故郷・因島の風景が登場する人気曲
『Aokage』は、2002年3月27日に発売された、ポルノグラフィティの3thアルバム『雲をも掴む民』に収録されている楽曲です。作詞作曲ともに岡野昭仁が担当し、生まれ故郷である因島の風景や、実体験を基にしたような歌詞が特徴です。
ファンにとっても、メンバーの生まれ故郷が登場するという意味で、特別感のある曲なのではないでしょうか。
タイトルの『Aokage』は、因島に実在する「青影トンネル」から来ており、ラジオなどで「青影トンネル」に関する思い出話をしたこともあります。
それくらい身近で、思い入れのある故郷を歌詞に落とし込んだようです。さっそく、歌詞の内容を見ていきましょう。
等身大の不器用さが愛おしい
----------------
いつもよりも向かい風が強く
ペダルを踏む足も疲れてきた
少しだけ遠回りになるけれど
風を凌げる細い小道通っていこう
もっと早く出掛ければよかった
時間には間に合わなさそうだ
きっと君は不機嫌になってる
言い訳探せるかな?
≪Aokage 歌詞より抜粋≫
----------------
学生時代の待ち合わせでしょうか。
「君」の家まで行くのに時間がかかってしまい、どう言い訳しようか考えているところがノスタルジックです。
誰しも経験したような、若い日の思い出。
そしておそらく、好きな子との待ち合わせなのでしょう。
風の強い日に自転車を漕ぐのは、なかなか辛いもの。
そんな、よくある風景が細かく描かれているところに、愛おしさを感じます。
----------------
あのタバコ屋さんを曲がったら赤い屋根が見えてくる
大きな犬がいつものように吼えてくるはずだから
それを合図に君が窓から顔出して笑ってる
そうだとうれしいんだけど・・・
≪Aokage 歌詞より抜粋≫
----------------
「タバコやさん」というのも、とても懐かしいワードです。
昔はよくタバコやさんがありました。
その向こうには「君」の家。いつもなら、笑った顔を見せてくれる「君」が、今日は不機嫌かもしれないこと。
いつも通りであることを願いながら「君」の家へ急ぐ様が、とてもリアルで、十代の青年を等身大の姿で描き出しています。
学生らしいやりとりがかわいらしい
----------------
思っていたよりは怒っていない
だけどやけに僕より先に行く
さっき言った言い訳が嘘のように
背中を押す風に変わっている
「待ってくれよ!」なんて言える立場じゃない
君の前に行くのも違う気がする
しばらくはこのままで居ようか
やっぱり怒ってるのかな?
≪Aokage 歌詞より抜粋≫
----------------
会ってみたら、思っていたより怒っていなくてほっとした、という経験は誰しもあるでしょう。
風が強いのを言い訳にしたかったのに、いつの間にか追い風に変わっているのが気まずい描写が上手に表現されています。
実際に2人で漕ぎ出してみたら「君」ばかり先へ行ってしまい「やっぱり怒ってるのかな?」と心配になるところが、何とも可愛らしいやりとりです。
顔色をうかがう様子まで目に浮かんできそうですね。
----------------
通りすがりの人から見れば不思議に写っただろう
「真剣な顔した男女が追いかけごっこしている」
追い風に乗った自転車は加速してゆくばかり
遅れた分取り戻せるかも・・・
あの急な坂登りきったら青影トンネルだ
車の排気ガスで煙いのを少しだけ我慢すれば
目の前が広くなった先に目指す海が見えるよ
そしたら機嫌直してね
≪Aokage 歌詞より抜粋≫
----------------
2人はどうやら、海へ行く約束をしていたようです。
だから時間に遅れてきたことに対して「君」は怒ったのでしょう。
しかしそれだけ、2人で海に行くことを楽しみにしていたということ。
そう考えると、可愛らしく感じてきます。
若い男女が自転車でおいかけっこをしている様子も想像すると微笑ましく感じませんか。
加速していく自転車の速度や風まで感じられ、遠い日の青春が蘇りますね。
因島の空気感漂う歌詞がファンを魅了
ここでようやく登場する「青影トンネル」。
作詞をした岡野昭仁にとっては、とても身近なものだったようです。
「車の排気ガスで煙い」など、歌詞にも具体性があり、実体験に基づいている感じが伝わってきますね。
メンバーの青春時代に少し触れられるような、温かく懐かしい歌詞。
そして、岡野らしく、ゆったりとしたテンポと優しい歌詞が心地よい楽曲です。
この曲がファンに人気があるのも分かる気がしますね。
ポルノグラフィティの楽曲では他にも『狼』という曲に「折古の浜」という地名が登場します。
メンバーが過ごした故郷の風景に想いを馳せながら、曲を楽しむのも味わい方の一つ。
因島の空気や景色を想像しながら、楽曲の世界に浸ってみるのもよいでしょう。
TEXT 岡野ケイ