自虐を歌っている…?
『フールフールフール』は2021年3月6日に配信された、ボカロP『おくのほそみち』による楽曲。ボーカルには『うっせぇわ』で大ブレイクを果たした女性アーティスト『Ado』を迎えました。
タイトルを直訳すると「馬鹿馬鹿馬鹿」という意味になりますが、一体何が歌われているのでしょうか?
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敷かれたレールに乗っかるだけの程々に過ぎる人生
顰めた面に歳を重ねてはボロボロになった品性
中身がないから教えてくれよ
足りない要領 百も承知だから
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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冒頭で歌われているのは、自棄にも似た思い。
親や周りの人たちの言いなりになって生きてきたのか、自分には中身がないと言っていますね。
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馬の耳に唱える念仏を覚えられないセンスで
鹿の様に駆け抜ける体力は持ち合わせてないんで...
嫌われないけど好かれもしないな
不満はないのに満たされないから
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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次の歌詞でも自虐的な内容が歌われていますが、注目して欲しいのは最初の2行の冒頭の文字。
縦読みすると「馬鹿」という単語になります。
これは楽曲タイトルである「フール(=fool)」に通ずるポイント。
続くサビでも自分は頭が悪い、つまり「馬鹿である」といった内容が歌われています。
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ぼくだけあたまわるい
間違いだらけのオノマトペ
ひみつのあいことば
ペラペラ喋るよ
四角でとても丸い
コピペされたその顔じゃ
ホントの言葉は
Nothing
ないない
ないね?
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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「オノマトペ」とは物事の様子を音で表した擬音語のこと。
感覚的な言葉が間違っているということは、「空気が読めない」「感覚がずれている」ということを意味しているのでしょうか?
続く歌詞である「ひみつのあいことば=自分の感性」、「コピペされたその顔=言いなりの人間」と解釈してみましょう。
すると、自分は中身のない人間だといいつつも、しっかりと意思を持っているという主張が感じられますね。
ただの言いなり人間ではない?
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のるかそるかの
2択があるなら
"どちらでもない"
と回答
惚れた腫れたのゴシップが無駄だとクダをまく僕はゲットー
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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2番では提示された回答に対して、「どちらでもない」という自分の意思をぶつける様子がうかがえます。
ここからも、「中身がない」と言っていた割に強い意思を感じますね。
また、ゴシップに興味がない様子からは、他人を気にせず自分の身の回りの物事をしっかりと見つめている様子も感じられます。
ちなみに、「ゲットー」とはおそらくスラム街を意味する「ghetto」のこと。
自分の振る舞いにどことなく疎外感を感じているのかもしれません。
そして、そんな自分が理解されないことに対する嘆きが、続く歌詞で歌われています。
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掻き消されていく エモな気持ち
君なら分かってくれると思ってたのに
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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「君」とは一体誰なんでしょうか。
具体的な情報や答えは出てきませんが、友人や恋人など誰でも当てはまりそうです。
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近くて遠回り
井の中、蛙
オリジナリティ
ひみつの抜け道は
凸凹穴だらけ
生まれて死んでいく
Like a野良猫なその姿
ホントの言葉は何だっけ?
どこかで
失くしていた Ah
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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こちらは2回目のサビの歌詞。
「近くて遠回り=手が届きにくい」「井の中、蛙=狭い範囲でものを考えている」と解釈すると、それぞれの個性なんてたかが知れているというような意味であると考察できます。
また、どこかへ抜ける道は容易ではないとも表現されていますね。
なかなか抽象的な表現ですが、これまでを元に考察すると、たかが知れたような「個性」を盾にしていては自分の意思を失ってしまう、というメッセージではないでしょうか。
フールなのは誰?
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ないない
ないね?
ないない
ないわ
ないない
ないよね?
ないない
ないから
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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こちらは「ホントの言葉」、つまり自分の意思・意見なんてないよね?と問いかけていると思われる歌詞です。
なんだか鬼気迫るものを感じますね。
この後には最後のサビが続きます。
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ぼくらわあたまわるい
間違いだらけのオノマトペ
ひみつのあいことば
ペラペラ喋るよ
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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最初のサビは「ぼくは」だったのに対し、最後は「ぼくら」と複数形になっています。
接続詞が「は」ではなく「わ」になっているのは、頭が悪そうに見せる演出でしょうか?
しかし、そんな頭が悪い「ぼくら」は自分なりの感性で何かを話している様子。
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いつもと違う君
コピペされたその顔じゃ
最後の言葉は
Nothing
ないない
ないよね?
fool lu lu lu...
ないない
ないね
ないない
ないから
≪フールフールフール 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、「誰かの真似をしているようじゃ、自分の意思も最後に伝えたい言葉もない」というメッセージが込められているような歌詞が続きます。
ここまでをまとめると、「フール」とされているのは楽曲の主人公ではなく、誰かのいいなりになっていたり誰かの真似をしたりしている人物のことなのではないでしょうか?
馬鹿でもいいし、頭が悪くてもいい。
自分の意見を持つと、時には疎外感を感じることもあるかもしれません。
でも、自分の意見や意思がない人の方がフールじゃない?
そんなメッセージが込められた楽曲なのかもしれませんね。
馬と鹿?が出てくるMVにも注目!
一体誰が「フール」なのか、その答えはわかりません。
自虐の曲なのか、そう見せかけて自分を肯定している曲なのか、感じ方は人それぞれあることでしょう。
ぜひ皆さんなりの考察を楽しんでみてください。
また、『フールフールフール』にはアニメーションMVが制作されています。
主人公の青年と、馬と鹿の被り物をかぶった謎の動物が登場する不思議なMVです。
「馬」と「鹿」、合わせると「馬鹿=フール」になることから、ここにも何かメッセージが隠されているかもしれませんね。