近すぎて好きと言えない幼馴染の男女
令和の音楽シーンを賑わす多くのネット発アーティストの中でも、際立った人気を誇るEve(イブ)とヨルシカのボーカル・suis(スイ)。
2021年2月5日にリリースされた楽曲『平行線』では、2人の豪華タッグが実現しました。
Eveが作詞作曲した爽やかで優しい楽曲に、Eveとsuisの繊細な歌声が乗った、バレンタインにぴったりのラブソングです。
ロッテのガーナチョコレートによるバレンタインイベント、「Gift」のテーマソングに起用されました。
MVはスペシャルアニメーションシ仕立てになっており、川を挟んだ向かいに住む幼馴染の男女「千代子」と「怜人」の恋模様を描くストーリーを描いています。
アニメーションの内容と合わせながら、歌詞の意味を読み解いていきましょう。
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世界は少しだって 思うようにはならなくて
どうしてもあの頃のように戻れないよ
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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引っ越し先へ向かう車に乗っている千代子。
ずっと好きだった怜人への想いを伝えられないまま離れることになり、「世界は少しだって思うように」ならないと感じています。
現実でも学校の卒業や引っ越し、コロナ禍による環境の変化でもどかしさを抱える人は多いのではないでしょうか。
幼い頃は何でも素直に言えたのに、成長するにつれて恥じらいや関係が変わることへの不安が生まれて好きだと伝えられなくなるという気持ちにも、きっと共感するでしょう。
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ねえ
ふたりの秘密だって 君は覚えていなくたって
くだらない話を聞いていたかったの
伝えたい想いだけが 募ってしまうな
近すぎたのかな
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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いつか交わした「ふたりの秘密」を覚えているのは、きっと自分だけ。
「こんなに好きなのもきっと自分の方だけ」と、互いに思っているようです。
それでも今、何てことない「くだらない話を聞いていたかった」から、この大切な関係を壊したくなくて告白できずにいたのでしょう。
幼馴染という関係ならいつでも気持ちを伝えられそうですが、長い間近くにいたからこそ言いにくいこともあります。
好きな気持ちはどんんどん募ってゆくけれど、関係が壊れるのが怖くて言えない。
そんなジレンマで苦しんでいる様子が伝わってきますね。
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さよならなんてさ (素直に) 当たり前の毎日が (なれないよ)
続いていくと思っていたから 平行線のまま
届くなら (2人で) ただもう一度今 (今)
胸にしまったまんまの 変わらないこの想いを
君に言おう
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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隣にいるのが当たり前だと思っていたのに、友達以上恋人未満という「平行線のまま」お別れする日がやってきました。
まだ想いが届くのであれば、伝えずにいた素直な気持ちを今こそ伝えようと決意します。
「一緒にいるだけで幸せ」だからこそ伝えたい気持ち
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ねえ
別に用などないけれど 交わす言葉もないけれど
もう少しだけ一緒に居られたなら
ほろ苦い思い出だけが溶かしてゆくんだ
変わらない風景にさよなら
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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相手はいつでも会える人なので、特別話したいことがあるわけでもありません。
約束して会っても、ふと無言になってしまう瞬間もあるでしょう。
しかし、本当に好きだから会話がなくても、ただ「もう少しだけ一緒に居られたなら」と願うのです。
残された時間は少なくても、共に過ごす時間が想いを伝えられずに苦しんできた「ほろ苦い思い出」だけ溶かして、温かな気持ちにしてくれます。
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優しくなれたら (近いのに) この手を伸ばせたら (遠くて)
眩しくて痛いまま ただ祈っていた 平行線のまま
届くなら (2人で) ただもう一度今 (今)
胸にしまったまんまの 変わらないこの想いを
君に言おう
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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「優しくなれたら」「この手を伸ばせたら」と何度も思い、平行線の関係が交わることを祈りながら何もできずにいた2人。
これまでは近くにいすぎて遠く感じていた距離が、物理的に離れようとしています。
そんな今なら思い切って本当の気持ちを正直に伝えられるでしょう。
千代子がバレンタインを口実に怜人を呼び出したように、バレンタインというイベントは少し臆病な恋する人たちの背中を押してくれるものなのです。
平行線から抜け出した2人に待つ未来の解釈とは
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この距離は縮まらないまま
交わらないようにできていた
答えなんてない 遅くなんてないから
ただ痛いくらい 今ならまだ間にあうかな
なんてさ
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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平行線で交わらなくても、すぐそばにいられるならそれでいいと考えて、この微妙な距離に安心していた気持ちがあったのでしょう。
「交わらないようにできていた」と言い訳して逃げていた部分もあったようですが、2人は気づきます。
恋に答えはないし、まだ気持ちを伝えるには遅くない。
まだ「なんてさ」と誤魔化したくなるけれど、そんな不安を抑えつけて動き出します。
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さよならなんてさ (素直に) 当たり前の毎日が (なれないよ)
続いていくと思っていたから 平行線のまま
届くなら (2人で) ただもう一度今 (今)
昨日までの世界じゃなくなっても 心は覚えている
変わらないこの想いを
君に言おう
≪平行線 歌詞より抜粋≫
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いつも隣にいたはずの大切な人がいないという事実に、胸が締め付けられるような切なさが込み上げてくるでしょう。
想いを伝えれば「昨日までの世界」とは変わってしまうことは分かっていますが、どうしても届けたい気持ちがあります。
誰も心の中で育てた愛情にあらがうことはできません。
勇気を出した千代子に、怜人も一歩踏み出して気持ちを届けました。
2人の関係がどうなったかは描かれていませんが、平行線でいる居心地の良さから抜け出すために行動した千代子と怜人には、きっとこれまで以上の幸せな時間が待っているはずです。
青春のピュアで愛おしい気持ちに胸がキュンとしますよ。
『平行線』は恋の甘酸っぱさを思い出せるバレンタインソング
Eveとsuisがタッグを組んだ『平行線』は、バレンタインと絡めた甘酸っぱい想いを感じさせる楽曲です。この楽曲に描かれている主人公たちは、現実を生きるすべての恋する人の姿と重なるでしょう。
恋の幸せなイメージよりも、好きなのに伝えられないもどかしさを切り取ったリアルな世界観に共感できるはずです。
かつて青春を過ごした大人も今青春真っ只中の人も、この曲を聴いて大切な人に「好き」を伝えてみませんか?