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【インタビュー】重盛さと美・希帆「一番自分たちらしい、等身大の曲が作れた」

重盛さと美がYouTubeにアップした「TOKYO DRIFT FREESTYLE」。そこに友達として客演した希帆が、重盛のプロデュースで配信シングル「uchiseiuchi」をリリースした。重盛と希帆の関係性や楽曲制作の裏側について2人に話を聞いた。

育ちがヒップホップで説得力がある

──重盛さんがTERIYAKI BOYZの『TOKYO DRIFT』のビートに乗せてラップを披露する『TOKYO DRIFT FREESTYLE』をYouTubeで披露し、そこで“友達”として客演されたのが希帆さんでした。その動画の再生回数が2400万回を超えていて、ものすごく注目されています。改めてお2人の関係性からお聞きしたいのですが、番組で共演されたのがきっかけだそうですね。


希帆:10年以上前なんですけれど、そこから友だちで。さっちゃんはTHE芸能界のタレントさんというイメージで共演させてもらったんですけれど、蓋を開けてみたらすごく庶民的というか。

重盛さと美:凡人?

希帆:ははは!

重盛さと美:超凡人だよね。

希帆:そのギャップにやられました(笑)。私もすごく貧乏な環境で育っているので、同じ匂いを感じて。それで初めて自分から連絡先を聞いたんです。

▲重盛さと美feat.友達 TOKYO DRIFT FREESTYLE

──重盛さんから見て、希帆さんはどんなイメージの女の子でしたか?

重盛さと美:私は真逆でした。「希帆」という苗字がない芸名だったので、ちょっと女優っぽい感じがするじゃないですか。だから果たして自分と仲良くなれるタイプなのかな、と思って、しゃべったことがなかったんです。それで1年間くらい同じ仕事をしていたんですけれど、最後の収録の時にトコトコと走ってきて。「重盛さん、連絡先教えてください!」と言われて、ずきゅん!みたいな(笑)。初めて同じ芸能界の人に連絡先を聞いてもらえたので、内心すごくうれしかったです。


──それから10年以上一緒?

重盛さと美:そうです。声をかけてくれていなかったら、『TOKYO DRIFT FREESTYLE』も生まれてないので。うれしいです。


──今回、希帆さんに声をかけたのはなぜですか?

重盛さと美:私は個人的にラップが好きで、ずっと YouTube でラップばかり見ていたんです。その時にはやっていた「TOKYO DRIFT FREESTYLE」を希帆ちゃんにしてもらいたいな、と思ってリリックを書きました。


──希帆さんはもともとヒップホップにくわしかったのですか?

希帆:私はラップとかまったく聴いてこなかったタイプの人間なので。自粛中で会っていない期間に、さっちゃんから「とりあえず今、これを覚えろ」と言われて、ボイスメモだけ送られてきたんです(笑)。「何だろう?」と思っていたら、「今、これが流行っているんだよね」という説明が後から来て。とりあえず私はボイスメモを一生懸命覚える役割をもらったので、「よし! 先輩からの依頼だから覚えよう」みたいな感じでした。


──ちなみに重盛さんから見て、希帆さんのヒップホップのセンスはいかがですか?

重盛さと美:練習熱心なんですよね。ボイスメモを何回も聴いて練習して、上手に歌ってくれました。あと育ちがヒップホップなので、この人が貧乏系の歌を歌ったら、誰よりも説得力が出るだろうな、とは思っていたんです。

コンプレックスは武器にできる

──それで『自粛中ラップ』として世の中に広まってますね。あの勢いはいかがでしたか?

重盛さと美:意外でびっくりしましたし、世間の反応が面白かったです。自分ではさらさらと作って、いつもの私服だし、家で撮っただけだから、あんなに褒められると思っていなかったです。あと「意外」と言われるのも「これは意外なんだ」という衝撃がありました。でも「服装とかが好き」と言って、たくさんの方がInstagramをフォローしてくれて。フォロワーは自粛中に20万人以上増えました。

▲重盛さと美feat.友達「自粛中ラップ ~アーメンver.~ 」【Official Video】



──すごい! 希帆さんも増えたそうですね。

希帆:はい! 5万5千人くらい増えました。


──重盛さんがもともとヒップホップを好きになったきっかけは?

