一陣の風のような印象やイメージ。
──ウォルピスカーターさん、「デジモンアドベンチャー」シリーズは昔から思い入れの強かった作品でした?
ウォルピスカーター:「デジモンアドベンチャー」に関しては、小学生の頃にニンテンドーDSのゲームを死ぬほどやり込んでましたね!
──今回「デジモンアドベンチャー:」のエンディングテーマを担当したわけですが、制作へはどのような意識で向かったのかも教えてください。
ウォルピスカーター:最初に、アニメの世界観をどう出すかというのに悩んだといいますか。
やはり、アニメ作品の顔にあるのはオープニングテーマだと思うんです。ならば、「デジモンアドベンチャー:」の持つ世界観はオープニングテーマに任せ、エンディングテーマに関しては、今回作曲をお願いしたOrangestarさんと歌詞も共作したのですが、僕らっぽい楽曲を書こうかなと思いました。
なので「デジモンアドベンチャー:」の世界観をはっきり投影するわけではなく、聴いた人たちが、文脈から「あっ、「デジモンアドベンチャー:」のことを言ってるのかな」と感じてくれればいいなという心持ちで作詞に向かいました。
──歌詞に出てくる「なら大人になんかなっちゃいけないねぇ」の一節が、強く胸に刺さりました。そこにも、いろんな意味を含んでいるのかなと想像したのですが…。
ウォルピスカーター:そこの歌詞には、Orangestarさんの想いのほうが強く反映されているのだと思います。
Orangestarさんは、ボカロPとして活動されている方なんですけど、少年少女や思春期特有の大人になりきれない想いを歌詞に起こすことの多い方で。
僕も割と少年少女をテーマに歌詞を書くことも多くて、今回もその視点で書いた歌詞が先にあったのですが、よりOrangestarさんが大人未満な世界へ仕上げてくれて、「なら大人になんかなっちゃいけないねぇ」という言葉にもOrangestarさんなりの視点や想いが記されているなと思います。
──結果的に、エンディングの映像と楽曲が上手くシンクロしましたよね。
ウォルピスカーター:歌詞に込めた想いを上手く汲み取ってくれたのだと感じました。
──疾走感を持った楽曲と、歌詞、映像の世界観が上手く重なり合っていますからね。楽曲自体も駆け抜けてく感じが強いせいか、テンション上がったままに聞きながらあっと言う間にエンディングを迎えてたという感覚を強く感じていました。
ウォルピスカーター:そこが、この曲を際立たせている魅力ですよね。構成も、よくあるABサビという展開と比べたら、かなり特殊なものですし。
キーの高さやテンポ感も相まって、一陣の風のような印象やイメージでしょうか。
毎年夏に架空のタイアップ企画をやっています。
──1stEP『Overseas Highway』には多彩な曲調を並べています。この作品、どういう狙いを持って作り始めたのかも教えてください。ウォルピスカーター:「こういうテーマや曲調で作るとしたら、この人にお願いしたい」という感じで、1曲1曲マッチングさせながら作り上げました。
当初は、『オーバーシーズ・ハイウェイ』1曲だけのシングルという選択肢もあったのですが、ちょうど手元に、まだパッケージ化していない2つの楽曲があったことから、新曲も加えて豪華なEPという形にしちゃおうという流れですね。
──手元にあった2曲とは、どの歌たちですか?
ウォルピスカーター:『口なしの黒百合』と『止まないねって言わないで』の2曲です。
──『止まないねって言わないで』も、シングルのA面に相応しい明るくポップでキャッチーな楽曲ですよね。
ウォルピスカーター:僕は、毎年夏になると「嘘の夏のCM曲を作る」という架空のタイアップ企画をやっています。
その企画のために作ったのが『止まないねって言わないで』で、青春っぽさを突き詰めた楽曲です。
──その説明を聞いたうえで楽曲を聞くと、曲調や内容面でもますます納得です。
ウォルピスカーター:本当に(CM楽曲の)依頼が来たときに、満足のいく楽曲が出来なかったら嫌じゃないですか(笑)。
だから、こういう場で実務経験を先に重ねておこうと。
──ウォルピスカーターさんは、アニメソングのタイアップ曲もいくつか担当していますよね。縛りがあったほうが歌詞は書きやすいのか、それとも、何も縛りのないほうが表現しやすいのか、その辺はどうなのでしょうか?
ウォルピスカーター:自由に何でも書いていい状況と、作品に寄り添った歌詞を書く状況など、いろいろあると思いますが、僕に関しては、テーマが定まっているほうが割と書きやすいタイプです。
──収録した『シ・シ・シ』の歌詞ですが、正直、意味不明だったんですよね。この曲にどんなテーマを据えたのか、良ければ教えてください。
ウォルピスカーター:その通りです。この曲には、まったく意味はないんです(笑)。
最初はきちんとメッセージを持って歌詞を書こうと思ったんですけど。楽曲を聴いたときに、サビの譜割りが印象的だったので、「まずは、そこから歌詞を書き始めよう」となったんですね。
そこで最初に出てきた言葉が、「八方獅子心中の虫」という言葉。その言葉には「し」がいっぱい出てくることもあって、そこから「し」をたくさん使った言葉遊びをしていきました。
──この曲の軸になっていたのは言葉遊びだったんですね。韻を踏んでいる言葉も多いように「そうなのかな?」と思いつつも、「きっと裏があるのでは?」といろいろ深読みしながら聞いていました(笑)。
ウォルピスカーター:僕自身はその場の勢いで歌詞を書いていったので、楽しかったという思いが一番残っていますね。
いつもなら、「一番の歌詞ではこう言ってるから、二番でその意味をひっくり返しちゃいけないよね」「Aメロではこう言ってるから、Bメロでは繋がり的にこうしよう」などと考えるんですけど。
『シ・シ・シ』に関しては、何を書いても「らしくなる」というか。言葉の意味が二転三転してもいいし、言ってることの意味がひっくり返ってもいいし、時代感にそぐわない言葉を使っても、むしろ似合う。
そういう、聴いた人が「遊び心満載の歌詞」と思ってくれるような歌詞を目指して、とことん遊びました。この歌を例えば「新世紀エヴァンゲリオン」のように、公式では何もアナウンスしてないのに、聴いた人たちがどんどん歌詞を深読みして、勝手に世界観を広げてくれたらそれも面白いなと思っています。
──ほんと、インパクトの強い楽曲ですよね。
ウォルピスカーター:だいぶ耳触りが良いというか、語感のいい単語ばかりを集めて書いたので、耳には残るなと思います。