彼女の大切さがダイレクトに伝わる演出
4月17日に配信リリースされた『AM2:00drive』は、岐阜県を中心に活動するラッパーKeeP
が手掛けた楽曲です。
今回コラボしたユエとの制作は『Dreamland』に引き続き2作目。
男女の目線で切り替わる歌詞をそれぞれの歌声で披露し、楽曲が持つリアルな情景をより奥深いものにしました。
この楽曲がヒットした理由には、TikTokでのヒットが挙げられます。
KeePが自身のTikTokに『AM2:00drive』を投稿すると、そのメロウなサウンドと歌詞がエモいと若者の中で大流行。
恋人たちの日常というテーマに付随して、この楽曲と共に動画を投稿する人が急増しました。
また「#だる着のまま迎えにいくよ」というハッシュタグが流行り、この楽曲を用いた動画の全体的な視聴回数を底上げしています。
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冗談半分で会いに行くって打つLINE
既読が付かずなんかちょっと恥ずかしい
もうこんな時間だから難しいと思う
なのに意外な返信に心が踊る
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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この楽曲は、彼が深夜のドライブデートに彼女を誘うところから始まります。
冗談の中にわずかな期待も込めて打ったLINE。
なかなか既読にならないメッセージと、自分の衝動的な行動に少し恥ずかしくなる彼。
深夜だし、反応がなくても仕方ないかと色んな言い訳を考えますが、彼女からの了承の返信に一気にテンションが上がります。
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ラフな格好で向かう俺はだらしない
じゃなくて早く会いたいからしょうがない
友達が荒したゴミが残る車の中
軽く掃除して行こう綺麗な君が乗るから
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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適当な格好で出てきた事に若干の申し訳なさを感じつつも、その気持ちはもう彼女に会いたくて仕方がありません。
彼は流行る気持ちを押さえながら、彼女を迎えに行く準備をします。
この部分で印象的なのが、彼にとって彼女の優先順位が非常に高いということ。
自分の身だしなみを整えるよりも、彼女に早く会いたいという気持ちが勝っているのでしょう。
一方で、彼女の服が汚れないように注意を払える気遣いから、彼が普段からどれだけ彼女を大切にしているかがうかがえます。
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少しでも良い顔が見れればそれでGood
君が好きなほうじ茶をコンビニで買ってく
ありがとうって君が笑う
俺がにやける
時計の針も嫉妬して早く回る
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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どこで何をするかより、ただ一緒にいられる時間を尊重する2人。
小さな思いやりが彼女の笑顔を引き出し、それを見て彼ももた嬉しくなる、という素敵な関係が描かれています。
好きな人と過ごす楽しい時間ほど速く感じるものはありません。
彼らが短時間で、どれほど濃密な時間を過ごしているかが伝わってきます。
彼女目線で明かされる事実
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今から向かうってLINEほんと?
何も準備してないしもっと早く言ってよ
君に会う前のメイク スタイル コーディネイト
呆れたフリして浮かれてる事は内緒
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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1番が彼氏目線だったのに対し、ここからは彼女目線に変わります。
ラインを確認し、彼の突拍子もない誘いに慌てて準備し始める彼女。
女性としては、好きな人の前では常に綺麗でいたいものです。
1番と2番で男女の差をリアルに描き出していており、この楽曲の面白い点でもあります。
彼女は「もっと早く言ってよ」と彼に呆れつつも、実際は嬉しくて仕方がありません。
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最悪だったの今日
けどね君に会う高揚が憂鬱を退治
君の流す音楽 揺れるこんな夜が
ずっと続けばいい終わらないでいいなんて思って
星を見てる
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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実は嫌なことがあった彼女。
きっと彼からドライブデートのお誘いがあるまで、ふさぎ込んでいたのではないでしょうか。
それが彼に会えるということだけで、落ち込んでいた心が一気に高揚していきます。
彼のお気に入りの音楽、気持ちよく揺れる車の振動。
彼と過ごすこの狭い空間では、感じるもの全てが心地よくて、ずっと続いてほしいと彼女は願います。
歌詞の言葉数は決して多いわけではないのに、聞いている人が頭の中で情景をリアルに再現することが出来るのです。
「だる着のまま迎えに行くよ」の歌詞から分かる2人の飾らなさ
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だる着のまま迎えに行くよ
ちょっと待って化粧するから
暗いから分からないよ
今は深夜2時 この世界に二人きり
君を連れ出して向かうのはあの場所
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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楽曲の中でキーワードにもなっている「だる着のまま迎えに行くよ」という歌詞。
この言葉から、彼らの飾らなさや信頼関係が分かります。
彼は彼女の前では汚い恰好でも良いやと思っているわけではなく、どんなにラフな格好であろうと、彼女は自分を受け入れてくれるという安心感があるのではないでしょうか。
彼女は好きな人の手前、身だしなみを整えようとしますが、彼は気にしなくて大丈夫だよとなだめます。
まるでこの広い世界に2人しかいないと錯覚させるほど、辺りは静まり返っています。
毎日訪れる深夜2時が、2人一緒にいるだけで特別な瞬間に感じられるのです。
そして「あの場所」だけで分かり合えることからも、彼らがどれだけの月日を共にしてきたのかがうかがえます。
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早送りのような夜に
Fall in fall in love今日のstory
君に会えない夜はいらないから迎えに行こう
隣君を乗せてdriving driving (Yah)
≪AM2:00drive (feat. ユエ) 歌詞より抜粋≫
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「早送りのような」という言葉から、楽しい時間が速く過ぎ去るという体感や、車の走る疾走感が浮かび上がります。
今日も今日とて2人は恋に落ちるのでした。
彼女に会えない夜は無意味なものに感じられる彼。
昔と比べて通信機器が発達したことで、待ち合わせも簡単に出来るようになりました。
その一方で人と直接会うことを手間に感じたり、大切な人に対しても「いつでも会える」から思いがちです。
この楽曲では「会いたいから会いに行こう」という非常にシンプルな動機を行動に移す恋人たちの様子が描かれています。
たとえ僅かな時間であったとしても、大切な人と過ごす時間が掛け替えのないものだと思いださせてくれる楽曲です。
楽曲全体に溢れるエモさ
『AM2:00drive』は少ない言葉で、その場の情景と登場人物の感情を見事に描き出していました。
それも、客観的に捉えられた景色と、彼らの視界を通して見える景色両方を楽しむことが出来ます。
まるで短編小説のような美しさと儚さ、そして愛おしさが共存した作品です。
実際にこういうことあったなあ、と思わず共感してしまう歌詞こそ、この楽曲に溢れるエモさの理由ではないでしょうか。