THE FIRST TAKEでのファンの反応
一発撮りのパフォーマンスを切り取るYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に、変態紳士クラブ『YOKAZE』の動画が2021年5月7日に公開されました。
動画の説明欄では、‟等身大”のメッセージが支持される曲だと紹介されています。
動画のコメント欄を見てみても、共感したり、自分の過去を想起しているファンが多いようです。
聴き手が「自分のことを歌った曲だ」と共感できる歌詞になっているのかもしれません。
それではさっそく歌詞を見ていきましょう。
----------------
恥だらけこの人生
引けず未だに粋がってる
死にたくて生きたくてもう
頭がパンクして今に壊れそう
もがく24 走る高速
飛ばす130キロready go
ふかすタバコと自己嫌悪
記憶曖昧の金土曜
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞には、人生への恥や自己嫌悪の気持ちが強く表れており、「死にたくて生きたくてもう 頭がパンクして今に壊れそう」というフレーズには苦しさが滲み出ています。
あまりにリアルなので、作詞したメンバー自身が悩んでいるときに書いた歌詞なのかもしれませんね。
昭和歌謡「旅の夜風」とリンクする歌詞
昭和時代に『愛染かつら』という映画の主題歌としてヒットした『旅の夜風』という曲をご存じでしょうか。
戦時歌謡を歌ってきた霧島昇と女性の流行歌歌手として活動していたス・コロムビア(本名:松原操)が歌った曲です。
「花も嵐も 踏み越えて 行くが男の 生きる道」という歌詞が有名ですが、「肌に夜風が沁みわたる 男 柳が なに泣くものか」という歌詞もあります。
----------------
ただ争ったっていいんだよそれはお前の人生さ
なるようになるさ大抵
失敗すらいつかDigest
月の光が差した日
自分に嫌気が差したり
変わらず待ってる旅立ち
でも構わずなってく明日に
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
変態紳士クラブ『YOKAZE』の歌詞をみてみると、‟自分に嫌気が差しても、自分の人生だから、自分でいいんだよ”というメッセージが伝わってきます。
苦しさを乗り越えて自分の道を行くといった決意が、昭和歌謡『旅の夜風』にリンクしているように思えます。
----------------
不安や不満を飛ばすため
窓を開けたHigh way
車は走ってく 理由はあのNightmare
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
また、『YOKAZE』のサビからは、高速で車の窓を開けて夜風にあたる姿が浮かびます。
主人公は不安や不満を風で吹き飛ばそうとしているのです。
この部分も、つらいときに夜風が沁みるといった描写が『旅の夜風』の歌詞にとリンクしているように感じられますね。
曲名もリンクしているので、意図して作詞されたのかもしれません。
作詞の経緯について確かなことは分かりませんが、1つ分かるのは令和の今も、悩みながら前を向く男性の姿は昭和の時代から変わっていないということでしょう。
人の泥臭さと風の爽やかさが交錯する歌詞
『YOKAZE』の歌詞は、苦しい気持ちがありのまま表現されていて、つらい状況にある人ほど共感でき、心に響くような歌詞になっています。
一方で、車で高速を走る爽やかな描写や、不安や不満を吹き飛ばしてくれるポジティブな歌詞も印象的です。
星や月、夜景などの描写がありますが、苦しさの詰まった泥臭い歌詞と対象的な歌詞として、こういった綺麗な描写があるのかもしれません。
音楽としても対比があります。
苦しみを表現した歌詞は、下に声を落とすような低い声のラップが多いです。
しかし、爽やかな描写であるサビは、上に向かって声をとばすような高音の突き抜けた歌い方になっています。
人間らしい泥臭い気持ちを表現した歌詞とラップ、それでも自分らしく生きたいという想いが込められた前向きな歌詞と爽やかな歌声。
両方あることによって、互いの表現が際立ち、込められた想いも交錯します。
----------------
やけに綺麗な夜景に嫌気キラキラしてる
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞には大量に韻が踏まれており、目を見張るものがあります。
「やけに」と「夜景に」はもちろん、「嫌気」も「夜景」と同じ音を使った単語です。
「綺麗な」と「キラキラ」も語感が近いため、なめらかに耳に入ってきます。
歌詞の意味としても、‟綺麗な夜景”と‟嫌気”というポジティブな描写とネガティブな言葉が対になっているようです。
この曲の特徴が詰まったワンフレーズですね。
「YOKAZE」の歌詞に込められた想い
人はいつも前向きにいられるわけではなく、苦しさに飲み込まれてしまうときがあります。
しかし、それでも前を向こうと気持ちを新たにできるときもあります。
そんな葛藤をそのまま音楽として表現した曲なのではないでしょうか。
『YOKAZE』は、苦しみだけを表現するのではなく、最後は前向きになれるような音楽をつくりたいという作詞家・作曲家の思いの伝わる、あたたかい曲だと言えるでしょう。
----------------
月の光が差した日
自分に嫌気が差したり
変わらず待ってる旅立ち
でも構わずなってく明日に
昔と比べりゃ確かに
淀んで見えてる街並み
越えた無数の間違いの先にあるものを歌いたい
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
「越えた無数の間違いの先にあるものを歌いたい」という言葉に胸をうたれます。
----------------
ケツでも拭いてトイレに流す常識
まだ酒が残るI'm sorry
ありがとうねってMyHomie
まだ信じれてないよ あの答えを
≪YOKAZE 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞では、「教えてくれたのは微風」となっていますが、私たち聴き手にとっては、‟常識ではなく自分に正直に生きようぜ”と教えてくれたのは『YOKAZE』かもしれませんね。
きっとこの曲は、多くの人の背中を押し続けてくれるでしょう。
苦しくなってしまった独りの夜に、車を走らせながら流したり、散歩しながら聴いたりして、歌詞にこめられた想いに浸りたくなります。