愛する人の笑顔を守りたい
「ヒゲダン」の愛称で親しまれる4人組のピアノPOPバンド、Official髭男dism。
ボーカルを担当する藤原聡が作り出す、つい口ずさみたくなる中毒性の高い音楽と歌詞が持ち味で、多くのタイアップ曲を手がけています。
『イエスタデイ』も同様に、長編アニメーション映画『HELLO WORLD(ハローワールド)』の主題歌に起用されました。
映画内で描かれる主人公・堅書直実とヒロイン・一行瑠璃の切ない恋愛模様にマッチした歌詞からは、深い愛情が読み取れます。
気になる歌詞の内容に注目して、そこに込められた意味を考察していきましょう。
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何度失ったって 取り返して見せるよ
雨上がり 虹がかかった空みたいな君の笑みを
例えばその代償に 誰かの表情を曇らせてしまったっていい
悪者は僕だけでいい
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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冒頭からストレートな愛情を感じる歌詞になっていますね。
主人公にとって、ヒロインの笑顔は「虹がかかった空」のように貴重で尊いものなのでしょう。
「何度失ったって」とある通り、彼女は笑顔になれない暗い状況に何度も陥っていると考えられます。
そんな中、彼はたとえ他の「誰かの表情を曇らせてしまったっていい」と言えるほど、彼女の笑顔を取り返すためならどんなことでもする覚悟があるようです。
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本当はいつでも誰もと思いやりあっていたい
でもそんな悠長な理想論はここで捨てなくちゃな
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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男気あふれる想いを語った彼も、理想では敵を作ることなく周囲の人と思いやりを示し合いながら暮らしたいと願っています。
しかし、その理想を追っていては彼女が笑顔になれない。
そのため、人としての純粋な理想を捨ててでも、現実に立ち向かっていこうとしています。
彼をここまで大きく変化させたのは、彼女へのひたむきな愛情に他なりません。
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遥か先で 君へ 狙いを定めた恐怖を どれだけ僕ははらい切れるんだろう?
半信半疑で 世間体 気にしてばっかのイエスタデイ
ポケットの中で怯えたこの手は まだ忘れられないまま
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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「遥か先で君へ狙いを定めた恐怖」というフレーズから、彼女に脅威となる出来事が差し迫っているようです。
映画のストーリーでは、ヒロインが死ぬことを知ってから物語が進むので、内容がリンクしていることが分かります。
これから待ち受ける抗いようのない現実を前に、彼は何とかして少しでも彼女の恐怖を取り除いてあげたいと思っていますが、同時に自分に何ができるのか悩んでもいるのでしょう。
楽曲のタイトルでもある「イエスタデイ(yesterday)」は「昨日」を意味する単語なので、恐らく「昨日までの自分」を意味していると考えられます。
彼は何をするにも半信半疑で、世間体ばかりを気にしていた過去の自分を思い出しています。
「怯えたこの手」は、彼が抱えるトラウマを指しているのかもしれません。
そんなトラウマや不安をポケットの中に隠してでも、彼女を守るために強くなりたいという願いが垣間見えます。
世界を敵に回しても彼女のためだけに生きる
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「何度傷ついたって 仕方ないよ」と言って
うつむいて 君がこぼした 儚くなまぬるい涙
ただの一粒だって 僕を不甲斐なさで 溺れさせて 理性を奪うには十分過ぎた
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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彼の想いとは裏腹に、彼女はすでに諦めようとしています。
しかし、言葉では仕方ないと言いながらも、本当は傷つきたくないという気持ちが涙に表れていますね。
彼女を笑顔にしたい彼にとって、その涙は理想をあっさりと捨てさせるほど強烈なインパクトを与えるようです。
自分が不甲斐ないから彼女がこんなに苦しんでいると感じて、彼女のために立ち上がります。
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街のクラクションもサイレンも届きやしないほど
遥か先へ進め 身勝手すぎる恋だと 世界が後ろから指差しても
振り向かず進め必死で君の元へ急ぐよ
道の途中で聞こえたSOS さえ気づかないふりで
