グループを後押しするGAKUの楽曲
『朝焼けの花』の作詞作曲を担当したのは、元UNISTのGAKUです。彼はV6や関ジャニ∞などをはじめ、様々なジャニーズグループに楽曲提供をしてきました。
2020年10月7日に発売されたSnow Manの2ndシングルでは、カップリング曲の『ファンタナモーレ』の作詞も担当しています。
GAKUの楽曲の魅力は、彼にしか出来ない絶妙な言葉選びと、歌詞の世界観に合わせて自由自在に変化する音楽性です。
はっきりと言い表せないような曖昧な感情も、彼はその多彩な表現方法で見事に描写してきました。
こうして生み出されたGAKUの楽曲には、アーティストを後押しする力があります。
それは彼が提供先のグループの持ち味を深く理解して、制作を行っているからではないでしょうか。
様々なグループが岐路に差し掛かった時、GAKUに楽曲を依頼する理由はそこにあると思います。
それはSnow Manにも通じるのでしょう。
2019年1月17日、Snow Manは6人から9人体制になることが急遽発表されました。
突然の報道にファンの間でも混乱が続く中、同年3月に横浜アリーナで開催された単独公演「Snow Man LIVE 2019 ~雪 Man in the Show~」。
新体制で初となるこのコンサートで、最後を飾ったのが『朝焼けの花』でした。
メンバーがそれぞれの過去に想いを馳せつつ、これからの活動に向けて決意を刻んだこの楽曲。
彼らの活動遍歴と照らし合わせながら、歌詞の内容を読み解いていきましょう。
それぞれの過去に滲むほろ苦さ
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耳鳴りのように届くのは
歩き出した日の記憶
淡く残る跡を辿れば今もまだ響く
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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Snow Manが誕生し歩き出した日、その先がどうなっていくのかは、きっと本人達にも分からなかったはずです。
何年経とうとも、頭の片隅に淡く残り続ける始まりの日の記憶。
どこか遠くから聞こえてくる「耳鳴り」のようにその存在を示しています。
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ざわめきの中足を止め
望む視界の先は
ずっと信じ続けていた未来まで続く
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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デビュー前、Snow Manの元には様々な声が聞こえてきました。
事務所の中では、彼らに対する期待の声もあれば、デビュー出来ないだろうと宣告されたこともあったそうです。
しかし、芸能界という雑踏の中でも、彼らは決して諦めませんでした。
気づけば目の前には、未来へと続く道が開き始めたのです。
このAメロ部分で注目して欲しいのが、メロディーを歌いつなぐメンバーです。
実は、1つ前のフレーズでハモりを担当したメンバーが次の主旋律を歌っていく形になっています。
最初のメロディーを歌いだすのは岩本、それにオクターブで重ねているのは渡辺です。
次のフレーズでは、渡辺がメロディーを歌い、深澤がハモっています。
さらに次のメロディーを引き継いでいるのは深澤と、まるで大事な宝物を共有するかのようにフレーズを紡いでいるのです。
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アスファルトに擦り減らして
傷つけ失ったものもあるけれど
いつだって見渡せばほら
側に仲間がいるよ
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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向井が歌う切ないBメロに、胸を打たれた方も多いのではないでしょうか。
2020年にデビューを果たし、目覚しい活躍ぶりを見せているSnow Man。
しかし、それと引き換えに、メンバーそれぞれが大切なものを諦めてきました。
当時わずか15歳だったラウールは、同年代が所属するグループ・少年忍者を抜け、大先輩のSnow Manに加入しました。
これから降りかかる試練に1人で立ち向かわなくてはいけないことを感じていたでしょう。
また、学業と仕事の両立を図るために、彼は高校入学からわずか1ヶ月で転校をしています。
目黒はデビューに際し、下積み時代を経て結成した宇宙sixを卒業。
向井はそれまで所属していた関西ジャニーズJr.を離れ、活動拠点を東京に移しました。
彼らにとって苦楽を共にしてきたメンバーと別々の道を進むことは、苦渋の決断だったに違いありません。
そして、元祖Snow Manメンバーは、グループを守るために6人でのデビューを諦めたのでした。
決して簡単な決断ではありませんでしたが、それぞれが覚悟を決めて新たな道を選択したことで、今確かにSnow Manは存在し続けています。
ここで言う「友」とはメンバーだけでなく、彼らの背中を押して送り出してくれたJr.達の存在も含まれているのではないでしょうか。
歌詞に隠されたメンバーの関係性
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夢は朝陽浴びてひらひらと
明け方の空に舞う
僕らまた導かれるように
今日を歩き始める
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞は、とても情緒ある景色を想起させます。
朝日を浴びて輝く「夢」。
それは彼らにとって最も美しい光景を表しているのでしょう。
際限なく溢れる光のイメージは、ペンライトで埋め尽くされたコンサート会場を連想させます。
Snow Manを先へ先へといつも導いていたのは、他でもないファンの存在だったのではないでしょうか。
また、落ちサビでは、同じ歌詞をラウールから向井と目黒、そして岩本へと引継ぎながら歌っています。
加入メンバーの覚悟をリーダーが聞き届けているような歌割りが、感慨深さを引き立てていますね。
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言葉では伝えきれない思いもあった
けれど
全てはこのためだったと言える景色
へと
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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このパートを担当したのは、阿部と宮舘です。
実は、この2人がこの歌詞を歌っていることに、非常に重要な意味が隠されていました。
彼らがまだMis Snow Manとして活動していた2011年、阿部が大学受験のために活動休止を申し出ます。
それは、アイドルとして生き残るために必要な要素を身につけるための、彼なりの選択でもありました。
しかし、グループの存続が危ぶまれていたこともあり、宮舘はこれに反対。
2人の仲は氷河期と言われるほど悪化してしまったそうです。
その後、立派に上智大学大学院を修了した阿部。
人生をかけて自分の信念を貫き通した阿部に対して宮舘は心から祝福し、彼らの関係は雪解けを迎えました。
当時、お互い言葉に出来なかった想いは確実にあったでしょう。
しかし、背中合わせでこの歌詞を歌う阿部と宮舘の姿からは、時間をかけて築いた信頼の深さが見て取れます。
グループを守り抜こうとする決意
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大切な人たちの支えを約束を連れて
行くよ
そしていつか必ず幸せな涙を
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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グループの中心としてSnow Manを引っ張ってきた岩本と渡辺が交互に歌うパートです。
今まで支えてくれた人たちへの感謝や真摯な気持ちをまっすぐに表現しています。
応援してくれたファンに対して、決して落胆させないという強い想いが感じられますね。
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大切な人たちの支えを約束を連れて
行くよ
そしていつか必ず幸せな涙を
≪朝焼けの花 歌詞より抜粋≫
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印象深い「これが第何章の旅でも ともに笑い乗り越え」というフレーズは、Snow Manの率直な気持ちを丁寧に表しています。
「時にぶつかれど」とあるように、流れに身をゆだねるのではなく、自分達の意志でグループを守っていこうと決意しているようです。
年齢も経験も異なる9人の人生が重なり合ったことは、奇跡と言っても過言ではないでしょう。
タイトルにある「朝焼け」とは、日の出により東の空が赤く染まることを指す言葉です。
1日の始まりとともに現れるこの現象は、その美しさの奥に強大なエネルギーを感じさせます。
長い下積みを経験しながら、日の目を浴びる瞬間を待ち続けたSnow Man。
彼らは、その希望を『朝焼けの花』に託したのではないでしょうか。