セカオワが甘く切ないクリスマスソングをお届け
2020年10月20日から放送されているドラマ『この恋あたためますか』の主題歌に起用されているSEKAI NO OWARIの『silent』。SEKAI NO OWARIは『眠り姫』『RPG』など、ファンタジックで独特の世界観を持った4人組バンドです。
ドラマの内容は、夢に破れたヒロイン・井上樹木(森七菜)と、ヒロインが働くコンビニの社長(中村倫也)との恋。
立場の異なる2人が、ぶつかりながらも徐々に惹かれ合っていく模様を描いています。
恋愛、仕事、人生。様々な要素を取り入れているからこそ、登場人物それぞれに魅力があり、思わず応援したくなりますよ。
クリスマスに向けて恋が加速していく予感満載の物語は、季節感とマッチして、この先の展開から目が離せません。
そんなドラマを彩る『silent』も、舞台はまさにクリスマス。
恋人たちが愛を囁き合う聖夜に、SEKAI NO OWARIはどのような楽曲を届けてくれたのでしょうか?
静まりかえった街で際立つ「あなた」
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純白の雪が降る
街から音が全て奪われていった
こんなに静かだと
閉じ込めた言葉も聴こえてしまいそう
≪silent 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの歌詞から、ホワイトクリスマスを迎えて賑わう街の風景が浮かんできます。
どこか幻想的で繊細な世界観を持ったFUKASE作詞の『silent』。
雪がすべての音を吸い取り、不思議な静寂に包まれた空気が今にも感じられるようです。
雪に周囲の音が吸収されて、静まりかえった街では、そっと心に秘めている想いまで聞こえてしまうかも。
そんな焦りと胸の高鳴りが伝わってきます。
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雑音の中、貴方の声だけ心に溶けていく
まるでミルクを溢した様なそんな夜
≪silent 歌詞より抜粋≫
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雪が世界を真っ白に染める中、愛しい「あなた」の声だけが耳に届く。
「心に溶けていく」という歌詞で、「あなた」がどれほど特別であるかが分かります。
その人のこと以外、何も考えられないほど、心を満たしてしまう声。
全身全霊で「あなた」に恋をしている、そんな甘く切ない心情をロマンチックに歌い上げる歌詞が見事です。
「クリスマス」に漂う痛々しさ
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空を見上げて一人呟いた
消えて欲しいような言葉だけ
だけど心の音だけは
この雪も奪えない
≪silent 歌詞より抜粋≫
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雪が降るクリスマスの夜は、恋人たちにとっては特別な時間。
幸せなムード漂う中、「私」はそっと言葉を吐き出します。
それは、大切な「あなた」に届けたい言葉ではなく「消えて欲しいような言葉」。
想いだけは雪にかき消されることなく、胸の中に溢れているのに。
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クリスマスなんて無ければ
いつも通りの何にも変わらない夜なのに
≪silent 歌詞より抜粋≫
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「クリスマスなんてなければ」という歌詞には、クリスマスという特別感が際立たせる孤独や悲しみが滲み出しています。
クリスマスを素直に楽しめないのは、きっと「あなた」へ寄せる想いが決して届かないものだからでしょう。
両思いにはなり得ない、幸せを手にすることができないからこそ「クリスマス」という特別な夜が辛いのです。
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夜を泳ぐように過ごしたあの瞬間を
このスノードームみたいに閉じ込められたら
見えない星に願いを込めて
音が無くなった夜に
≪silent 歌詞より抜粋≫
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思い出しているのは、かつて2人で過ごした幸せな時間でしょうか。
「あの時間が永遠に続けばいいのに」という願いが、スノードームに込められているような気がします。
目に見えなくとも、雪の向こう側にあるはずの星に祈りを捧げる姿が健気ですね。
永遠に取り戻せない2人の距離
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体温で溶ける雪の結晶 触れることが出来ない
貴方は私の知らない時間の中にいる
≪silent 歌詞より抜粋≫
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スノードームに閉じ込めたいような幸福な時間を過ごした2人も、今はもういないようです。
触れれば消えてしまう雪のように「あなた」は近づくことさえも叶わない、遠い存在になってしまったのでしょう。
どこで何をしているのか、誰と会っているのか、そんなことも分からない遠い存在になってしまった「あなた」。
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凍える身体、力を抜いたら
震えが少し治まった
でもそれは刹那 無意識のうちに
身体が強張っていく
≪silent 歌詞より抜粋≫
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収まったと思った震えに身体を強ばらせる「私」。
この歌詞は「震え」という言葉を用いながら、失恋のただ中で悶え苦しんでいる恋心と見事に重なります。
一時は永遠さえ感じた「あなた」を失い「もう大丈夫」と立ち直った気がしたのに、どうしようもなく胸が痛む。
そんな失恋の痛みが「震え」という言葉から伝わってきますね。
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こんな真っ白な世界の中にいたら
自分だけちょっと汚れてるみたい
静寂の音が煩くて
今夜はきっと眠れない
≪silent 歌詞より抜粋≫
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汚れのない真っ白な雪が、幸せに包まれた恋人たちだとするならば、孤独を抱えて一人たたずむ「私」は「汚れ」。
まるで一点のシミのように、クリスマスという特別な夜になじめずにいるのでしょう。
心を静めて眠れないのに静寂が孤独を際立たせ、一向に眠ることができない苦しい夜です。
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時を奏でるように寄り添った 煌めきだとしても
目を閉じると望んでもないのに思い出してしまう
この降り積もる雪は
やっぱり貴方と見たかったな
≪silent 歌詞より抜粋≫
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ここではっきりと、2人の愛が終わったことが分かります。
きらきらと眩しかった2人の時間は「望んでもないのに思い出してしまう」思い出。
幸せな日々を思い出したくないほど、今の「私」は打ちひしがれているのでしょう。
「やっぱり貴方と見たかったな」という歌詞に、叶わぬ恋への未練と、隠しきれない寂しさが滲み出しています。
「私」だけが一人残され、終わった恋に片思いしている。
「降り積もった雪を2人で見たい」というささやかなわがままさえ、叶わなかったクリスマス。
音の消えた街のように、「私」の恋も人知れず終わっていくのでしょう。
『silent』というタイトルと相まって、切なさが倍増します。
切なすぎるラブソングで高まるドラマへの期待
このように『silent』は、クリスマスシーズンにぴったりなラブソングでありながら、人知れず恋が終わってゆく、切ない楽曲になっています。
甘く、ハッピーなイメージの強いクリスマスソング。
恋人に裏切られ、傷ついた心で一人過ごす主人公。
『silent』に登場する「私」もまた、終わった恋を引きずりながら一人寂しくクリスマスを過ごしていますね。
『silent』というタイトルには、心の内を誰にも明かさず一人で悲しみを抱える「私」の痛みを表しているのかもしれません。
音の消えた街で、人知れず静かに消えていく恋。
美しくも悲しい愛の形が、タイトルに見事に表現されています。
一方、ドラマの方はラブ要素満載の雰囲気。
トレンディドラマを思わせる、甘くロマンチックなオープニングでは、歌詞にも登場するスノードームが印象的です。
ドラマ本編とは打って変わって、優しく甘い表情の中村倫也さんにファンはメロメロ。
すでに恋の四角関係が動き始め、視聴者を惹きつけて止みません。
毎回ファンの心を魅了し、乙女心をくすぐる展開。
主題歌がビターなだけに、せめてドラマの結末は、甘くとろけるものであって欲しいと願ってしまいますね。
TEXT 岡野ケイ
2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 同年1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年にメジャーデビュー。 圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーに浸透し、「セカオワ現象」とも···