代の匂いも内包しています。
ロックやポップスであれば90年代日本のどこかセンチメンタルな情感を感じさせ、R&Bやファンクなら60、70年代に音楽に乗って体を揺らした先人たちの姿が思い浮かぶでしょう。
これらの音楽ジャンルが持つ時代性を現代に生きる若者の心に届くように、形を変え組み合わせ作られているのがクボタカイの音楽です。
もう一つは絶妙に共感を与えるリリックの存在が挙げられます。
彼の描くリリックは生活感のある日常。
その日常は巧みなワードチョイスによって美しく描かれていますが、誰もが想像できる範疇にすっぽりと収まっています。
そのため、フィクションであってもリスナーが「自分たちの物語」として受け入れることができ、体験したことがないことも曲を聴いて情景をすぐに思い浮かべることができるのでしょう。
半現実的日常を描き出す能力に彼は優れているのです。
曲を聴いて理想と現実を重ねることができれば、共感は高まり、共感できると愛着が湧き、人々は繰り返し楽曲を聞くようになります。
流行に乗り遅れないためのクボタカイ楽曲3選
若者から絶大な支持を集めるクボタカイ。彼の楽曲をまだ聴いたことのない人へ、流行に乗り遅れないためのおすすめ曲を紹介していきます。
ぜひ彼に詳しくなるための足掛かりにしてみてください。
「TWICE」
クボタカイの魅力が広く知れ渡るきっかけとなった『TWICE』。
90年代のロックチューンを思わせるノスタルジーな暗いギターリフから始まったかと思えば、ファンク調のブラスサウンドが鳴り響き短調なビートを彩ります。
リラックスできる漂うようなフロウで魅了しつつも、才能を見せつけるような鋭いバースを繰り出して、彼がラッパーとして優れた人物であることを示した楽曲となっています。
メロウな雰囲気の中に驚きも与えてくれるこの楽曲は、彼を紹介する上で欠かせない一曲でしょう。
暖色を多く使用した秋を思わせるMVもこの楽曲が人気の理由。
音楽が持つ世界観を映像で視覚的に見ることができるので、楽曲に対する没入感も高まります。
「せいかつ」
すれ違うカップルの姿を描いた切ない恋愛ソング『せいかつ』。
ギターサウンドを基調としたバラード調の曲からは、辛い出来事を思い出すような痛みと少しずつくすんで美化されていく記憶のような感覚を覚えます。
遊び心のあるサウンドアレンジに定評のある彼の楽曲には珍しく、シンプルなサウンドと型にハマった構成で作られており、一味違った魅力を持った楽曲。
ラッパーという肩書きだけでは語れない実力を彼が秘めていることがよくわかりますね。
クボタカイが主題歌を提供した映画『死んだ方がマシーン』の監督である石川陸がMVを手掛けており、カップルが過ごしてきた日々の「せいかつ」を表したものとなっています。
「ベットタイムキャンディー2号」
2019年3月に発売されたEP『305』に収録された『ベットタイムキャンディー2号』。
都会的なサウンドで一晩の恋模様を歌ったこの楽曲は、手を伸ばして触れたくなるような魅力を持っています。
サウンドとメロディが心地よく混ざり合い、ネオンサインや街の喧騒、汚くも魅力的な都会そのものを象徴している楽曲。
タイトルからもわかるように歌詞の中では夜の情事が描かれていますが、それは欲を表した官能的なものではなく、行為の周囲に漂う若者らしい思考が見て取れます。
若者にとっては一つ一つの経験が大きな意味を持ち、考え方に影響を与える重要なイベントです。
1シーンの情景が脳裏に焼き付き離れないという経験も多くあるでしょう。
そんな感覚を鮮明に表現していることが、この楽曲の一番の功績と言えるのではないでしょうか。
ジャンルを超えた活躍を見る日も近い?
幅広い音楽と文学の香りを感じさせるリリックが注目を集めるクボタカイ。様々なジャンル・時代の音楽をバックボーンに持つ彼は、ヒップホップシーンだけでなく今後多様なシーンで活躍ができる十分な実力を備えています。
実力に裏打ちされた楽曲は、これからも若者の心を捉え続けるでしょう。
ライブイベントや楽曲のリリースなど彼の活動は加速度的に広がっていくはずです。
新世代のアーティストが時代の潮流を作る瞬間を見逃さないようにしましょう。
TEXT 富本A吉