岡野昭仁が示す、ポルノグラフィティの可能性
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ポルノグラフィティのボーカル岡野昭仁は、高い歌唱力を持つことで有名です。
彼は1年間ラジオ番組のパーソナリティを担当した際、数々のカバーを披露しました。
番組終了後の2014年12月19日には、カヴァーLIVE「SING IT UP」も開催。
これはラジオ番組で披露したカバーの反響の大きさから実現に至ったライブで、いかに彼の歌に人を惹きつける力があるかを見せつけたのでした。
しかし彼には、作詞のほとんどをギタリストの新藤晴一が手がけていたせいか、名前の知名度が低いという悩みもあったそう。
これは、ファンにとってはおなじみのエピソードかもしれません。
そんな岡野ですが、これまでに作詞を手がけたことはそれなりにあります。
ベースのTamaが脱退して2人体制になったこともあり、徐々に彼が作詞をする機会が増えていきました。
デビュー曲『アポロ』をはじめ、『サウダージ』『アゲハ蝶』『メリッサ』など、ポルノグラフィティを代表する楽曲の数々を作詞してきたのは新藤晴一です。
そんな詩的で文学的センスに富んだ新藤の作詞曲とは違い、岡野の作詞曲は素朴で温かみが感じられます。
メンバー自身が作詞を手がけている楽曲は、その人の考えに触れることのできる貴重なものです。
この機会に、誰が作詞しているかにも注目して聴いてみると、これまでとは違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。
ヒゲダンの名曲「Pretender」を岡野昭仁がカバー
オリジナル曲のみならず、カバー曲でも圧倒的な歌唱力と存在感で高い評価を得てきた岡野。ここでは、2020年9月29日に披露した『Pretender』のカバーについてご紹介します。
『Pretender』は、Official髭男dism(愛称ヒゲダン)の2枚目のシングルです。
映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』の主題歌になっているので、多くの人が一度は耳にしているのではないでしょうか。
失恋をテーマにし、運命を感じた人との別れについて歌われています。
ロマンチックで、美しいメロディと透き通るような高音が耳に残る名曲です。
2枚目のシングルでありながら、Official髭男dismの魅力を世間に知らしめた、非常に存在感のある楽曲。
誰でも知っている人気の高い楽曲だからこそ、カバーするにあたってプレッシャーもあったことでしょう。
彼が『Pretender』を披露したのは、自身の番組である「DISPATCHERS」の中でした。
この番組は、ポルノグラフィティのメジャーデビュー20周年をきっかけに、彼がスペースシャワーTVと提携して立ち上げたもの。
彼はSNSのアカウントもなく、レギュラーラジオも持っていません。
そんな彼の音楽に関するトークや、ポルノグラフィティの楽曲を弾き語りで聴くことのできる、ファンにはたまらない番組です。
岡野ファン必見のコンテンツといえるでしょう。
自分の強みを最大限に活かしながら、リスペクトを忘れない心
では、岡野がカバーした『Pretender』を動画でご紹介します。オリジナルの動画も一緒にご紹介しますので、聴き比べて見るのもよいでしょう。
今にも消えそうな儚いオリジナルバージョンと比べると、岡野昭仁がカバーしたバージョンは優しさの中に力強さを感じます。
圧倒的な歌唱力で見事に『Pretender』を歌い上げているところは、さすがと言わざるを得ません。
さらに彼はアレンジを加えず、オリジナルの世界観に近い表現を目指している姿勢も素晴らしいですね。
楽曲をカバーするにあたり、オリジナリティを加えるアーティストもいます。
それがカバーならではの付加価値に繋がることもあるでしょう。
しかし彼は、以前スピッツの楽曲『チェリー』をカバーした際にも、原曲に近い形で弾き語りをしていました。
それが原曲へのリスペクトを込めた、彼なりのカバーなのでしょう。
今回の『Pretender』も原曲の世界観を大切にし、彼なりのアプローチをしているところが非常に魅力的です。
彼の歌声が愛される理由の一つに、こうした歌に対する姿勢や人柄もあるのでしょう。