重盛さと美:子どもの時からうちの地元ではすごく流行っていて。カラオケに行ってもみんなラップばかりでした。その時はビッグスクーターが流行していて、誰が一番かっこいいヒップホップをかけながら乗っているか、みたいなことをしていたんです。大体洋楽かヒップホップばかりでしたね。


──そういうことだったんですね。そして希帆さんは通って来なかった道に入ることに。

重盛さと美:でも嗅覚があるから。ボイスメモを送った瞬間に、「これ、めっちゃいい!」と言ってくれたんです。

希帆:さっちゃんの声とも合っていたんです。だからこの歌い方に寄せて歌いたい、というイメージがあって。「これはもう、絶対に」

重盛さと美:「バズる?」

希帆:あははは! ちょこっと確信はありました。


──今回、希帆さんのプロデュースを重盛さんが担当されたのも、このままではもったいない、ということからだったのでしょうか?


重盛さと美:多分、プロのすごい作詞家、作曲家の方たちがプロデュースするよりも、自分がした方が希帆ちゃんの魅力が引き出せると思ったので、志願させていただきました(笑)。

希帆:プロデュースというか、インスタの写真の角度とかもいちいち教えてくれるので。写真も撮ってくれたりするんですよ。私のことは一番近くで見てくれている分、「こうした方がいいんじゃない?」といったアドバイスを私生活でも受けていたので。だから、こうやってプロデュースと言われると恥ずかしいね。プロデューサーって、今日から呼ばなきゃいけないの(笑)?

重盛さと美:希帆ちゃんは、私にとってはごはんを作る人。私生活でご飯を作ってくれているお礼にちょっと曲を作る、みたいな感じです(笑)。


──希帆さんはお料理上手なのだとか。

重盛さと美:そうそう。私の苦手なことが得意で、私のできないことが得意なので。バランスが良いんだと思います。


──今回の表題曲「uchiseiuchi」は、テレビでも取り上げられた希帆さんのご実家のことを描いていますよね。屋根がない場所があったり、床が土のところもあったりと、かなり年季が入ったお家で。

重盛さと美:私には「あそこでMVを撮りたい」という夢があったのですが、この曲でやっと撮ることができました。多分ある意味、一番自分たちらしい作品、等身大の曲が作れたと思います。


──歌詞の世界が映像で展開されているわけですよね。

重盛さと美:もう絶対にMVは見て欲しい。MVがないと、たぶん伝わらないことが多いので。

希帆:確かに、歌詞だけだと「え? 何だろう?」という言葉がたぶん多いので。

重盛さと美:希帆ちゃんのYouTubeチャンネルに、私が彼女の実家を訪ねた様子を映した動画が上がっているんですけれど、それを見た人以外は何のことか分からないよね。<あさりの砂抜き? No No洗濯機!>とかYouTubeをご覧になった方は分かると思うんですけど、それもMVであのまま使っています。<すごい物語 も~屋根が足りん>はドローンで上から撮ったから、改めてすごく屋根が足りないな、と思いました。だからたぶん見たことない MVだし、衝撃映像が流れます。お家はいつ崩れてもおかしくない状態なので、崩れる前にこの日本に映像を残せて良かったです。

▲希帆feat.友達(重盛さと美) / uchiseiuchi 【Official Video】



──あの中でも希帆さんは料理上手になって、それがすごいと思いました。

重盛さと美:だから人って、貧乏とか教育とかじゃないんだな、と思いました。

希帆:逆に「貧乏だからこそできたことがあるのが武器」というのを教えてくれたのがさっちゃんなんです。「コンプレックスを武器にしろ」と言ってくれたプロデューサーなんです。


──歌詞の中でも<でもこれもお前だけの個性>と書かれていますよね。そして<だからやめな悲劇のヒロイン>というところもすごくいいです。

重盛さと美:私もそこの MV が一番好きで。希帆ちゃんがカメラ目線で画面いっぱいに泣いているんだけれど、思いっきり足で顔を蹴飛ばされるという。そこも衝撃映像だと思います。

希帆:でもこれは文字だけで見たら、意味が分からないね。

重盛さと美:MVも合わせて見てもらえたら、これが全部フィクションじゃなくて、ノンフィクションだよというのが分かるよね。そうしたら「深いな」と思ってもらえるんじゃないかと。

