「napori(ナポリ)」は独特な表現で愛を歌う楽曲
作詞作曲からアレンジまで自身でこなし、多彩なポップセンスで多くのファンを魅了する若きアーティストVaundy(バウンディ)。
待望の1stアルバム『strobo』は、Vaundyを象徴するジャンルレスな楽曲が詰まっており、大ヒットしています。
その中でも異彩を放ち、エモい名曲として注目されている楽曲が『napori』です。
シンプルなギターコードと独特な歌詞のフレーズにハスキーな歌声が合わさり、洋楽のようなメロウで耳なじみの良いラブソングとなっています。
タイトルの「napori」という言葉はありませんが、イタリア都市の「napoli(ナポリ)」のことを指しているようです。
古くからある「ナポリを見てから死ね」というイタリアの格言が景観の美しさを表しているように、恋人の美しさや共に過ごす時間の輝きを示していると考えられます。
どんな歌詞になっているのか、意味を詳しく考察していきましょう。
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ろくな音楽もなくて
そんなひびをまた2人で
僕ら指にラブソングで
今夜も二人で歩いてこ
≪napori 歌詞より抜粋≫
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冒頭の「ろくな音楽もなくて」というフレーズは一見悪くも聞こえますが、おそらく特別なことのないありきたりな日常を切り取っていると思われます。
そんな中で「僕ら指にラブソングで」とあるように、2人で手を繋いで歩くだけでラブソングを聴いている以上の充実感を味わっているようです。
月明かりが照らす夜の静かな街を共に歩く2人は、心から幸せを感じているのでしょう。
しかし「ひび」をあえてひらがなにしていることから、「日々」と「ヒビ」2つの意味を表していると考えられます。
何気ない日々でも恋人と過ごしさえすれば幸せに感じられる反面、恋愛にはつきものの小さなヒビは避けられない現実を表現しているのではないでしょうか。
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2人になって
君を待って
思い出したんだ
僕が
大人になって
思い出すのは君じゃないかな
あれは
≪napori 歌詞より抜粋≫
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ここで、彼はその日常から生まれる不安を言葉にしています。
2人きりで過ごす時間や恋人を待っている時間の中で、ふといつかこの関係が終わってしまうのではないかと感じる瞬間があります。
今がどれほど幸せでも先のことは分からないので、どうしようもなく不安に駆られてしまいます。
「縁そっとflight」の意味は「very soft flight」?
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縁そっとflight
僕ら互いの指を絡めあってもう
naporiずっといたいよ
ここで見つめあって互いに安堵する
oh right oh right oh right
絡めあっていく
oh right oh right oh right
≪napori 歌詞より抜粋≫
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サビで耳に残るのは「縁そっとflight」というフレーズ。
「縁」はおそらく縁側やベランダのような場所を示していて、そこで「互いの指を絡めあって」いる様子を描いています。
この日本語と英語を混ぜた不思議な表現は、「very soft flight」と聞こえるように歌っているそうです。
直訳すれば「とても柔らかな飛行」となりますが、この2人で過ごす穏やかな時間を表現しているのでしょう。
ずっと一緒にいたいという気持ちが高まっていきます。
大好きな人と目を合わせて、一緒にいられる喜びを噛み締めていることが伝わってきますね。
続く「oh right」は「そう」という意味があります。
「大丈夫」を意味する「allright」とも聞こえますが、実際はそこまで確信を持てず、まだ不安が残っているように感じる表現です。
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当然こんな夜にはコーヒーがいいだろ
そんな僕の横でハイボールを1口
もう
なんて言うんだろ
そう君見てると
酒入ってなくても
酔いが回るんだな
≪napori 歌詞より抜粋≫
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彼は彼女と一緒に過ごす時、コーヒーを飲んで冴えた頭で過ごしたいと思っています。
幸せな時間を一瞬も取りこぼさないようにしたいという気持ちの表れかもしれません。
一方で、彼女が飲むのはハイボール。女性が男性の前でお酒を飲むのは、相手に心を許しているからでもあるでしょう。
彼女にとって彼は、それだけ居心地よく感じられる相手だと考えられます。
そんな彼女を見ていると、彼はお酒を飲んでいないのに「酔いが回る」と歌います。
彼女のことが愛おしくて、不安な気持ちも忘れるほど愛情があふれだしていくのです。
お互いの存在を確かめながら
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音になって
大人になって
思い出したんだ
君が
大人になって
思い出すのは
ぼくじゃないかな
いずれ
≪napori 歌詞より抜粋≫
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「音になって大人になって」という表現は、音楽を続けて歌手になったVaundy自身の姿が投影されているのかもしれません。
そのようにステップアップしながらも、やはり考えるのは彼女のことです。
自分の将来を考えていた1番とは対照的に、2番では「君」の将来に自分がいるだろうかと考えています。
いずれ別々の道を歩むことになるとしても、互いを思い出せるような関係でいたいという願いも込められているように感じられますね。
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君と
縁そっとflight
僕ら互いの指を絡めあってもう
naporiずっといたいよ
ここで見つめあって互いに安堵する
oh right oh right oh right
絡めあっていく
oh right oh right oh right
二人はキスをする
oh right oh right oh right
絡めあっていく
oh right oh right oh right
≪napori 歌詞より抜粋≫
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1番のサビが最後にも繰り返されます。特に大サビが「君と」で始まることから、2人で幸せを感じ合いたい気持ちが強く表れています。
見つめ合い指を絡め合っていると、自然と引き寄せられて「二人はキスをする」。
そして、繋ぐ手がさらに「絡みあっていく」様子に、より愛情が深まっていることが伝わります。
「oh right」が繰り返される度にこの幸せが続くことへの確信、「allright」に変わっていく感覚を味わっているのでしょう。
儚いからこそ幸せが感じられるラブソング
Vaundyがアンニュイに歌い上げる『napori』は、恋人たちの不安や愛情が入り混じる関係をテーマに描いた、切なくも温かいラブソングです。
愛情を表現する直接的な言葉をほとんど使わないのに、巧みなワードチョイスで聴く人の想像力をかき立てるところに、彼の持つセンスが表れています。
幸せなだけではないからこそ、日常の何気ない時間をより大切に思える恋愛の素晴らしさを実感させてくれるでしょう。
続々と配信されるVaundyの才能あふれる音楽作品にまだまだ目が離せません。