藤原竜也&竹内涼真主演の映画「太陽は動かない」の主題歌はSrv.Vinci時代のリメイク曲
藤原竜也と竹内涼真が初共演を果たした、2021年3月5日公開の映画『太陽は動かない』。
原作は吉田修一の同名サスペンス小説です。
心臓に爆弾を埋め込まれた秘密組織のエージェントがバディを組み、死と隣り合わせの極限状態の中で世界各国のエージェントと戦いながらミッションに挑んでいくという内容になっています。
この『太陽は動かない』主題歌に起用されたのが、4人組人気ミクスチャーバンド・King Gnu(キングヌー)のデジタル配信限定シングル『泡(あぶく)』です。
メンバーの常田大希が作詞作曲を手がけた楽曲ですが、実は完全な新曲ではありません。
King Gnuの前身バンド『Srv.Vinc(サーヴァ・ヴィンチ)』時代に作られた『ABUKU』のリメイク曲なのです。
この楽曲と映画について、常田大希は「運命の不条理さとそれでも生きることの尊さを再確認できました」と語っており、根底にある命の儚さや死生観を問うメッセージがリンクしていることが分かります。
どんな歌詞なのか、その内容と意味を読み解いていきましょう。
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消えたの
泡となり
消えたの
いつの間にか
わかってりゃ
もっとずっと一層
清らかに
溶け合ったのにね
この気持ち
≪泡 歌詞より抜粋≫
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いつの間にか泡となって消えていった誰かの命。
「わかってりゃもっと」と続く言葉から、主人公にとって身近で大切な人が亡くなってしまったと考えられます。
いつ死ぬのか知ることができたら、正直な気持ちを打ち明け合って心を通わせられたはずなのにと後悔している様子が想像できるでしょう。
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跳ねたの
魚と成り
誰よりも
軽やかに
そのまま
もっとずっと一層
清らかに
飛んでゆけたらね
この気持ち
≪泡 歌詞より抜粋≫
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水の中で生きている魚が水面を跳ねる姿は、どことなく力強さを感じさせます。
そのことから「跳ねたの 魚と成り」というフレーズは、人生を一生懸命生きていることの比喩表現と考察することができるでしょう。
主人公は精一杯生きてきたようですが、大切な人の死を受けてそのまま「清らかに飛んでゆけたらね」と歌い、ショックを隠し切れないでいることが伝わってきます。
「ABUKU」にはなかった新たな歌詞の解釈とは
サビの歌詞は原曲の『ABUKU』にはなかった部分で、リメイクに合わせて新たに追加されました。
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パチンと弾けて
泡のように消えた
呆気のない運命が
心をえぐった
確かに感じた
仄かに歯がゆい
過ぎ去った運命に
囚われたままで
≪泡 歌詞より抜粋≫
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人の死は本当に呆気ないもので、泡が弾けてしまうかのように一瞬です。
過去にあった様々な出来事に心を囚われたまま、大切な人の死に向き合うことができない人は多いのではないでしょうか。
亡くなる前に心を通わせられなかったことだけでなく、死の運命にはあががえないという現実への歯がゆさも残された人たちの心を深くえぐります。
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パチンと弾けて
泡のように消えた
あなたは今も
どこかで元気ですか?
あの夏の匂い
仄かに歯がゆい
いつしか夢中で
追いかけてたのは影
≪泡 歌詞より抜粋≫
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大切に想う人だからこそ、亡くなってもなお幸せでいてほしいと願う。
「あなた」への問いかけは、そんな純粋な愛情が伝わってくる優しい表現ですね。
「あの夏の匂い」というフレーズは、二人の共通の思い出か最後に会った日の記憶を指しているのでしょう。
「夢中で追いかけてた」とあるように、主人公にとってその人は近づきたいと思える尊い存在だったようです。
しかし、死によって完全に近づけなくなった今、「影」という実体のない記憶の中だけの存在になってしまいました。
もっと何かできたのではないかと考えるあまり、貴重な思い出さえ歯がゆく苦いものに変わってしまっています。
繰り返されるフレーズから切なさが伝わる
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消えたの
泡となり
消えたの
いつの間にか
わかってりゃ
もっとずっと一層
清らかに
溶け合ったのにね
この気持ち
跳ねたの
魚と成り
誰よりも
軽やかに
そのまま
もっとずっと一層
清らかに
飛んでゆけたらね
この気持ち
この気持ち
≪泡 歌詞より抜粋≫
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曲の後半は1番と同じ歌詞が繰り返され、より切なさを感じる歌声が心に沁みます。
家族、友人、恋人、恩師...どのような関係の相手でも、愛し追いかけてきた人を失うよりもつらいことはありません。
それでも日々は変わらず過ぎていくため、やるせなさを抱えながらも生きていくしかないのです。
最後に繰り返し「この気持ち」と歌われます。
相手を大切に思ってきたことや、そのために湧き出てくる後悔など、様々な感情が含まれているのでしょう。
そして、その人がいない人生を懸命に生きようとする決意も込められているのではないでしょうか。
神様以外は、いつ死ぬかを知る術はありません。
今この瞬間でさえ、命を落とす可能性があります。
だったら、大切な人を失った時、自分が命を落とす時、少しでも後悔の少ない生き方をしたい。
そんな願いが強まることでしょう。
「泡」は儚くも尊い命が愛おしくなる楽曲
『泡(あぶく)』は儚く消えてしまう命への切ない思いが綴られた楽曲です。
人生はいつも死と隣り合わせで、誰もが死を見据えながら生きています。
一見絶望に向かっていくようにも感じますが、限りがあるからこそ一層大切にしていく価値が生まれるのではないでしょうか。
死を受け止め、一分一秒を懸命に生きるよう心に訴えかけてくる歌詞に、きっと共感できるでしょう。
いつもとは一味違うKing Gnuの音楽に酔いしれてみませんか?