寒さに少しずつ混じり始める、春の気配。同時に、桜の開花が待ち遠しくなる。
Every Little Thing34枚目のシングル『サクラビト』も、待ちわびる気持ちに溢れた楽曲である。タイトルに桜を冠しており、最近では、桜ソングの1曲として紹介されることもあるが発表されたのは2008年2月13日。つまり、まだまだ冬の季節に発表された楽曲なのだ。そのせいか、バラード調の仕上がりで、桜ソングながら報われない内容となっているこの楽曲。しかし、切ないでは終わらせない、想い続ける強さがこの中に描かれている。
Every Little Thing「サクラビト」
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遠い遥か彼方の先に
手繰り 寄せた想いよ
風がそっと
教えてくれた囁きに
心は揺れる
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春を待つように、恋しい人を想う。そんな気持ちを経験したことはないだろうか?春を待つのとは違い、想う相手を待ち続けるというのは結構つらい。相手を信じていても、風の噂や不安で気持ちは簡単にグラついてしまうからだ。
だからこそ、耐え忍ぶ恋が成就する確率はあまりにも低いわけだが、何も成就するだけが恋愛ではない。相手を想っていた時間、待っているだけでも楽しかったこと、これもまた、1つの恋愛の形なのだ。時に、その恋を無駄だったと言う人がいるが、一途に1人の相手を想い続けることなんて中々できることではない。たとえ終わりがわかっていたとしても同じ道を選んで、相手を待っているはずだ。
相手を待ち続けた恋は、思い出になって記憶に残り続ける。ふとした時に、相手を思い出すこともあるだろう。待っているときに感じた不安に想う気持ちもなくなりはしない。けれど、その時にはもう待ちわびた想いも恋愛も大切な思い出となっている。いつかの日に愛した人の幸せを祈っている自分に気付くからだ。
“しあわせを願う”
“今日もあなたを呼んでみる”
思い出してしまうということは、引きずっているだけなのではないかと思うかもしれない。しかし、思い出して、名前を呼んで少しずつ折り合いをつけていく方法もあるのだ。
“この手に一片の”
“尊き想いを抱いて”
“空へ託した”
たとえ、その想いを胸に抱いてでも、折り合いをつけていく。そうしてこそ、人はまた新しい春へ向かって歩いていけるのだから。
TEXT:空屋まひろ
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