「Sleepless Night」はドラマ「ナイト・ドクター」オリジナルナンバー
2020年リリースの楽曲『春を告げる』が音楽チャートでロングヒット中のアーティスト『yama』。そんなyamaの新曲『Sleepless Night』が、2021年6月21日に配信リリースされました。
『Sleepless Night』は波瑠主演ドラマ『ナイト・ドクター』のオリジナルナンバーに起用。
全話を通して流れる「主題歌」ではなく「オリジナルナンバー」で、各話によって異なるアーティストの楽曲が流れる試みでも、ドラマ『ナイト・ドクター』は注目を集めています。
ドラマは「夜の病院」をテーマに、昼夜交代制を導入した病院の「夜間救急専門医師(ナイト・ドクター)」にスポットをあてたもの。
『Sleepless Night』(眠れない夜)のタイトルは、夜に奮闘する医師の姿を描いた作品にぴったりですね。
ドラマの内容を踏まえて歌詞を見ると、『Sleepless Night』は患者の治療にあたる医者目線の曲のように見えてきます。
早速、冒頭から歌詞を追って見ていきましょう。
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昔の話をしようか
つやのない布にくるまれた
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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「つやのない布」はベッドのシーツを想像させますね。
つやがなくなるほど、患者が長い間病院にいる様子を示しているように思います。
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正しいかたちを掴めない
手垢のついた言葉を
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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まず「手垢のついた言葉」は、「使い古した言葉」や「何度も使ってきた言葉」の意味にとれます。
医者が患者に向ける言葉とすると、例えば「大丈夫」などでしょうか。
患者に対して医者は前向きな言葉を投げかけますが、残念ながら人はいつか死ぬもの。
もしかしたら主人公が言葉を投げかけた患者も、もう長くはないのかもしれません。
「正しい形を掴めない」は、「患者に対して前向きな言葉を放つのが正しい行為なのか」と悩む主人公の気持ちを表しているように思います。
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ゴミ捨て場で眺めてる
また今日がはじまってゆく
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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ここの解釈は少し難しいのですが、「ゴミ捨て場」という乱雑な言葉からは主人公の憤りを感じます。
嘘の励ましのような言葉を患者に対して放つ自分に、イラついているようにも見えますね。
サビの歌詞は「明日を迎えること」への願い?
続くサビの歌詞を見ていきましょう。
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心ひとつだけで息をするから
両手で包んで、誰のものでもない
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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「心ひとつだけで息をする」は患者が弱っている状態を表しているように思います。
他に何もできず、ただ息をするだけの患者に主人公が寄り添っているのかもしれません。
「両手で包んで」は、そんな患者を見て「せめて最後まで幸せな気持ちでいさせてあげたい」と考える主人公の優しさを表しているようですね。
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70幾億かの朝が来るまで
静かに見える夜にのめり込んでく
淡い桃色に濃い青空が溶けて見えた場所で
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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「70幾億」はおそらく地球の総人口を示しているのでしょう。
「みんなが明日を迎えられるように」と願う主人公の様子が感じられます。
そして「淡い桃色に濃い青空が溶けて見えた場所」の歌詞は、細やかな色彩表現が素敵ですね。
『Sleepless Night』のタイトル通り、夜から朝にかけてゆっくりと変化していく空の色を描いているように思います。
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日を追うごとに枯れてく
ひとひら 幸せの花弁
日々を呑み込んでゆくような
流れと逆側に
向かう人だけが知ってる
無常とも言えないほどの
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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続く2番の冒頭は、時間が過ぎ去っていく様子を表現しているような歌詞。
「日々を吞み込んでゆくような」からも、毎日が忙しなく過ぎていく様子が感じ取れます。
一方「逆側に向かう人」とは、そんな忙しない毎日とは逆に向かう人。
ここまでの歌詞の内容からすれば、「死に向かっている人」を示しているのかもしれません。
未来に向かって毎日を忙しく過ごす「生」のイメージと、残された時間をゆっくりと穏やかに過ごす「死」のイメージを対比しているように感じます。
ラストの歌詞の意味を考察!
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はらり 薄紅の春
じわり 湿る夏の夜も
からりと乾いた秋空も
銀色 冬の朝も
変わらない 君だけの命の詩を
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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季節が巡る様子を描いた歌詞の後、いよいよ楽曲はクライマックスを迎えます。
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ふいにしたあの匂いで
開いた箱には溶けかけた
氷菓子が一つあるだけだよ
君はもうとうにそこを超えてる
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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中でも印象的な「氷菓子」という言葉は、「冷たい氷=死」を象徴しているように思います。
「君はもうとうにそこを超えてる」の歌詞からも、患者が「いつ死んでもおかしくない」状態であることが想像できますね。
そして、死期が迫った患者を目の前に主人公は以下のように思います。
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振り返るよりも揺らいだならば
今あなたは何で立っている?
ここまで生きられた証を紡いでゆけ
今もここで
≪Sleepless Night 歌詞より抜粋≫
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「今あなたは何で立っている?」の問いかけから想像すると、主人公は「患者が今何を思っているのか」を感じ取ろうとしているのかもしれません。
死に直面している人に対して、目の前にいる人が最後にできるのは「死にゆく人のメッセージを汲み取ること」。
今その役割を自分が担っているのだと、主人公が強く感じているように思います。
『Sleepless Night』のラストの歌詞は、1人の患者に対し医者としての最後の使命を果たそうとする主人公の姿を描いているのでしょう。
「Sleepless Night」は医師目線で生と死を描いた曲
ドラマ『ナイト・ドクター』のオリジナルナンバーに起用されているyamaの『Sleepless Night』。
歌詞は、死期が迫った患者を前に奮闘する医者の心情を描いているように思います。
まるで、1曲を通して1人の患者と1人の医者のドラマを見ているようですね。
なお、『Sleepless Night』の作詞は『春を告げる』を手がけた『くじら』が担当。
「生と死」を感じさせる歌詞に、強さと儚さを兼ね備えたyamaの歌声が重なって楽曲に深みを出しています。
『春を告げる』同様にyamaの歌声の魅力をたっぷりと感じられる楽曲『Sleepless Night』。
ドラマの世界観に寄り添った歌詞とともに、じっくりと聴いてみてくださいね。