積もり積もるすれ違いの果てに…
優里が2020年10月25日にリリースした『ドライフラワー』。
この曲は2019年12月にリリースされ、SNSで話題にもなったことで注目された『かくれんぼ』のアフターストーリーとして描かれた一曲です。
ストリーミング再生2500万回超えを記録した『かくれんぼ』は、男性目線の切ない恋心を綴った物語ですが、『ドライフラワー』は女性目線の恋心を綴っています。
ピアノとドラムのエモーショナルな伴奏に乗せて、優里の歌声で情緒的な物語が紡がれています。
『かくれんぼ』の裏側に脈打つ、鮮烈でどこか寂しげなストーリーを『ドライフラワー』の歌詞から紐解いていきます。
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多分、私じゃなくていいね
余裕のない二人だったし
気付けば喧嘩ばっかりしてさ
ごめんね
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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別れを経た二人。
二人で過ごしてきた日々を思い返して、その後悔や寂しさがストレートに滲むフレーズです。
どうしてあの時あんなことを言ってしまったのだろう。もっと優しい言葉を送り合えていたら。
恋人との別れを経験した人は、きっと誰もが共感できる感情でしょう。
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ずっと話そうと思ってた
きっと私たち合わないね
二人きりしかいない部屋でさ
貴方ばかり話していたよね
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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噛み合わない会話。すれ違っていく空気。
若いからこそ見逃していた小さな差が徐々に積もり積もって、いずれ離れていってしまう。
ドラマチックな恋愛でなくとも、感情の蓄積が二人の形を歪めていってしまうものです。
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もしいつか何処かで会えたら
今日の事を笑ってくれるかな
理由もちゃんと話せないけれど
貴方が眠った後に泣くのは嫌
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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嫌い合ったわけではないけれど、どうしようもなく距離が出来てしまった二人。
近すぎるからこそ見えなくなっていた輝きがあるはずで、だからこそ一旦離れてもう一度笑顔になれたらいいのに。
その時は愛し合う二人ではないけれど、今とは違った形で笑い合えたらいいのに。
その気持ちは相手を切実に思う、“愛”の形なのかもしれません。
もう二度と顔も見たくないけれど…
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もしいつか何処かで会えたら
今日の事を笑ってくれるかな
理由もちゃんと話せないけれど
貴方が眠った後に泣くのは嫌
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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嫌いになれないまま離れていく。それは花びらが散らずに、綺麗に形を残したまま枯れていく。
ドライフラワーも、傍から見れば美しいものです。部屋に飾ったり、プレゼントにしたりしますよね。
けれど、生々しい感情をそのまま形として残していく。
綺麗だけれど色のない、微香を漂わせたドライフラワーのような思い出が私の中に残っているのです。
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多分、君じゃなくてよかった
もう泣かされることもないし
「私ばかり」なんて言葉も
なくなった
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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貴方と離れて、貴方のことを思い出して。そんな日々の中で、一人になった私は一人になった自由や淡い喜びを感じます。
二人三脚だったから自由に行けなかった場所に行けたり、一人になったからこそ見えるようになった景色もあるでしょう。
“開放感”にも似た気持ちがあるかもしれませんね。
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あんなに悲しい別れでも
時間がたてば忘れてく
新しい人と並ぶ君は
ちゃんとうまくやれているのかな
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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愛し合っていた人との別れも、時間が経てば徐々にその悲しみも心の痛みも薄れていきます。
嫌い合ったわけではない二人だからこそ、離れても相手を想ってしまうのは想像に難くないです。
貴方の幸せを願っているけれど、その時隣にいるのは私ではない。
その願いが切実であるからこそ、そこに切なさを感じてしまう歌詞です。
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もう顔も見たくないからさ
変に連絡してこないでほしい
都合がいいのは変わってないんだね
でも無視できずにまた少し返事
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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別れた相手から来る連絡。時には煩わしく思うものかもしれません。きっと私もそう感じている一人でしょう。
でも、ドライフラワーのように散って消えてくれない気持ちが変に残って情をかけてしまう。
会いたくないけれど、会いたくないのはもう一度会ったらあの頃の気持ちを思い出してしまうから?
そんな憶測も頭をよぎる一節です。
散らないドライフラワーが持つ意味
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月灯りに魔物が揺れる
きっと私もどうかしてる
暗闇に色彩が浮かぶ
赤黄藍色が胸の奥
ずっと貴方の名前を呼ぶ
好きという気持ち
また香る
≪ドライフラワー 歌詞より抜粋≫
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大切にしていたからこそ、今も時々思い出して切なさに胸を締め付けられる。そんな自分を“どうかしてる”と思いながらもやめられない。
複雑に巡る恋心がリアリティを持って訴えかけてきます。
白黒の月明かりの中に、花が枯れる前の色の付いた思い出が浮かんで思い出してしまう。ストーリーを追って、私の心情が伝わってきます。
『ドライフラワー』というもの自体には、既に意味物語が込められています。
芽吹いて、蕾をつけて、花を咲かせる。そのまま散るはずだったのに、花びらを落とせないまま色と香りだけを失って形は遺ってしまう。
消えない恋心を鮮烈に綴った『ドライフラワー』は、「かくれんぼ」の裏側に隠れたドラマチックな一曲です。
そのストーリーに思いを馳せて、ぜひ聴いてみてください。