「頑張って」「応援してるから」という言葉
人は「相手へ結果を残して欲しいから、本当に頑張ってほしいから」頑張れや応援してるのような言葉を相手に贈る。心から相手を想う気持ちは本物なのだろう。
でも、その声援は使い方を間違えるとプレッシャーや、相手を追い詰める刃ともいえる…。
ひと味違う中島みゆきのファイト

中島みゆき『ファイト!』は、そんな相手を応援するための言葉とは一味違う楽曲。
1983年に発表されたアルバム「予感」に収録された楽曲で、1994年に住友生命ウィニングライフのCMで起用されている。
近年では、大塚製薬カロリーメイトCM「とどけ、熱量。」でもタイアップ曲となり、女優:満島ひかりがカバーを行った。
楽曲「ファイト」がもつ雰囲気と満島ひかりの声の相性も良く、当時は話題にもなっていた。
もっとも、この楽曲は満島ひかりだけでなく、福山雅治、YUKI、山下達郎など名のあるアーティストがカバーをしている。
同じ歌詞でも、印象や迫力がまた違うので、様々な「ファイト!」を楽しんでみてほしい。
ファイトが持つもう一つの意味

----------------「ファイト」の意味を日本では「頑張れ」と同じだと思っている人は多い。そう。確かに、同じ意味であることに間違いはないが、この言葉にはもう1つ意味がある。
あたし中卒やからね 仕事を
もらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の文字は
とがりながらふるえている
ガキのくせにと頬を打たれ
少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめすぎた
こぶしの中 爪が突き刺さる
≪ファイト! 歌詞より抜粋≫
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ファイト=闘え。
ご存知の方も多いだろうが、もうひとつの意味は「闘え」である。誰でも、生きていれば闘う相手に事欠かないハズだ。
例えば、歌詞が淡々と語るような学歴を重視する社会、子供の反論を許さない大人の態度。世の中には、そうした納得できない理不尽で溢れている。
しかし、本当の敵は世の中ではない。
いつの時代も最大の敵は自分

----------------自分の力ではどうしようもないこと、納得のできないことは生きていればたくさんある。しかし、そこから現状を変えるために自分は何かしただろうか。
私、 本当は
目撃したんです
昨日電車の駅、階段で
ころがり落ちた子供と
つきとばした女のうす笑い
私、驚いてしまって
助けもせず叫びもしなかった
ただ恐くて逃げました
私の敵は 私です
≪ファイト! 歌詞より抜粋≫
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周囲に逆らうのも怖くて、闘う前から諦めてはいなかっただろうか。本当の敵は、周りの環境を変えようともしない見て見ぬフリが上手くなった自分なのだ。

----------------いっそのこと、闘わないというのは選択もある。これは、周囲に合わせる一番の方法かもしれない。周囲にあわせないということは、つまり白い眼で見られるということでもある。どちらをとっても、茨の道というわけだ。
ファイト!
闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
≪ファイト! 歌詞より抜粋≫
----------------
けれど、自分だけの闘いに周りの意見は不要だ。闘わずして後悔をするくらいなら、“ファイト!”と自分に言ってやりたい。
心を決めたら、覚悟を決めたら、前進あるのみ。この曲は、そんな大事なことを訴えている楽曲なのだ。
TEXT 空屋まひろ
1975年「アザミ嬢のララバイ」でデビュー。同年、日本武道館で開催された第6回世界歌謡祭にて、「時代」でグランプリを受賞。 1976年アルバム『私の声が聞こえますか』をリリース。 現在までにオリジナル・アルバム43作品をリリース。アルバム、ビデオ、コンサート、夜会、ラジオパーソナリティ···

この特集へのレビュー
の
2021/02/12 14:01
私はこの曲を行進曲と受け止めています
つらくても かなしくても
歩みを止めず進めと聴こえてくるのです
それは悩むことであり 闘うことでもあります
でも歩み続け道を作れと歌っていると思います
中島みゆきさんご自身もこれを歌いながら歩まれたのではないでしょうか
くれくれくれす
2021/03/05 02:16
中島みゆき氏によれば、これは番組とは関係ないとのこと。
愚か者たちや、それに向き合えない愚かな自分・・・その全てから奮えながらも戦えという、そしてどこか力になりきれない悔しさも感じさせる応援歌に聴こえます。
萎える闘魂
2021/03/06 14:48
日本初のヘビー級ボクサー、カシアス内藤にインスパイヤされて書いた曲じゃなかったっけ。沢木耕太郎のルポルタージュで、知る人ぞ知るカシアス内藤。
ボクシング→「ファイト」というキーワードから想起される様々なエピソードを、思いつくまま書き連ねた、B.ディランがよく使う創作手法。「あたし」と「わたし」が混在する未完成な歌詞。
多くの人を心酔させ、リスペクトされる事に困惑しているのは、案外創作者本人かもしれない。