アウトサイダーとは?
『アウトサイダー』という楽曲のタイトルには「枠組みにとらわれることなく、自分の信念や思想に基づき行動する人」>「異邦人」という意味があります。
タイトルを踏まえた上で、歌詞の意味を考察してみましょう。
平凡な日常を壊して思うままに生きたいと願う少年少女
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ねえねえ この世界を
どっかでひっくり返したくて
せいぜい 時間なんて ありはしないが
まあまあ そんなんで
少年少女揃いまして
唸り始めた会心劇さ
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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「この世界をひっくり返したい」という言葉から分かるように、主人公は自分のいる日常に不満を抱えているのが分かります。
思春期を迎え大人になりかけている少年少女が、自分自身が何者になりたいのかを答えを見つけるために、それぞれの日常の殻を破り立ち上がろうとしている様子を表しているのでしょう。
しかし少年少女はあっという間に大人になってしまうため「子供でいられる時間」が少なく、限られた時間の中でもがいているように感じられます。
信念のために動き始めた僕
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天才で人外で横暴な
最低で最高な相棒さ
単純で明快な考えが
僕をここで醒ましてくれないか
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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「天才で人外で横暴な最低で最高な相棒」というのは「僕」自身のことを指しているのだと思います。
自分自身のことをよく分かっているからこそ「最低で最高」と歌っているのでしょう。
秘められた才能に気づき、なりたい自分になろうと決意した「僕」は、理想と信念を追い求めるためについに動き始めます。
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今この身をもって 重石をとって
君にだけにしかできない事はなんだ
ここにいないでくれ
慰めなんていらないよ
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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くすぶり続けていた「この世界をひっくり返したい」という思いは、みんなと同じように平凡に生きていかなければならない日常の中で抑圧されていたように感じられます。
「君にだけしかできない事はなんだ」という歌詞は、自分自身に問いかけているのかもしれません。
今までの環境から抜け出して身軽になった「僕」でしたが、すべての物事が上手くいくわけではありませんでした。
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ああ しょうもないな
勝手にやってな 文句ばっか
否定したって 何したって 誰かのせいにしたって
ああ フラッシュバックして
小心者に眩暈がして
感情も根性も腐ってしまいました
思い出したくない 一日は
ここに吐いてってしまえよ
いらんもんなんて捨てさって
僕をここで壊してくれないか
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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自分の信念のままに夢を追いかけていましたが、否定する意見や他人との関わりに次第に疲弊していきます。
心配する人たちの声もありましたが、疲れ切っていた「僕」は「いらないもの」として切り捨てようとします。
この時から「僕」は少しずつ壊れていき、「色のない世界」へと徐々に踏み込んでいったのでしょう。
自分のしたいように生きた代償と後悔
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全て失ってしまわぬように
変わらぬものが此処にあるとするならば
夜が明ける前に
そうさ行ってしまえと
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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夢に近づくにつれ、「いらないもの」として切り捨てた人たちが自分の大事なものであったと気づく「僕」。
それでも決意は変わらず、振り返ることなく先に進むしかないことを悟った「僕」は、信念を見失わないように苦しみながらも、その道へ進んでいきます。
決心が固まっているように見えますが「そうさ行ってしまえと」という歌詞から、諦めや自棄になっているようにも解釈できます。
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白と黒の色のない世界に溢れた
愛も全部ないよ嘘の世界に塗れた
心の鬼は決して許してはくれないから
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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平凡な日常を壊すために夢に向かって立ち上がった「僕」の世界は、いつしか「白と黒の色のない世界」に染まっていきます。
「愛も全部ないよ嘘の世界に塗れた」というのは「色のない世界」と同義で、信じる心や感情を失ってしまったことを表しています。
ここで出てくる「心の鬼」とは、日常を壊すためにさまざまなものを犠牲にしてきた「自分自身」を指しているのかもしれません。
未来への決意
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影は伸びきって 日は落ちきって
明日を迎える事が許されたなら
救われてたかな
それでも僕は
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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夢を掴んだものの戻れないところまできてしまい、孤独になってしまった「僕」。
救われたいと思いながらも「それでも僕は」と続いていることから、このまま道を突き進んでいくことを選ぼうとしているのでしょう。
「僕」は、これからどのような運命を辿るのでしょうか。
ずっと持ち続けている小さな勇気
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荒地になって しまわぬように
その名を隠してここに現れたのさ
のさばってる奴らを
探って抉って嗤っては泣いて
その小さな勇気が僕の胸を焦がすから
≪アウトサイダー 歌詞より抜粋≫
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自分を見失わないように本心を隠してライバルを蹴落としていき、自らが選んだ人生のステージで孤独に戦う決意が表れています。
「その小さな勇気が僕の胸を焦がすから」という歌詞から読み取れるのは、冒頭の歌詞にもあった「この世界をどっかでひっくり返したくて」立ち上がった頃の気持ちや情熱がまだ心に残っていることを表現しているのではないでしょうか。
「会心劇」が次第に大きくなっていき、夢を掴み取ったものの払った代償は大きかった。
戻れないところまできてしまった孤独に戦う「僕」を支えているのは、冒頭から持ち続けていた「小さな勇気」だけなのだと感じられます。
一人の「僕」の物語を通して少年少女から大人へと変わっていく心情や、夢を叶えるために失ったものへの葛藤、自分自身が何者になりたいのかを終始問いかけているようでした。
誰しも抱えている悩みや葛藤を表した本楽曲。
「世界の常識や当たり前」に囚われず、正解のない人生や夢へと孤独に立ち向かう「僕」はまさしく『アウトサイダー』という言葉の意味通りに生きていくのでしょう。
TEXT 柚木