DECO*27書き下ろし!「踊」歌詞の解釈に迫る
圧倒的な迫力のあるハスキーな歌声と強烈なまでの表現力で、若者を中心に高い人気を誇る女性シンガー・Ado。
ボカロをカバーする歌い手として着実に知名度を上げてきたAdoは、メジャーデビュー曲『うっせえわ』で国内外を問わず高評価を受け、一躍人気アーティストに上り詰めました。
Adoの楽曲の注目ポイントは、毎回有名ボカロPが作詞作曲を手がけているところにもあります。
4枚目のシングルとなる『踊(読み方:おど)』では、作曲・編曲をGigaとTeddyLoid、作詞をDECO*27が担当。
またもビッグネームが名を連ねるAdoの新曲ということで、公式YouTubeチャンネルに投稿されたMVは公開1日で100万回再生を突破し、その注目度の高さが窺えます。
今回のMVはイラストをかゆか、映像を藍瀬まなみが担当し、ドローンカメラを通した目線で描かれるユニークな構成が目を引くでしょう。
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半端ならK.O.
≪踊 歌詞より抜粋≫
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『踊』の歌詞で最も特徴的なこのフレーズからインスパイアを受け、女子ボクサーを主人公にした物語が展開されていきます。
DECO*27の世界観が詰まった歌詞の意味を徹底考察していきましょう。
いじめと戦うには仲間が必要
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なんだかな…ってつまんないこともあるでしょう
ロンリー論理のノート ハンディー本気脱走
やんなっちゃって泥に Badご法度だろうが溺れて堕ちて そろそろいっか
≪踊 歌詞より抜粋≫
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主人公は多くの人が抱える気持ちを代弁しています。
同じことの繰り返しの毎日をつまらなく感じたり、学校での理不尽ないじめやネットの中傷に納得できないと感じたりすることが多い世の中です。
今回は、いじめを受けている人へのメッセージと捉えて考察を進めていきます。
いじめが原因で全てを諦めて「ご法度」な選択をしてしまう人が増えていることは、日本の大きな社会問題のひとつでしょう。
しかし、主人公は自分だけが持つ論理を手放すことなく、こんな日常から本気で逃れようとするべきだと教えてくれています。
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もっと頑張って アガるまでもっと頑張って
繋がろうひとりよりふたり 増えたら安心 心配ないや
Alright 任せて Don't Mind
波あり難題 みんなで乗っかっちゃえば
案外さくっと行っちゃいそう
≪踊 歌詞より抜粋≫
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そんな苦しむ人たちを鼓舞するように、沈む気分が「アガるまでもっと頑張って」と歌います。
それでも一人で頑張れと言っているわけではありません。
「繋がろうひとりよりふたり 増えたら安心」とあるように、信頼できる仲間を増やしていけば、つらい現状も乗り越えられると語りかけています。
主人公も力を貸してくれるうちの一人で、助けを求めれば「Alright 任せて Don’t Mind」と気安く請け負ってくれるようです。
それは彼女自身が強いからではなく、みんなで協力すれば物事は意外とあっさり解決するものだと信じているから。
何より大切なのは、一人で我慢することではなく状況を打破するために助けを求めることなのです。
MVで描かれるドローンは、おそらくいじめの傍観者たちを表しているのでしょう。
加害者も傍観者たちも敵と考えると圧倒されそうですが、確かな味方がいればきっと乗り越えていけるはずです。
「半端なら K.O.」は2つの意味を持つメッセージ
サビの部分では、ついにいじめ加害者との勝負が繰り広げられます。
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半端ならK.O. ふわふわしたいならどうぞ
開演準備しちゃおうか 泣いても笑っても愛してね
ほらSay No 低音響かせろ
≪踊 歌詞より抜粋≫
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「半端なら K.O.」という言葉には2つの意味が隠れていると考察しました。