岡野昭仁の作詞曲・オススメ8選
ここからは、岡野の作詞曲から、特にオススメの楽曲をご紹介します。温かく優しさに溢れた世界観と、ファンやバンドへの思いが込められた歌詞。
ボーカル・岡野昭仁とは違った角度から、ポルノグラフィティを堪能できる曲ばかりを選びました。
ヴィンテージ
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『ヴィンテージ』は、2003年2月26日にリリースされたアルバム『WORLDILLIA』に収録されています。
男女の恋が時間をかけて深まっていく様子を描いた恋愛ソング。
スローテンポとノスタルジックなメロディが耳に心地よく、癖になります。
ワインを寝かせるほど熟成されておいしくなるように、2人の恋も育てていきたいという願いが「ヴィンテージ」というタイトルにかかっていて、センスを感じさせる一曲です。
ライブでの演奏回数はそれほど多くありませんが、ファンに根強い人気を誇る楽曲の一つといえるでしょう。
うたかた
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『うたかた』は、2005年4月20日にリリースされた5thアルバム『THUMP χ(サンプ サンプ サンプ)』の収録曲で、片思いの切なさを歌った名曲です。
『ヴィンテージ』にも通じるノスタルジックなメロディ。
二胡の音色がもの悲しさを引き立て、「蜉蝣」「夜光虫」といった虫の名前が、幻想的な世界観とはかなく散る恋を連想させます。
夏の夜と失恋が描かれているこの楽曲は、切ないながらもついつい耳を傾けたくなりますよ。
むかいあわせ
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『むかいあわせ』は、2013年3月6日リリースのシングル『瞬く星の下で』に収録されているカップリング曲です。
「おかえり」から始まる歌詞は、まるで自分の恋人や娘に語りかけるかのよう。
大切な人が苦しんでいる時、どのように接するのか。
じっくり話を聞いたり、黙って寄り添ったり。
『むかいあわせ』からは岡野なりの愛情や、大事な人を守るという意思を感じます。
争いを好まない彼らしく、優しさで包むことで悲しみから守ろうとする姿勢には心を打たれました。
すべてを受け止め肯定してくれるような、「無償の愛」を表わす優しい歌詞に心救われる人は少なくないでしょう。
頑張る意味を見出せない時や元気が出ない時、心が疲れてしまった時に聴きたくなる、ヒーリング音楽のような楽曲です。
I believe
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『I believe』は2017年10月25日にリリースされた11枚目のアルバム『BUTTERFLY EFFECT』の収録曲です。
アルバムの中でも、静かで落ち着きがあり決して目立つタイプの楽曲ではありませんが、愛に溢れた岡野昭仁らしい世界観が広がっています。
彼の歌詞は素朴で人間味に溢れているのが特徴ですが、『I believe』でも、大切な我が子を見守り続ける父のような温かみを感じさせます。
手を貸したい気持ちをぐっと堪えて陰から支えるような、控えめな愛に満ちている様子。
人生に迷った時や自分に自信が持てなくなった時、優しく背中を押してくれるような楽曲です。
ぜひ一度、じっくりと耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
LIVE ON LIVE
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次にご紹介するのは、ポルノグラフィティのバンドとしての思いが色濃く反映された楽曲です。
これまでの柔らかい雰囲気とはガラリと変わり、熱を帯びた非常に熱い楽曲に仕上がっていますよ。
『LIVE ON LIVE』が収録されているのは、2011年3月2日リリースのシングル『EXIT』です。
この楽曲は元々音源化されておらず、ライブDVD『"BITTER SWEET MUSIC BIZ" LIVE IN BUDOKAN 2002』に収録されているのみでした。
