17歳のYUIが綴った気持ち
シンガーソングライターとしての活躍を経て、現在はバンド『FLOWER FLOWER』のメンバーとして活動するyui。彼女の音楽活動は、紆余曲折の道を辿って今に続いています。
そんなyuiが、まだYUIになったばかりの頃に作ったのがこの『TOKYO』。
17歳の彼女が、デビューのために上京するときの想いを綴った曲です。
この曲は、YUIが地元福岡で活動していた当時、ラジオやライブなどで披露する、いわゆる“隠れた名曲”でした。
それが次第にファンの間で噂となり、満を辞して2006年1月にシングルリリースされたのです。
そんな懐かしの一曲が、リリースから約15年の期間を経て「THE FIRST TAKE」で披露されました。
路上ライブからライブハウスへ、大きなステージから今度はスマートフォンの映像の中へ。
時代とともに変化してきたyuiだからこそ歌える今の『TOKYO』は、また一味違った意味が込められているようにも感じられます。
『TOKYO』は、地元から夢を持って東京に出る人なら誰もが共感する名曲です。
これからやってくる卒業、独り立ちシーズンに向けてぜひ聴いていただきたい『TOKYO』の歌詞の意味を紐解いていきます!
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住みなれた この部屋を 出てゆく日が来た
新しい旅だちに まだ戸惑ってる
駅まで向かうバスの中
友達にメールした
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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夢を追いかけるための前向きな旅立ちでも、寂しさや不安は拭えないものです。
期待と同じだけ膨らむ不安を胸に、少しだけ住み慣れた街に縋ってしまう等身大の気持ちが描かれています。
YUI自身が詞を書き、曲作りをしているからこそ生み出せる、リアルな感情に共鳴してしまうフレーズです。
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朝のホームで 電話もしてみた
でもなんか 違う気がした
古いギターをひとつ持ってきた
写真は全部 置いてきた
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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冬が終わり春がやってくる季節、朝のホームでギターを抱え一人立つ17歳のYUIに思いを馳せてしまう一節です。
自分が生まれた街、育った場所。地元のあたたかさに心惹かれてしまうけれど、それを『なんか違う気がした』と振り切るのは、東京で絶対に叶えたい夢があるからですよね。
そんな強い思いがあるからこそ、ギターだけを持って旅立つのです。
それでも、17歳の彼女が生まれた街を出る日の朝だけ、そのほんの少しの時間だけは、あたたかさに甘えてしまう。甘えさせてほしい。
そんな切実な感情が、この歌詞には込められているのでしょう。
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何かを手放して そして手にいれる
そんな繰り返しかな?
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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地元を離れ、東京に向かうことを指した歌詞、このフレーズはその後のYUIの歩みにも通ずるものがあります。
何かを得るためには何かを手放さないといけない。『TOKYO』は、そう気付いた17歳の彼女が大人になっていく道のりに流れる一曲なのです。
大人になって変わっていく自分と…
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つよがりは いつだって 夢に続いてる
臆病になったら そこで途切れるよ
走りだした電車の中
少しだけ泣けてきた
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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『写真は全部置いてきた』ことも、『朝のホームで電話をしてみた』けれど『なんか違う気がした』ことも、強がりの一部ですよね。
けれど、強がらずに少しでも弱いところを出してしまうと途端に足が止まってしまう気がするのは、夢を追う人なら誰もが共感できる気持ちでしょう。
気丈に強い自分を演じながら、本当は不安に押し潰されそうになっている。そんな気持ちを抱えて、一人電車に乗るYUIの感情が具に描かれたフレーズです。
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窓の外に続いてる この町は
かわらないでと願った
古いギターをアタシにくれたひと
東京は怖いって言ってた
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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この歌詞を逆説的に捉えると、「私は変わってしまうけれど、この町は変わらないでいてほしい」という気持ちを綴ったという意味でも解釈できます。
「怖い街」に向かい、大人になって染まっていくかもしれない自分の変化に怯えながら、自身のルーツである『この街』はどうかあたたかいまま変わらないで。そう願う、祈りの言葉のような歌詞です。
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答えを探すのは もうやめた
間違いだらけでいい
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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夢を追うことが正しいのか?
誰かの期待に応えることが正義なのか?
YUI自身がどこまでも人間らしい人だからこそ、頭を悩ませる葛藤があったのかもしれません。それでも、やっぱり夢を叶えたいと思うからこそ、東京に向かうことを決めたのでしょう。
その選択が正しくなくても、自分の足で歩いていくことを決めた、彼女の強い決意が滲む歌詞ですね。
迷いを繰り返しながら強くなる意味
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赤い夕焼けがビルに途切れた
涙をこらえても
次の朝がやってくるたびごとに
迷うことだってあるよね?
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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住み慣れた街にはなかった大きなビルが、夕日を遮ってしまう情景が浮かぶ歌詞ですよね。一人で立っていた朝のホームから、電車に乗って東京に向かっていく流れが、一曲の中に描かれているのでしょう。
何かを手放して、また別のものを手に入れることを繰り返し、迷いながら生きていくことは決して弱さじゃないと、優しく教えてくれる歌詞。
自らの人間らしさを自分で抱き締められるようになっていくことが、大人になることだと言えるのかもしれませんね。
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正しいことばかり選べない
それくらいわかってる
≪TOKYO 歌詞より抜粋≫
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間違いだらけでも、迷ってもいい。その思いを胸に、歩き出していくのです。
強がって一人で生きていくには、自分が生まれた街の存在が背中を押してくれることもあるでしょう。
旅立ちにはいつも別れがあるけれど、その別れは旅立つ人を強くしてくれるものです。
等身大の決意に共感する名曲
音楽で叶えたい夢がある、当時17歳のYUIが自身の言葉で綴った『TOKYO』。等身大の決意が切実に綴られている歌詞の意味ひとつひとつに、胸を打たれること間違いなしです!そして、今後も迷いながら変わっていく若き日のyuiが、その道のりに希望を抱く一曲でもあります。
この春旅立ちを控えている人も、そうでない人も、ぜひ一度聴いてみてください。
15年もの時を超えて、yuiの言葉があなたの心を震わせるはずです。
TEXT DĀ