1つは、「半端な覚悟で勝負を挑んだら倒されてしまうぞ」と自分たちを鼓舞する意味。
もう1つは、「半端な気持ちで手を出したならあっさり倒してやるぜ」という相手への挑発の意味です。
そして「ふわふわしたいならどうぞ」のフレーズは、飛び回るドローンのようにどっちつかずな傍観者たちへの言葉なのかもしれません。
また、「Say No」は嫌なことははっきり嫌という勇気を持つことと、仲間と呼吸を合わせるための「せーの」の掛け声の意味を持っていると考察できるでしょう。
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今宵は暗転パーティー
Woah 踊りだせ 踊りだせ 孤独は殺菌 満員御礼
Woah 痛みまで おシェアで ここらでバイバイ Let go
≪踊 歌詞より抜粋≫
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演劇で用いられる「暗転」は場面を変える役割を持つ言葉です。
ただいじめられてきた今までとは違う反撃の時がやって来たことを示しているのでしょう。
事態が悪い方へ変化するという意味もありますが、確かに加害者からすれば仲間を引き連れて反撃されるこの状況はあまり良くないものと言えますね。
被害者の孤独や、いじめに耐えようとする気持ちは、菌のようにいつしか心をむしばむものです。
反対に、弱音や本心を話せる仲間を増やしていけば、言わば「殺菌」したように考え方も心も綺麗になります。
受けた苦しみや痛みまで分け合っていくなら、加害者に打ち勝つことも可能なのではないでしょうか。
おどおどしていないで思い切って行動しよう
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どんな劣等感だとて 即興の血小板で
抑え込んで 突っ込んで 仕舞っちゃうでしょ
Up and downなテンション
ねえまいっちゃってんの相当
ドバっと噴き出すのは 本音の独り言
≪踊 歌詞より抜粋≫
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「血小板」とは出血した時に血を固める成分のこと。
劣等感は自身の心を傷つけるナイフのようなものです。
他者から傷つけられなくても、気が付けば自分で自分を傷つけてしまうことがあります。
だから、傷を覆うかさぶたのように、劣等感が噴き出てしまわないよう本音に蓋をして抑え込んでいます。
しかし、そうして無理に本心を隠していると、気分は激しく上下して余計に苦しくなってしまうでしょう。
そんな自分の弱さとも戦わなければ、理不尽な現状に立ち向かうことはできません。
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「別に興味ない」
「特に関係ない」
塞ぎ込んで 舌鋒絶頂へ
合図を奏でて PrrPrrPrr
ほら集まって夜行だ 鳴いていこう
≪踊 歌詞より抜粋≫
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「別に興味ない」「特に関係ない」と傍観者たちは散っていきます。
「舌鋒(読み方:ぜっぽう)」とは言葉が矛先のように鋭いことを指す言葉です。
それが「絶頂へ」向かうということは、加害者との戦いがさらに激しくなっていると解釈できます。
応戦するには仲間との協力が必要です。
「夜行」は夜に活動することなので、夜のように暗いいじめの現実の中をみんなで堂々と進んで行く様子が想像できます。
人は決して強い存在ではありません。
弱いからいじめが起こってしまうとも言えるでしょう。
しかし、助けを求めれば応えてくれる人はきっとたくさんいます。
苦しみに声を上げずに黙っているよりも、仲間と一緒に迷わず思い切り騒げばいいのです。
『踊』という一風変わったタイトルには、いじめに怯えておどおどしていないで行動し声を上げようというメッセージが込められているのではないでしょうか。
現状がつらくても、仲間がいることと生きる楽しみを忘れないでいれば、きっといじめという負の問題から笑って抜け出せる日がくるはずです。
「踊」を聴けば日常がもっと楽しくなる
Adoの『踊』はいじめなど日常に苦しむ人たちに向けて、乗り越えるための力を与える楽曲です。
NHK『夜光音楽 ボカロP 5min.』のテーマソングに起用されていて、これからますます人気が高まることでしょう。
パーティーソングのようなノリの良い音楽とワードセンスが光る歌詞、そしてAdoの類まれな歌声が楽しめる『踊』を聴いて、日常の憂うつを吹き飛ばしましょう!