季節は終っても、まためぐる。
だったら、終ってしまった想いは?
2007年にテレビドラマで放送され、同時期に映画化も果たした芦名妃名子原作の少女マンガ「砂時計」。砂時計を主軸に主人公:植草杏の12~26歳までの14年間を描いたストーリーだ。
柴咲コウ13枚目のシングル『ひと恋めぐり』は、砂時計シリーズのテレビドラマ版で起用された楽曲である。原作マンガを読んでから作詞された楽曲のため、杏の気持ちを表したような内容。作品の流れに合わせてか、過去を回想するシーンを想像させる歌詞が出てくるといったドラマとリンクするような作りとなっている。
その構成の甲斐あってPVでは、ドラマ版「砂時計」で水瀬(植草)杏役を担当する佐藤めぐみ、北村大悟役の竹財輝之助が登場。柴咲コウ本人が、水瀬杏と会話するところやドラマ本編の一部映像も流れるなど違和感なくドラマに繋がる作品となった。むしろ、楽曲の力もあってスピンオフと言っても良い出来なので、機会があれば見て欲しいものである。
柴咲コウ「ひと恋めぐり」
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覚えてますか?
海岸沿いで ずっと隣にいてくれると
幸せにする、大丈夫だよと
抱き寄せながら言った
泣きたくてこらえ 人影に隠れすすり泣いた
ホームの隅…
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過ぎてしまった思い出は戻らない。それでも、人が歩く雑踏の中、友人と話している時、仕事に追われている最中にふと、思い出す時。
“覚えてますか?”
思い出に、問いかけられることがある。優しい声で、記憶の端っこに触れてくる。
思い出すのは、全力で愛をささげた幸せな想いと、悲しい終わりが詰まった今の自分だ。
“広い肩にもたれて”
“2つの大きな手で温められると”
“なぜか子供の様に素直に甘えられた”
“今も思い出す 砂を蹴る2人の靴”
幸せな思い出というのは残酷で、忘れたい記憶があっても簡単に忘れさせてくれない。自分の中で思い出として残ってる、それだけのことなのだが、戻ることのない幸せの場合、覚えていても余計悲しくなって辛さが増すだけだ。
しかし、思い出が問いかけるのは悲しい気持ちを思い出させるためじゃない。あの人のこんなところが好きだった、感情任せにケンカ別れしちゃったな…。改めて思い返して、気付くことがある。戻らないと思っていたことを、やり直すきっかけに変わることもあるのだ。
季節はめぐって、また春がくる。
想いもめぐって、また恋をするのだ。
TEXT:空屋まひろ