若きクリエイターが紡ぐ歌詞
『ネガティブファイター』は、2021年5月12日に発売されたHey!Say!JUMPの29thシングルです。この楽曲は、メンバーの有岡大貴が初めて単独主演を飾った日本テレビ系シンドラ「探偵☆星鴨」の主題歌です。
また、JUMPメンバーが出演するSHOWROOM「smash.」のCMソングにも起用されています。
作詞を担当したのは、現在23歳の若きインフルエンサーうじたまいです。
彼女はTikTokを通して活動しており、若い世代を中心に絶大な人気を誇るマルチクリエイターです。
”身近に寄り添ううた”をコンセプトに制作を続けるうじた。彼女が生み出す歌詞は飾り気がなく、聞く人の共感を呼ぶ言葉選びが特徴です。
作曲を手掛けたのは吉岡たく。彼は、ジャニーズグループの楽曲で、主に編曲を手広く手がけた実績を持っています。
吉岡が練りだすのは、一度聴いたら癖になる特徴的なサウンドなのですが、世界観を壊すことなく楽曲の魅力を最大限引き出す力があります。
2人のクリエイターの融合がどんな化学反応を引き起こしたのか、さっそく歌詞を辿りながら楽曲の内容を紐解いていきましょう。
ネガティブを肯定しよう
----------------この楽曲の特徴は、主人公の目線を通して主役の「君」を映し出していることです。
ねぇなんで不安な顔で 一歩下がって笑っているの?
「だってまた失敗ばかり 自分はやっぱ好きになれないや」
≪ネガティブファイター 歌詞より抜粋≫
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当事者の心理をそのまま描き出すのではなく、他人の目を通してワンクッション置くことで悲観的になり過ぎることを避けています。
いつもどこか自信なさ気な「君」。不安そうに笑っているのは、周りに迷惑を掛けたくないからでしょうか。
上手くいかない現実に、自分を好きになれないと感情を吐露する「君」の心はうつむきがちです。
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弱気な君が嘆く言葉 全部優しさ裏返し
焦らないで 一歩進もう
≪ネガティブファイター 歌詞より抜粋≫
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「君」が主人公に零す言葉の裏には、優し過ぎるが故の繊細さが垣間見えます。
「君」の良さを理解している主人公は、焦らずにまずは一歩踏み出してみようと。
その背中を押しています。全ての言葉が優しさで包まれていることからも、主人公が「君」のことを心から思っていることが伝わってきます。
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今日も fight fight fight
アンチビート 勇気なくたっていいじゃん
CRY CRY CRY
泣き虫人生 ネガティブファイター
≪ネガティブファイター 歌詞より抜粋≫
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この楽曲の最大の魅力は「強くなくたっていい」と、コンプレックスを肯定していることです。
「ファイター(闘う人)」という言葉から、最初から強い人をイメージするかもしれません。
しかし、この楽曲ではそのイメージを根底から覆し、弱くても怖がりでもそのままの自分を愛しながら闘っていこうというメッセージが込められています。
不完全だから愛おしい
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"朝寝坊だとか臆病だとか 何もない道で転んじゃう"
コンプレックス no! コンプレッサー 失敗だけを見つめちゃ NG (NG!)
ぴえん超えてぱおんなんて言ってる暇ねぇぞ ほらこっち来いよ
劣等感は輝ける予兆 主張もって踊りあうビート!
≪ネガティブファイター 歌詞より抜粋≫
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想像から湧き出る不安が大きくなりすぎてなかなか自分の実力を出せない「君」。
杞憂だと分かっていても後ろ向きな考えが取り払えず、その結果、何もないところですら躓いてしまいます。
「コンプレッサー」とは、気体を圧縮して圧力を高めるための装置、または音を圧縮することで音量の幅を狭めるエフェクトを指します。
このエフェクトを用いると、どんなに大声で歌っても音量バランスを揃えることが出来るので、突出した音が無くなり聞きやすい音源を作ることが出来ます。
また、楽器の音の粒を揃えられるのでなめらかなサウンドを生み出すことにも役立ちます。
人は自身にコンプレックスを感じると、マイナスな面にばかり気を取られがちです。
しかし、それを均してしまうことで、コンプレックスだと思っていた部分も自分のいくつかある側面の1つという捉え方が出来るのではないでしょうか。
悲しさを表す「ぴえん」や「ぱおん」といった若者言葉を用いたのは、TikTokerならではの感性でしょう。
「劣等感」とは、自分が他人よりも劣っている感情や、不安感、失敗への恐怖等を意味します。
劣等感があるということは、まだまだ成長できるという証拠。自信がない時は、自分の伸びしろに気づけないことの方が多いでしょう。
しかし、この楽曲では、視野が狭まっているせいで成長のチャンスを逃すのはもったいないという気持ちが溢れています。
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見えないことに気づける 君の優しいその瞳
道端に咲く 花のようだね
≪ネガティブファイター 歌詞より抜粋≫
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想像力がありすぎてネガティブになってしまうのが悩みの種だった「君」。
しかし、視点を変えればそれは長所にもなりえるのです。「君」が優しくあろうと思えるのは、他人の気持ちを想像出来るからでしょう。
必要な場面で人々が考えることを放棄し、どんどん生きづらくなっている現代。今の社会に欠けているのは、相手の立場を想像する”思いやり”なのかもしれません。
『ネガティブファイター』には、不完全だから何も出来ないと落ち込むのではなく、不完全だからこそ持てた魅力を愛してあげようというメッセージが込められています。
ポップな音楽に共存する安心感
この楽曲の魅力は同じ悩みを抱える人に寄り添ってくれる歌詞、そして明るさと切なさ、どこかホッとできる音楽の融合です。Hey!Say!JUMPが主人公目線で「君」に共感しながら歌ってくれていることが伝わってきます。
MVではピンクを主調にした衣装を身にまとったメンバーが、ポップなダンスを披露しています。
こちらの映像は見るだけでも元気になれること間違いないので、是非チェックしてみてください。
Hey! Say! JUMPはHey! Say! BESTの薮宏太、高木雄也、八乙女光、伊野尾慧、有岡大貴、Hey! Say! 7の岡本圭人、山田涼介、中島裕翔、知念侑李からなる9人のアイドルグループ。 デビュー当時のメンバーは10人だったが、2011年6月に森本龍太郎がグループを脱退しました。 また岡本圭人は2018年9···