劇団ひとりが手がける珠玉のヒューマンコメディ
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2014年公開の映画『青天の霹靂』は、売れないマジシャンがタイムスリップをして生き別れた両親と再会するヒューマンコメディです。
原作は、お笑い芸人であり小説家としても活躍する劇団ひとりの同名小説。
元々実写映画化を視野に入れて書かれた作品で、原作者である劇団ひとりが自ら脚本や演出を手がけ、本作で映画監督デビューを果たしました。
映像化する上で脚本の仕事に苦労したそうですが、監督として音や色味の細かな点までこだわって製作されています。
キャッチコピーは「笑いと、たぶん一粒の涙の物語」。
笑いの中にも温かな家族愛が感じられる本作のあらすじや見どころを紹介します。
映画「青天の霹靂」のあらすじ
売れないマジシャンを続ける轟晴夫は、場末のマジックバーで長年働いています。
母親は幼い頃父親に愛想を尽かして出て行き、父親とは高校生の頃に家を出て以来会っていませんでした。
そんなある日、警察から父親の正太郎が遺体で発見されたことを知らさます。
遺体の確認後、受け取った骨壺を持ち、ホームレスになっていたという父親が死の直前まで住んでいた場所に赴いた晴夫。
父親の境遇と自身の惨めな人生に思いを馳せ「俺は何で生まれてきたんだろう」と呟いた時、晴天の空から突如落ちた雷に打たれてしまいました。
次に目を覚ますと、彼は昭和48年の浅草にタイムスリップしていたのです。
演芸場に雇われることになった彼は、美しいマジシャン助手の花村悦子と共にマジックを披露して大人気に。
しかし、悦子が体調不良を訴えたため、彼女の夫が助手につくことになりました。
その夫というのが父親の正太郎だったことに驚くと同時に、悦子が自身の母親であることを知ります。
そして彼は、自身の本当の出生の秘密を知ることになるのでした。
実力派キャストの幅広い演技に引き込まれる
本作の主演を務めるのは、コメディの名優である俳優の大泉洋です。観る人を楽しませるコメディ要素が入った演技の上手さはもちろん、タイムスリップ先で父親とコンビを組みながらもなかなか埋まらない父親との溝を繊細に表現しています。
作中で披露しているマジックはすべて本人が行っており、クランクインの4ヶ月前からプロマジシャンの元で練習を重ねたそうです。ぜひマジックの腕前にも注目してみてくださいね。
主人公の父親役を演じるのは、本作の監督である劇団ひとり。
彼の代名詞ともいえる中国人のネタも取り入れられ、大泉洋とのテンポの良い掛け合いが面白いです。
主人公の母親役は女優の柴咲コウが演じています。
生まれてくる子供への気持ちを語る様子に、母親の愛の美しさが感じられるでしょう。
メインキャストが少人数に絞られているため、3人の演技に強くスポットが当てられ、家族の関係がしっかり描かれています。
家族の温かさを感じるストーリーが笑って泣ける
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見どころは、生きることに疑問を感じた主人公が生きる意味に気づくストーリーです。
人生に思い悩んだ経験のある人であれば、主人公の鬱屈した気持ちに共感を覚えるでしょう。
世間から取り残されていくのを感じながらも、どうにもできないつらさを1人で抱えている様子は、もの寂しさを感じます。
そんな彼が、奇跡的なタイムスリップによって両親と再会。
父親とマジックのコンビを組み、自身の出産を控える母親を間近に見て、両親の本当の気持ちと出生についての真実を知ることになります。
家族であっても人の気持ちを図るのはとても難しく、本音をすべて話せる家庭は少ないのではないでしょうか。
そのため、誤解やすれ違いが生まれて家族の距離が離れてしまうことがあります。
しかし、主人公のように本音で話す機会があれば、もっと家族を身近に感じられるはずです。
家族で過ごす時間の尊さや、ぶつかり合ってこそ深まる絆に気づかされます。
また、コメディ映画としての面白さがしっかり引き出されているところも魅力です。
特に晴夫と正太郎がインド人と中国人に扮して行うマジックショーは、笑いどころ満載。
文句を言い合いながら様々なマジックを披露していくマジック漫才の形式になっていて、相方を小馬鹿にしたような2人のブラックユーモアが自然と笑いを誘います。
このコメディシーンがあるからこそ、2人が親子としてぶつかるシリアスなシーンがより強調され、メリハリある内容になっています。
クライマックスでは予想外の展開が用意されていて、最後まで目が離せません。
「放たれる」は生きていることの価値を感じられる主題歌
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本作の主題歌は、Mr.Childrenが手がける楽曲『放たれる』です。
劇団ひとりがファンであることからダメ元でオファーしたところ、映画のストーリーに共感したMr.Childrenが快諾し、タイアップが実現しました。
この楽曲は、繊細なピアノの伴奏と噛み締めるようなボーカルから始まるミディアムバラード。
そして、曲が進むにつれてドラムやギターなどの楽器の音色が足されていく構成で、後半にかけて儚いメロディに深みが出ているのが印象的です。
歌詞は人生をあきらめかけた人が、家族の存在によって前を向こうとする様子が描かれています。
産まれてきたという事実は奇跡であり、何にも代えられない愛の証拠だというメッセージが、映画のストーリーとリンクしているようです。
聴いているだけで生きていることを誇れるような優しい楽曲に仕上がっています。
映画「青天の霹靂」から前向きに生きる勇気を得よう
映画『青天の霹靂』は、家族の愛を通して生きることについて考えさせられる作品です。人生がうまくいかない時、主人公のように生きる意味が分からなくなることもあるでしょう。
しかし、親の愛はいくつになっても人の心を支え、前を向いて歩けるよう元気づけてくれます。
たとえ二度と会えないとしても、自身の命がある限り親の愛を感じ続けることができると、本作は教えてくれるでしょう。
『青天の霹靂』を観て、どんな時もあきらめず生きる勇気を受け取ってください。
TEXT MarSali