アニメ「タッチ」の主題歌はヒロインの片思いソング
岩崎良美の代表曲『タッチ』は、昭和のアニソンの中でも根強い人気のある名曲です。
高校野球を題材にしたアニメ『タッチ』のオープニングテーマとして制作され、現在にいたるまで高校野球の応援歌に用いられています。
作詞はチェッカーズの『ギザギザハートの子守唄』の作詞家である康珍化が担当。
そして日本を代表する作曲家・芹澤廣明が作曲を担当したことで、キャッチーで年代を問わず歌いやすい楽曲となっています。
音楽を聴くと爽やかでポップな雰囲気のある曲ですが、歌詞をじっくり見ていくと少女の切ない恋心が歌われていることが分かるでしょう。
アニメの中で描かれる主人公・上杉達也と双子の弟の和也、幼馴染の朝倉南の三角関係をベースに綴られたと考えられますね。
アニメ作品のストーリーに合わせて達也に恋する南の気持ちを描いていると想定して、歌詞の意味を詳しく考察していきましょう。
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呼吸を止めて1秒
あなた真剣な
目をしたから
そこから何も
聞けなくなるの
星屑ロンリネス
きっと愛する人を
大切にして
知らずに臆病なのね
落ちた涙も
見ないフリ
≪タッチ 歌詞より抜粋≫
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南は達也に尋ねたいことがありました。それはおそらく自分をどう思っているかということです。
「呼吸を止めて1秒」というフレーズから、好きな人に気持ちを聞こうとするときの緊張感が伝わってきます。
しかし、いつもはふざけている風を装う達也が「真剣な目」をしているのを見て、「そこから何も聞けなくなる」南。
達也は「愛する人」である和也の幸せを願っているため、南への本当の気持ちを打ち明けることに「臆病」になっていると彼女は気づいているようです。
周囲も南と和也を似合いのカップルだと思っているので、彼女自身も自分の想いを正直に周囲に打ち明けることができません。
星屑のように多くの人がいるのに独りぼっちでいるかような寂しい心持ちを「星屑ロンリネス」という言葉で表現しているのではないでしょうか。
「ここにタッチ」はどこのこと?
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すれちがいやまわり道を
あと何回過ぎたら
2人はふれあうの
お願い タッチ タッチ
ここに タッチ
あなたから
タッチ 手をのばして
受けとってよ
ためいきの花だけ
束ねたブーケ
≪タッチ 歌詞より抜粋≫
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南と達也の関係は「すれちがいやまわり道」ばかりです。
お互いを想い合っているにも関わらず幼馴染以上の関係になれないもどかしさに、いつになったら「2人はふれあうの」と苦しい気持ちを歌っています。
『タッチ』といえば「タッチ」のフレーズを繰り返すサビが印象的ですよね。
「ここにタッチ」の「ここ」とは、おそらく心のこと。
一般的に男性の方から告白されたい女性が多いように、南も達也の方から積極的に想いを伝えてほしい、自分の気持ちを知ってもらいたいと思っているのではないでしょうか。
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愛さなければ
淋しさなんて
知らずに過ぎて行くのに
そっと悲しみに
こんにちわ
≪タッチ 歌詞より抜粋≫
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なかなか交わらない想いに、彼女は一人淋しさを感じています。
「愛さなければ」こんなに悲しい気持ちになることもなかったのに、とさえ思っているようです。
しかし、悲しみたくないからといって好きな気持ちを簡単に止められないことも事実。
だからこそ余計に心が通い合わないことに悲しさが募っていきます。
「そっと悲しみにこんにちは」の歌詞に、もうきっと今の関係を変えることはできないのだろうという諦めの気持ちがにじんでいるように感じられますね。
「ため息の花だけ束ねたブーケ」に切なさが詰まっている
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あなたがくれた
淋しさ全部
移ってしまえばいいね
2人で肩を並べたけれど
星屑ロンリネス
ひとり涙と笑顔
はかってみたら
涙が少し重くて
ダメね 横顔で
泣いてみた
≪タッチ 歌詞より抜粋≫
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達也は南との関係を変える気がないのに彼女を完全に突き放すことはせず、どっちつかずの態度を取り続けます。
そんな彼の態度のせいで淋しくつらい思いをしている彼女は、その「淋しさ全部移ってしまえばいいね」と腹立たしい気持ちを露わにしています。
好きな人と二人きりで肩を寄せ合う場面でも、まるで独りでいるように孤独を感じていることが分かるでしょう。
また、彼のことを想って流した涙と浮かんだ笑顔の量を比べて、涙の方が多いことに気づいてまた悲しくなります。
「横顔で泣いてみた」のは彼女の恋の駆け引き。彼の前で露骨に泣くことはできないものの、自分の悲しさを少しは理解してほしくて涙を利用しているのです。
好きなのに気持ちが通い合わない切なさを美しく表現しながら、女性の強さが垣間見える歌詞ですね。
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青春はね 心のあざ
知りすぎてるあなたに
思いがからまわり
お願い タッチ タッチ
ここに タッチ
せつなくて
タッチ 手をのばして
受けとってよ
ためいきの花だけ
束ねたブーケ
≪タッチ 歌詞より抜粋≫
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「青春はね 心のあざ」というフレーズも魅力的です。
あざは肌を大きく変色させて目立つもので、少し触れただけで痛みがぶりかえしてきます。
青春時代も人生の中で特に色濃い時間で、ある出来事を少し思い返すだけでその時の情景や感情が蘇ってくるでしょう。
その様子を「心のあざ」と表現していると想像できます。
幼馴染としてずっと一緒にいて「知りすぎてる」からこそ、「思いがからまわり」して素直な気持ちを出せずにいたのはきっとお互い様です。
この青春の一ページをただ後悔だけで終わらせたくないから、今こそ互いの心に触れ合いたいと思っていると考えられます。
「ため息の花だけ束ねたブーケ」を想像すると、あまりきれいなブーケとは思えないでしょう。
しかし、ブーケになるくらいあなたを想って何度もため息をついたのだということが十分伝わってきます。
「手をのばして」心に触れてため息の理由を知ろうとしてくれれば、どれほど好きなのかが分かってもらえるはずだとも思っているのかもしれません。
切なくも深い愛情が印象的な歌詞に込められた不朽のラブソングです。
「タッチ」でアニメの世界観を感じよう
『タッチ』はカラオケでも定番曲として愛されてきた昭和の名曲。
声優からバンドまで数多くのアーティストたちがカバーしてきましたが、やはり岩崎良美の透明感と芯の強さを感じさせるボーカルこそが、アニメ作品の世界観を見事に表現していると言っても過言ではないでしょう。
この歌詞は片思いを歌った曲としてだけでなく、聴く人によっては好きな人に振られてしまった少女の失恋ソングとも取れます。
それぞれ自分なりの解釈を考えながら、アニメの主人公になった気持ちで歌ってみてくださいね。