sasakure.UKが手掛ける不思議なセカイ
「プロジェクトセカイ カラフルステージ」は、現代日本の「シブヤ」と、人々の思いが集まるバーチャルワールド「セカイ」が交錯して発展していくリズムゲームです。
ゲーム内には、ボカロの代名詞である初音ミクを筆頭に、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITOの6人が登場し、プレイヤーを盛り上げてくれます。
このゲームの醍醐味は、今流行りのボカロ曲をリズムゲームとして実際に楽しめることです。
収録曲は例を挙げるだけでも、黒うさ『千本桜』、Kanaria『KING』、Ayase『夜に駆ける』、Eve『ドラマツルギー』等、非常に豪華なラインナップとなっています。
そして、6月19日に追加された新曲が、今回ご紹介する『トンデモワンダーズ』です。
この楽曲を手掛けたのは、ボカロPのsasakure.UK。
2007年頃からネット上でボカロ曲の投稿を始めると、一度聞けば癖になる名曲を次々に生み出し、現在では他アーティストへの楽曲提供もしています。
彼は、学生時代に日本文学や合唱を通して、様々な作詞家や作曲家の影響を受けてきたそう。
その経験は、彼の作品を唯一無二の物へと昇華させています。
『トンデモワンダーズ』も非常に特徴的な歌詞で構成されています。早速その内容を見ていきましょう。
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エビバディ→解体!
思い出に消しゴム!? あれっ。
ハイになる?廃になる?
はい、とは言えな~い!!!
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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『トンデモワンダーズ』は、歌詞の韻の掛け合いや異口同音が聞いていて楽しい楽曲です。
ボカロ曲らしい高いBPMにのせて、ポップに駆け抜けます。
そんな明るい曲調とは裏腹に、歌詞の内容はメッセージ性に溢れているこの楽曲。
主人公は、過去の失敗をトラウマに感じ、上手くいかなかった思い出を消そうとしています。
その結果は天国か地獄か。
いくらネガティブな思い出とはいえ、本当に過去を無かったことにしていいのかいまいち踏み切れずにいるようです。
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ソンな時代でいいよ
僕らまだ“ワンダー”信じてる、の ノ No? know!
おとなたちの鋭利(営利)な目盛(×メモリー)
悩まされすぎちゃって
寄り目になっちゃいそーね!!
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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「ソンな時代」は”そんな”と”損な”を掛けているのでしょう。
まだ見ぬ”驚き”に心躍らせて生きたいと思う反面、大人の物差しは彼らを厳しく推し量ります。
上手に生きるためには、模範とされる型にハマらなくてはいけないのだろうか、と主人公は頭を悩ませます。
過去の失敗も成功も愛そう
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成功失敗も「全部」だいすき!でいいじゃん!!
みんなみんなウチューしよ?の魂胆で
だってだって君ももっと笑えたじゃん!?
スットンキョウでサイキョウな僕らは
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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サビでは、良い所だけじゃなくてダメなところもまとめて愛してあげようよと歌っています。
なぜなら、完璧だけを良しとする時より、成功も失敗も認めてあげた時の方が「君」も自然に笑えていたからです。
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まだまだ消さないで!?未来はここからじゃん!!
みんなみんな一緒しよ!のポーズで
ちょっとやそっとじゃ崩れない笑顔どうじゃん!
100回トンだらトンデモお菓子いセカイ
ワンワンでツーカーでスリーフォー
エビバディ ショウタイム!
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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この部分に込められているのは「簡単に思い出を消さないで、それは未来に繋がっているから」というメッセージです。
この想いは『トンデモワンダーズ』の核となる部分でしょう。
そして「100回トンだらトンデモお菓子いセカイ」には、100回挑戦したら想像を超えた”トンデモない世界”へ脚を踏み入れることができるかもしれないという「期待」が込められているのではないでしょうか。
迷いから導き出した答え
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ツッコんでトンでドッカンでツンでもう一回
ツッコんでトンでドッカンでツンでもう一回
スリーツーワン わ~ミステイク
スリーツーワン
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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冒頭から続いた迷いがここで解決されます。
嫌な記憶全てを無かったことにするよりも、まだまだ諦めずに前進する糧にしようとしています。
挑戦は100回を超え、またここから歩みなおそうとする主人公。
ここで登場する「小指拝借」とは、指きりげんまんを暗示しているのではないでしょうか。
つまり、主人公は”ハッピーも失敗も消さないから‼”という約束を「君」と交わしているのでしょう。
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セカイ ウチュー 未来 超だいすきでギューじゃん!
みんなみんな笑っちゃえの正解は
宿敵 逆境 モンスター 何だってinじゃん!
スットンキョウでサイキョウ、お菓子いだろ?
≪トンデモワンダーズ 歌詞より抜粋≫
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「旋回満開」は「千回万回」と掛けています。
何かに挑戦して失敗したり成功したりする。
結果が良くても悪くても、その記憶を消さずに未来への糧にし、その事象をこれから何万回も繰り返していくのでしょう。
無限を表す∞の先には「不死議は鳥壊せない!」という歌詞が続きます。
「鳥壊せない」は、何物も侵すことが出来ないという意味で”取り壊せない”と掛かっているのでしょう。
そして、何度落ちても命潰えることのない不死鳥のように、何回失敗しようとも決して歩みを止めることはないという決意がうかがえます。
聞く人によって解釈が変わる応援歌
歌詞の面白さやキャッチーな曲調が印象的な『トンデモワンダーズ』。
歌詞を掘り下げると、そこには完璧を求めて窮屈になるのではなく、成功も失敗も全部ひっくるめて未来の糧にしていこうというメッセージが込められていました。
聞く人の数だけ解釈が変化するこの楽曲。
共通するのは、聞けばどこか救われる応援歌であるということでしょう。
ぜひ、MVの映像と合わせて、様々な解釈をしながら聞いてみてください。