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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ここでまた「遥か先」というフレーズが使われていることから、いつか来る彼女を脅かす現実に彼の方から立ち向かっていく様子が見えてくるでしょう。
周囲の雑音が聞こえないほど遠くまで駆け出していることに、必死さが伝わります。
一方で、他の誰かの助けには気づかないふりをしてしまう彼の行動は、はたから見れば恋に翻弄されているだけの馬鹿げたものに思えるかもしれません。
とはいえ、ただひたすら彼女のためだけに必死で行動できることを考えると、とても強い人に感じられます。
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バイバイイエスタデイ ごめんね 名残惜しいけど行くよ
いつかの憧れと違う僕でも
ただ1人だけ 君だけ 守るための強さを 何よりも望んでいた この手に今
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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かつて理想としていた自分とは決別することになりましたが、彼女を守るという正義を貫く態度は、彼自身にとって新たな理想になったのではないでしょうか。
トラウマにただ震えていた手で、今度は強さを掴み取る決意が固まりました。
「謎めいた表現技法」の意味とは
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遥か先へ進め 幼すぎる恋だと世界が後ろから指差しても
迷わずに進め 進め 2人だけの宇宙へと
ポケットの中で震えたこの手で今 君を連れ出して
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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家族や友人を含め「世界」はまだ批判的ですが、彼はもう迷いません。
この広大な宇宙の中で、大切なのは彼女だけだからです。
ポケットに隠していた手は、彼女の手を取るために使います。
そのために自分が苦しむことになる可能性はありますが、その先に彼女の幸せがあるならそれは何の問題にもならないのです。
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未来の僕は知らない だから視線は止まらない
謎めいた表現技法 意味深な君の気性
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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未来に何が起こるかは誰にも知り得ません。
だからこそ、現実を見続け思考を止めず動き続けるなら、望む未来にもたどり着けるはずです。
「謎めいた表現技法」とは、「意味深な君の気性」が見せる感情表現のことだと考えられます。
どれほど愛していても、相手の心の隅々まで知ることは叶わないものです。
しかし理解できないからといって、そこで思考を止めれば決してその心に触れることはできません。
手に入れたいものがあるなら、やはり行動をやめるわけにはいかないのです。
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アイラブユーさえ 風に 飛ばされそうな時でも
不器用ながら繋いだ この手はもう 決して離さずに
虹の先へ
≪イエスタデイ 歌詞より抜粋≫
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愛の覚悟が試されるような難しい状況に晒されるとしても、彼女と繋いだ手を離さないと決めています。
その仕方は「不器用」で、思い通りにうまく立ち回ることはできないかもしれませんが、どんな状況になろうとこの気持ちだけは変わらないという信念が伝わってくるでしょう。
虹が出る空には、まだ雨が降っています。
しかし、彼が求めているのはその先にある太陽が光り輝く快晴のような、彼女が心から笑える未来です。
そしてきっと、彼ならその未来を引き寄せられると感じられます。
愛する人のために強くあろうとする意志に、胸が熱くなる楽曲です。
望む未来を掴み取るための勇気をくれる楽曲
日本の新時代を象徴するアーティストOfficial髭男dismが描く歌詞の主人公は、誰もが身に覚えのある等身大の弱さや悩みを抱えています。
そのため、聴く人の心を惹きつけると共に、自分も変われるかもしれないという勇気を与えてくれるはずです。
『イエスタデイ』も、愛する人の笑顔を守りたいというシンプルかつ最も難しい望みのために走る主人公から力をもらえるでしょう。
Official髭男dismの魅力的な曲たちを聴いて、明日から自分の生き方について考えるきっかけにしてみませんか?
Official髭男dism (オフィシャルヒゲダンディズム) 山陰発4人組ピアノPOPバンド。2012年6月7日結成、島根大学と松江高専の卒業生で結成されており、愛称は《ヒゲダン》。このバンド名には髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたいという意思が···