曰く付きの「キケンナアソビ」を徹底解釈!
クリープハイプが2020年1月22日にリリースしたシングル「愛す」。そのカップリングである「キケンナアソビ」は、過激な歌詞で密かに注目を浴びている一曲です。
同曲は2020年8月28日にYouTubeにてMVが公開されました。
発表前には、その内容があまりに“キケン”でYouTubeにアップできず、何度も編集し直したという秘話があるそうです。
また、フジテレビ『ウケメン』という深夜番組のエンディングテーマに起用されたことでも知られてます。
そんな曰く付きの一曲「キケンナアソビ」は、たくさんの遊び心が詰まった楽曲だと一聴するだけで分かります。
不気味な雰囲気を助長するインストや、放送禁止用語を伏せるための「ピー」音など、他の楽曲ではあまり耳にすることのない仕掛けがふんだんに詰め込まれています。
歌に一瞬にして緊張感を走らすような仕掛けのおかげか、聴いているだけでゾクゾクする「キケンナアソビ」という。
その世界の中には一体どんなストーリーが込められているのでしょうか?
作詞作曲 尾崎世界観で描かれるキケンな匂いを放つキケンナコトバアソビを徹底解釈&解説していきます!
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そうやって口ばかりで だからさ どうせやるなら早くしようよ
始めから終わってるなら どのみち 後腐れないし
本当は君だけをとか要らないから
この道をまっすぐ行けば帰れるから
これからも末永くお幸せに
じゃあ気をつけて
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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『キケンナアソビ』は、言葉や仕草を尽くして真っ直ぐに愛し合う関係ではなく、身体だけの後腐れのない“キケンな”関係を描いた楽曲です。
君との関係は浮気なのか不倫なのか、詳しいことを歌詞から推測することはできませんが、優しい言葉や愛よりも即物的な行為を求める渇いた関係の中で交錯する思いが伺えます。
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これからも末永くお幸せに
じゃあ気をつけて
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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特にこの歌詞からは、自分を愛して欲しいというよりも、ただ行為を欲しがる感情ばかり伝わってきます。
しかし一転、ここから展開していく心理描写がクリープハイプ尾崎世界観の真骨頂なのです。
放送禁止「ピー」音で際立つ欲の正体
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それでも
お風呂で流す嘘の匂い 首から上だけでも残してよ
心がすり切れて揺らぐから
することすればうつる匂い 首から下だけでも愛してよ
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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身体を交えたあと、火照った身体を風呂で流すとき、虚しさや寂しさが募ってきます。
距離がゼロになった瞬間にうつった君の匂いをシャワーで洗い流してしまうと、行為すらなかったことになってしまう気がしてしまう。
だから、即物的な関係だけれど、消えない証が欲しい。
そんな感情がサビに込められている…と、ここまでは解釈することができますよね。
しかし、物語はさらにキケンな方向へと展開していくのです。
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体で繋ぎ止めて揺れる夜
それだけ それだけ それだけで良いのにな
って嘘だよ
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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愛情はなくても、身体で繋がり合っていられればそれだけでいい。
そんな健気でいじらしい感情かと思いきや、最後に『嘘だよ』という全てをひっくり返す言葉が紡がれています。
「愛情はなくても、身体で繋がり合っていられればそれだけでいい、なんて嘘。」
つまり、身体だけではなく、心も全て自分のものにしてしまいたい。浮気や不倫関係だとしても、全てが欲しい。
そんな肉欲を超えた気持ちを感じ得ます。
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こっちは口だけじゃない だからさ もっと色々しようよ
やっぱり終わってるから 何しても もう意味ないな
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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この曲の聴きどころの一つである、放送禁止用語の「ピー」音が使われているフレーズです。
もちろん放送禁止用語の正攻法である性的な用語をここに当てはめて考えることも可能ですが、それ以上に「君が私よりも愛しているあの子とはできない色々なこと」を当てはめ、想像できる一節でもあります。
「あの子よりも私の方が」という感情を強く印象的に浮き彫りにする「ピー」音は、凄く画期的な方法ですよね。
バンド且つアーティストとしてのクリープハイプが持つ、一度聴いたら忘れられない音楽の秘密がこのフレーズには潜んでいるのです。
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信じてる君だけはとか言わないから
この道をまっすぐ行けば帰れるから
これからも末永くお幸せに
ほら火をつけて
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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『キケンナアソビ』を火遊びに喩えて紡がれたこのフレーズ。
重たい愛や言葉はいらないと言いながら、あの子と幸せになる君を何度も火遊びに誘う、哀れな私が描かれた物語です。
「やっちゃダメ」と言われたことこそやりたくなる。
「触っちゃダメ」と言われたものこそ触れたくなる。
そんな好奇心に敗北して、君が私を選んでくれる未来があるのかもしれませんが、即物的な関係性に宿るのはどこまでも不毛な欲の交換でしかないという意味でしょう。
陽が沈む…夕焼けを表す歌詞の意味は…
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体で繋ぎ止めて揺れる夜を越えて
夢みたい 夢みたい 夢みたいな話
なんか馬鹿みたい 馬鹿みたい ほんと馬鹿みたいだな
馬鹿みたい 馬鹿みたい 馬鹿みたいだあたし
なんか夢みたい 夢みたい ぜんぶ夢みたいだな
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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身体を求め合って繋がり合った夜が、もし本物の愛を生んだら…。
そんなことを考えて、決してそうはならない現実を思い知る。
夢見がちな感情への自嘲が感じられる歌詞です。『キケンナアソビ』では、君への熱烈な想いと冷静な感情が激しく行き来する様子が描かれています。
この感情の波は、不倫や浮気を経験していなくても想像できるものですよね。もちろん浮気も不倫も許されざる行為ですが、君が好きだと思う気持ちにある意味で同調できる歌詞が紡がれています。
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夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょう
夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょう
夕焼け小焼けで真っ赤に燃えて
≪キケンナアソビ 歌詞より抜粋≫
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君との“キケンナ”関係がある私にも、普段の生活はあるのです。殊勝な顔をして、もしかすると、火遊びなどしたこともないようなお利口なフリをして過ごしているのかもしれません。
それでも、太陽が沈んで夜が来る間際、真っ赤に燃える夕焼けと火遊びをかけて、夜の訪れと共に再び君との背徳的な行為が待っていることを感じさせる歌詞は、さすがの表現といったところです。
許されない「火遊び」ほど燃え上がる
よい子がお家へ帰って、太陽も沈んだ頃、君との“キケンナアソビ”が始まる。『キケンナアソビ』は、君との行為の最中から事後、そして私が一人で抱えている葛藤までを鮮明に描いた一曲です。
許されざる感情は許されないからこそ燃え上がる。
そんな“キケンな”関係を覗き見できるのが、クリープハイプ『キケンナアソビ』なのです。
TEXT DĀ