怖いと話題の「ら・ら・ら」は不倫の歌?
休養のために一度は活動休止を経験したものの、ライブや映画主題歌の書き下ろしなど、まだまだ精力的に活動しているシンガーソングライターの大黒摩季。ハードロックが似合うパワフルな歌声と、女性の気持ちを代弁する彼女の魅力が存分に発揮された代表曲といえば、1995年発売のシングル『ら・ら・ら』を挙げるファンも多いのではないでしょうか。
自身初のミリオンセラーを獲得し、収録アルバム『LA.LA.LA』もスマッシュヒットを記録。
耳なじみの良いポップなギターサウンドと口ずさみやすいメロディラインが特徴の恋愛ソングで、ドラマ『味いちもんめ』の主題歌に起用されたこともあり、女性たちから絶大な人気を得ました。
しかし、バラエティー番組『ダウンタウンなう』に大黒摩季が出演した際、この楽曲について歌詞が不倫や二股を思わせるという不穏な話題が持ち上がります。
彼女本人は明言こそしなかったものの、「昼間会えない人」との恋愛にのめり込んでいた友人を音楽で救いたくて作詞したと語り、大きな話題に。
改めて、この名曲の歌詞の意味を考察してみましょう。
----------------
懐かしい においがした
すみれの花時計
恋愛中ってもっと
楽しいと思ってた
好きになるのは
簡単なのに
輝き持続するのは…
ら・ら・ら~
今日と明日は
あなたに逢えない
≪ら・ら・ら 歌詞より抜粋≫
----------------
「恋愛中ってもっと楽しいと思ってた」と、冒頭から切なさを示す主人公の女性。
「すみれの花時計」にふと懐かしさが込み上げる様子は、感傷的になっていることを表しているのかもしれません。
恋愛の始まりは単純な「好き」の気持ちだけで良いのに、その気持ちを維持し続けるのは意外に難しいものです。
タイトルにもなっているサビの「ら・ら・ら」の部分は、作曲が先行であったためうまくハマる言葉が思いつかず、このような形になったそう。
逆にシンプルだからこそ、彼女が感じている恋の幸せと「今日と明日はあなたに逢えない」寂しい気持ちがより引き立てられている印象がありますね。
「何かやらなきゃ誰にも会えない」の意味とは
----------------
TVやマスコミは
いったい誰のもの?
とっても寂しいから
とりあえず つけてます
夢があるのは
いいのだけど
こんな忙しい人じゃ…
ら・ら・ら~
今日も明日も
あなたに逢いたい
≪ら・ら・ら 歌詞より抜粋≫
----------------
独りの寂しさを埋めるため、何でも良いから音がほしくてテレビをつけることはありませんか?
それは彼女も同じで、報道を何となく眺めたりしているようです。
「夢があるのはいいのだけどこんな忙しい人じゃ…」というフレーズにある通り、彼女の恋人は夢を追いかけとても忙しく働き、そのせいで彼女との時間が取れないのでしょう。
2番では、サビが「今日も明日もあなたに会いたい」に変わっている点にも注目してみましょう。
それまでは「今日と明日」の2日間だけ我慢すればまた会えるという前向きな気持ちだったのに、ここでは会えないことへの寂しさや悲しみの方が強くなっているようです。
相手が「昼間会えない」人と考えると、夢がある素敵な人だけど所詮自分は浮気相手で、会えない日が多いことを嘆いているようにも考察できます。
彼女にとっていかに彼が大切な存在かが伝わってきて、聴いている方まで切なくなりますね。
----------------
年月が経つのはナゼ
こんなに早いのだろう
あっという間にもう
こんな年齢だし
親も年だし
あなたしか いないし…
ねえ
ら・ら・ら~
何かやらなきゃ
誰にも会えない
≪ら・ら・ら 歌詞より抜粋≫
----------------
寂しい気持ちは余計なことまで考えさせてしまいます。
恋愛のことを考えながら「もうこんな年齢」と歌っている。おそらく、結婚適齢期が過ぎようとしているのでしょう。
自分の年齢に比例して親も年老いて、そろそろこれからの人生について真剣に考えなくてはいけないと思い始めています。
しかし、相手は満足に会えない彼しかおらず、将来が不安なのでしょう。
3番のサビでは打って変わって「何かやらなきゃ誰にも会えない」というフレーズになります。
家の中に閉じこもっていては、友人や知り合いと会うどころか他人とすれ違うことすらできません。
これまではただ家で彼と会える日を待っていた彼女が、自ら行動することを決意した瞬間なのでしょう。
ラストの歌詞に怖い部分が見えてくる
----------------
人の心 裏の裏は
ただの表だったりして
振り返れば恋ばかりで
つい自分を忘れてた
これから私
何をどうして
生きて行けば
いいんだろう…
≪ら・ら・ら 歌詞より抜粋≫
----------------
たとえ恋人や夫婦であっても、本当の心は分からないことがたくさんあります。
とはいえ「裏の裏はただの表」であるように、複雑に思えていた相手の感情が実はもっと単純で、聞いてみれば自分が深読みしすぎていただけだったというケースも少なくありません。
彼女は恋愛にばかり気を取られていたせいで、もっと大切な自分自身のことを見失っていたようです。
そうして、これから先の将来について考え始めます。
----------------
ら・ら・ら~ やっぱり
今日も明日も
あなたに逢いたい
ら・ら・ら~ だけど
今日も明日も
あなたに逢えない
ずっと ずっと
ずっと ……
一緒にいようね
≪ら・ら・ら 歌詞より抜粋≫
----------------
最後のサビで出てくるのは、やはり「今日も明日もあなたに逢いたい」という気持ち。
会える日を待つのではなく、毎日会いたいという純粋な愛に改めて気づきます。
その願いは叶いませんが、この恋をつらく感じていた彼女にとっては、本当の気持ちと見つめ合う大切な時間となったのではないでしょうか。
一方で、最後には「ずっとずっとずっと……一緒にいようね」と告げています。
一般的な目線で見れば、結婚を意識していると考えられますよね。
しかし、彼女が二股をかけられているとしたら、相手の女性から奪い取ってしまおうという強い意思とも解釈できます。
冒頭では感傷的になっていたか弱いイメージの女性が、ラストには自分の意思で関係を変えようとしているところに、一種の怖さと女性のたくましい自立心が垣間見える、不思議な楽曲ですね。
恋愛そのものの真髄が記された名曲
大黒摩季が歌う『ら・ら・ら』の歌詞は、恋愛中に誰もが経験する切なさやもどかしさを表現した言葉であふれています。
不倫や二股は決して良い関係ではありませんが、そこにもただ一つの純粋な愛があることを感じさせますね。
同じ境遇の人にとっては共感できる部分が多く、恋愛を楽しんでいる人なら好きな人と笑って過ごせることがどんなに幸せかを噛み締められる、そんな楽曲となっています。
平成史に残る名曲を改めてじっくり聴いてみませんか?