ファンからの熱い要望に応える形で、2010年12月30・31日に行われたカウントダウンライブで披露し、録音され、初めて音源が収録されたのです。
ライブを心待ちにするファンと、ステージ上から思いを叫ぶ歌手。
まさにポルノグラフィティとファンを歌ったような、等身大の歌詞が印象的です。
ライブでの演奏回数は非常に少ないですが、長きにわたりファンに愛される続ける楽曲の一つといえるでしょう。
9.9㎡
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『9.9㎡』は、2012年2月8日リリースの35thアルバム『2012Spark』(「にーぜろいちにーすぱーく」)に収録されているカップリング曲です。
曲名が示すのは部屋の広さで、歌詞の中にも「6畳のワンルーム」という言葉が登場。
狭い部屋で過ごす悶々とした日々や果てない夢への思い、才能溢れる隣人への羨望などを歌っています。
これまでご紹介してきた『ヴィンテージ』『うたかた』『むかいあわせ』などと対極にある、非常にテンポの速いライブで盛り上がる人気曲です。
歌詞の内容は、自分の中の不安や、それ故の嫉妬など。
人間らしい感情を吐き出しながらも夢へと突き進んでいく姿を、熱量高く歌い上げます。
デビュー前にくすぶっていた頃のポルノグラフィティを思わせる、リアルな歌詞が胸に迫る一曲です。
作詞家としての岡野昭仁を楽しめる、オススメの楽曲ですよ。
真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ
44枚目のシングルに『真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ』は収録されています。
魂の叫びのような熱を帯びた歌声と、限界まで上げたテンポによって、ほとばしるエネルギーを感じられる楽曲です。
彼の圧倒的な歌唱力、声量、滑舌のよさがあってこそ生まれた楽曲といえるでしょう。
ライブでは炎の演出も加わり、盛り上がること間違いなしの人気曲です。
MVでは新藤晴一が作詞した『LiAR』と合成されたような、インパクトのある映像に仕上がっています。
タイプの異なる曲の世界観をどちらも楽しめる斬新なMVになっているので、ぜひチェックしてみてください。
プリズム
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『プリズム』は、2019年7月31日リリースの最新シングル『VS』のカップリング曲です。
同シングルに収録された『雫』は新藤晴一、『プリズム』は岡野昭仁が作詞を手掛け、メジャーデビュー20周年を前に思いをしたためました。
メンバーだけでなく、ファンにとっても特別な思い入れのある楽曲といえるでしょう。
デビューまでの道のりやメンバーの脱退など、バンド活動を続ける中で、紆余曲折あったことと思います。
20年も同じメンバーと同じバンドでステージに立ち続けるためには、目には見えない努力や苦難がいくつもあったことでしょう。
そうした思いをそっと込めた、多くの人への感謝と、バンドとしての覚悟に溢れた楽曲です。
ファンへの思いをしっかりと届けながら、これから先も突き進んでいく未来を見せてくれています。
『プリズム』はポルノにとっても、ファンにとってもかけがえのない一曲になったのではないでしょうか。
作詞家としての岡野昭仁が見せるポルノグラフィティの世界
ここまで岡野の作詞曲やカバー曲についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?ポルノグラフィティの魅力は、どれだけテンポを上げても崩れることのない、岡野のボーカル力と滑舌のよさにあります。
そして、新藤晴一と岡野昭仁といったタイプの異なる作詞家がいることによる多様性にもあるのではないでしょうか。
新藤晴一が生み出す、言葉のセンスに溢れた世界観。
岡野昭仁が生み出す、人間味溢れる世界観。
歌詞には、作詞者の思いや考えが如実に表れるものです。
メンバーが楽曲に込めた思いや、一環して変わらない考え方、言葉選びの癖などを探してみるのも楽しいものですよ。
歌い手として注目されがちな岡野の作詞曲は、まだまだたくさんあります。
作詞家としての岡野昭仁に目を向けてみると、これまでとは全く違う新しいポルノグラフィティに出会えるかもしれません。
TEXT 岡野ケイ