お金をかけても作れないセットだった

──<バスタオル2枚で作った 自作浴衣>というフレーズも衝撃だったのですが。

希帆:それはここで初公開しています。浴衣が買えなかったので、自分でガムテープとバスタオルで作りました。

重盛さと美:今回、実際に作ってもらい、着てもらって。一緒に花火をしています。笑えて泣けるMV になりました。


──思春期の女の子の「負けない」という気持ちが表れている曲ですね。


重盛さと美:うれしい。「貧乏でも一緒に笑ってくれる友だちや家族がいれば、人生は楽しいよ」というのが伝わればいいな、と。

希帆:この歌詞はさっちゃんしか書けない。私が隠していた気持ちも全部知っているからこそ、たぶん<やめな悲劇のヒロイン>といったフレーズが出てきたんだと思います。

重盛さと美:出会った頃は、本当に悲劇のヒロインだった。「自分はこれだけ不幸で。親は離婚して、屋根もなくて」みたいな。でも私から見たら「タレントとしてプラスじゃない?」と。「そんな武器があるの? パパに感謝しなよ」みたいな。だから改めてさかのぼってMVを撮ってみたら、やっぱりぐっとくるもんね。

希帆:うん、ぐっとくるね。

重盛さと美:だからみんなの反応が楽しみです。


──希帆さんは今、すごくポジティブだから、もともとそうなのかと思っていました。

希帆:いやいや、そんな。

重盛さと美:出会ったころ、泣いていたよね。

希帆:泣いていました。それこそ連絡も取れなくて。さっちゃんが怒ってくれなかったら、ずっと今でも隠し続けていたかもしれないんですけど。

重盛さと美:そう。昔、大雨とか台風の次の日に連絡が取れなくなっていたんですよ。「何で連絡取らないの? 仕事の大事な電話なのに」と言ったら、「ごめん。実は」と希帆ちゃんの実家の写真が送られてきたんです。「だから台風の日の次の日は修理で大変なんだ」と。その写真を見て私は爆笑しちゃって。すぐ事務所の人に転送して、「希帆ちゃんの実家が面白いから、テレビに売り出したい」と伝えたんです。


──それは逆に強みになると。

希帆:気づかせてくれたんですよ。気づかないままだと、たぶんずっと平然を装って、生きていたかもしれないです。


──逆に笑ってくれる方が気は楽?

希帆:そう。自分がネガティブになりすぎているんだな、と気づけたので。そこは確かに、ありがとう!

重盛さと美:希帆ちゃんの実家は、絶対お金をかけても作れないセットだと思う。もう最高でしたね。家を貸していただいたので、希帆ちゃんのお父さんにはいいお酒をプレゼントしました(笑)。

「uchiseiuchi」は最高傑作になったと思う

──UtaTenは歌詞サイトなので、特にお気に入りのフレーズを教えてもらえますか?

重盛さと美:私は「uchiseiuchi」の<養う父 床はほぼ土>ですね。


希帆:みんなそこだね。

重盛さと美:自分は音楽好きでいろいろ聴いてきたけど、このリリックは聴いたことがない。<床はほぼ土>の人は、本当にこの人くらいしかいないかな、と。それがまたフィクションじゃないというのが最大の武器で。これをフィクションで歌っていたら、無理矢理な韻で寒いけれど、これがノンフィクションだから、自分的にはめちゃめちゃ面白くて最高!という感じです。

希帆:私は全部が実体験だからなあ。でも<バスタオル2枚で作った 自作浴衣 貧乏想像力豊か>が好きですね。


──今回のコラボレーションをやってみて、これからはどんなことをしたいですか?

重盛さと美:野望は作りたいと思ったら作って、「楽しい」と思ったらやりたいです。楽しんでやらないと、多分見てる人も楽しくないから。


──希帆さんから重盛さんにお願いしたいことはありますか?

希帆:料理を作るので、曲を作ってもらっていいですか?

重盛さと美:物々交換します(笑)。

希帆:さっちゃんはフィクションは書けないから、私がいろいろなことを体験してくるので、それをまた歌にしてもらえたら。

重盛さと美:確かにフィクションは書けない。書けるようになったら強いよね。でも「uchiseiuchi」を超える曲は書けないんじゃないか、と不安になるくらいの最高傑作が、たぶん今回できたと思います。



TEXT キャベトンコ
PHOTO 片山拓

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