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ヨルシカ「又三郎」は宮沢賢治の小説モチーフ!歌詞の意味を考察

ヨルシカ『又三郎』は、宮沢賢治の小説『風の又三郎』がモチーフの、「風」をキーワードにした、疾走感溢れる一曲です。タイトルに有名な小説をあてた理由は何か、歌詞の意味を考察していきます。

宮沢賢治『風の又三郎』をモチーフにした楽曲

ヨルシカの『又三郎』は、2021年6月7日に配信リリースされた新曲です。

前作となる『春泥棒』から5ヵ月振りのニューシングルであり、dアニメストアのCMソングにも起用されているので、耳にする機会も多いかもしれません。

楽曲が初めてオンエアされたのは、6月3日放送のラジオ「SCHOOL OF LOCK!」。

まさに今の季節にぴったりの楽曲で、爽やかな声と疾走感溢れるメロディーに、心躍らされた人は多いでしょう。

▲ヨルシカ - 又三郎(OFFICIAL VIDEO)

『又三郎』の楽曲制作は、宮沢賢治の短編小説『風の又三郎』をモチーフにしたと言われています

電信柱に登り青空を見つめる少年とおぼしき人物が描かれたジャケットは、まさに『風の又三郎』を思わるようです。

タイトルだけでなく、歌詞の中には小説の一節を思わせるフレーズが登場。

小説で吹き荒れる強い風のように、たくましく、力強い存在感が曲全体を包み込んでいます。

タイトルやジャケットに負けないくらい、爽やかで疾走感溢れる、風を感じさせる楽曲です。

では、『又三郎』の歌詞に注目しながら、曲に込められた意味を考察していきます。

退屈な日々を吹き飛ばす「嵐」への憧れ


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水溜りに足を突っ込んで
貴方は大きなあくびをする
酷い嵐を呼んで欲しいんだ
この空も吹き飛ばすほどの
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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「あくび」「嵐」対照的な言葉が並ぶ歌い出しは、退屈な日々からの逃亡を企むような、閉塞感と少しの期待感に溢れています。

「この空も吹き飛ばすほどの」嵐が来て、ありふれた風景を変えてくれたら。

それは、変わり映えのしない毎日を送る自分からの脱却であり、何か新しいことを始めたいという気持ちの表れではないでしょうか。

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風を待っていたんだ
何もない生活はきっと退屈過ぎるから
風を待っていたんだ
風を待っていたんだ
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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宮沢賢治の小説『風の又三郎』には、強い風の様子が描かれています。

風の子だと言われた又三郎と、「どっどど どどうど どどうど どどう」という、独特な風の音。

ヨルシカの『又三郎』で歌われている風も、まさに強風です。

停滞した日々を一気に変えてくれるような、嵐のような風なのでしょう。

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吹けば青嵐
言葉も飛ばしてしまえ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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「青嵐」は夏の季語で、初夏の頃に吹き荒れる風のことを指します。

言葉も、自分たちさえも呑み込むような強い風を待っている、その先にある願いは一体何でしょうか。

未来を切り開く「貴方」=「又三郎」


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どっどど どどうど

風を呼ぶって本当なんだね
目を丸くした僕がそう聞いたから
ぶっきらぼうに貴方は言った
「何もかも思いのままだぜ」
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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まさに『風の又三郎』の一節を彷彿させる歌詞ですね。

風を操り「何もかも思いのままだぜ」と言い放った「貴方」はきっと、「僕」にとってこの上なく頼もしく、輝いて見えたことでしょう。

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風を待っていたんだ
型に合った社会は随分窮屈すぎるから
それじゃもっと酷い雨を
この気分も飛ばす風を
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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目の前にある現実を変えたい、退屈な日常を壊して欲しい。

そんな願いを込めて風を待つ「僕」にとって、又三郎はまさに神様のような存在なのかもしれません。

ただ風を待つ姿は他力本願にも見えます。

しかし、それほどまでに無力感を抱えていて、誰かが現状を変えてくれないかと願う姿は、どこか現実世界を生きる我々にも通ずるものがあります。

『又三郎』で歌われるのは「明日を切り開く力」


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吹けば青嵐
何もかも捨ててしまえ
今に僕らこのままじゃ
誰かも忘れてしまう
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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青い胡桃も吹き飛ばせ
酸っぱいかりんも吹き飛ばせ
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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これも、『風の又三郎』の一節です。

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吹けよ青嵐
何もかも捨ててしまえ
悲しみも夢も全て飛ばしてゆけ、又三郎
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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胡桃も果実も吹き飛ばすほどの強い風で、現在地をめちゃくちゃに壊して欲しい。

そうして新しく生まれ変わった場所で、一からやり直したいのかもしれません。

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行けば永い道
言葉が貴方の風だ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
どっどど どどうど
≪又三郎 歌詞より抜粋≫
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強い風に巻かれるように、力強い「貴方」の言葉に付いていきたい。

『又三郎』全体に流れる疾走感や開放感は「僕」が「貴方」に感じている信頼感であり、救いを求める心の表れなのかもしれません。

何かを変えたいと思っても、今いる場所から動き出すことは勇気のいることです。

どうにも動けない閉塞感や息苦しさを感じた時、人は現状を変えてくれる大きな力に、存在に、頼りたくなるのでしょう。

『又三郎』に描かれる「貴方」は、現代を生きる人々にとっての救世主

ヨルシカが『又三郎』に込めたのは、「今」から脱却したいという切実な願いと、「未来を切り開く力」ではないでしょうか。

強い風に背中を押されるように、一歩前に進めるように。そんなメッセージ性を感じます。

宮沢賢治の世界観と見事に融合した『又三郎』

宮沢賢治作品は、どれも独特の世界観を持っているものばかりです。

『風の又三郎』もまた、田舎に越してきた一風変わった転校生・三郎を通して、子供たちの社会から、最終的には異質な存在(三郎)がはじき出されてしまう様を描きます。

人間社会の営みや闇、結束と排除など、身近でありながら難しい問題を取り扱っている日本の文学史に残る名作です。

物語の中では、風の神様の子だとも言われている又三郎

人間離れした不思議な少年の魅力と、閉塞感から解放してくれそうなパワーを感じさせる「貴方」が見事にリンクしています。

何かと生きにくさを感じる今だからこそ、この時代を生きる人にぜひ聴いて欲しい楽曲です。

<n-buna(ヨルシカ) profile> 2012年から活動を開始したサウンドクリエイター。 「透明エレジー」「ウミユリ海底譚」「夜明けと蛍」「メリュー」「アイラ」「白ゆき」と多数のミリオンヒット曲を投稿し、2015年「花と水飴、最終電車」、2016年「月を歩いてる」の2枚のボーカロイドオリジ···

この特集へのレビュー

女性

あおあお

2021/10/19 15:32

ヨルシカの中で一番好きな曲!😍

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