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ヒグチアイ「悲しい歌がある理由」が心に刺さる…女性の心を代弁する深い歌詞の意味を考察

共感性の高い歌詞に中毒者続出中の女性シンガー・ヒグチアイが送る、3ヶ月連続新曲配信リリース第1弾である『悲しい歌がある理由』。働く女性たちの心の内を覗き見るような痛みと切なさが滲む歌詞の意味を紐解きます。

ファン待望のヒグチアイの名バラードが配信決定

いま様々なロックアーティストや著名人から支持を得ているのが、女性シンガーソングライターのヒグチアイです。

2016年にアルバムリリースでデビューを果たす以前から、類まれな感性と圧倒的な音楽の実力、そして意志の強さを感じさせるアルトヴォイスで多くのファンを魅了しています。

ドラマのエンディングテーマの書き下ろしや舞台への出演など活躍の場を広げ、2021年11月公開のNetflix映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』のティザー予告編には過去曲の『東京にて』が起用され、業界内外で大注目のアーティストです。

ヒグチアイが楽曲作りで大切にしているのは、何と言っても歌詞。

ありふれた風景を独特の視点で捉えドラマティックに描いた歌詞には、自分でも気づかないような心の底にある自己肯定欲や嫉妬心と、その裏にある人としての温かい気持ちをすくい上げてくれるような実直な言葉が詰まっていて、特に20代〜30代の同世代のファンから共感できるという絶賛コメントが寄せられています。

そんな彼女の9月から始まる3ヶ月連続新曲リリースの第1弾となるのが、今回紹介する配信シングル『悲しい歌がある理由』です。

6月に日本橋三井ホールで行われたライブではすでに披露されていて、多くのファンから音源化を望まれていた楽曲がついに9月8日に配信決定。

シンプルなピアノの音色が歌詞と歌声を引き立て、言葉と音楽の力がすっと心に届いて聴く人の涙を誘います

誰でも一度は、悲しい歌を聴いて気持ちが沈んでしまったという経験があることでしょう。

できることなら楽しい歌だけを聴いて明るい気持ちでいたいものですが、そうした中でも悲しい歌が存在するのはなぜかを考えさせられる内容となっています。

そんなストレートな言葉が心に刺さる歌詞の意味を考察していきましょう。

働く女性の本当の気持ちを描く

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お姫様みたい、と褒められてから着続けてる
真っ白いワンピースはもう制服です
飲み会で上司にお酌をする係はわたし
別にあんたのために着てるわけじゃないの
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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主人公の女性の一張羅は「真っ白いワンピース」。

女性らしさや清純さを表現するようなファッションで、着始めたきっかけも「お姫様みたい」と褒められたからのようです。

しかし「もう制服です」という言葉からすると、今では周囲に求められる女性らしい自分を演じるためにその服を選んでいると考えられます。

会社の「飲み会で上司にお酌をする係」は大抵どこでも若い女性社員でしょう。

主人公もその一人で、おそらくお酌をする時に上司からその白いワンピースについて何か言われたのだと解釈できます。

彼女にとっては制服だから着ているのであって「別にあんたのために着てるわけじゃないの」と心の中で思いながら、きっと顔では作り物の笑みを貼りつけているのでしょう。

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結婚したいと言ってる本当の理由は
結婚したいと思われるほど愛されたいってこと
かっこ悪くてもお金がなくても優しくなくてもいい
誰でもないわたしを必要と言ってよ
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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「結婚したい」と語る独身の女性たちの中には、結婚自体に憧れを抱いている人もいるはず。

しかし、多くの女性の本音は「結婚したいと思われるほど愛されたいってこと」なのではないでしょうか。

結婚するということは、愛する人から生涯を共にする唯一の相手として選ばれるということ

恋愛でも仕事でも、あなたでなくてはならないと求められることほど幸せなことはないでしょう。

外見が良くてもお金があっても優しくても、自分だけを求めてくれる人でなければ意味がありません。

どんな人に愛されるかが重要なのではなく「誰でもないわたしを必要と言ってよ」という言葉がその気持ちを物語っていますね。

口には出さないものの、女性たちが本当は心に抱えている感情が垣間見えます。

周囲の理不尽な声に奪われていく幸せ

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武器だと言われて歯を食いしばり堪えた涙
ずっとそうしたらいつの間にか泣けなくなった
なんで泣かないの?薄情だと言われた葬式で
本当のわたしを知る人は棺桶の中
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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昔から涙は女の武器と言われます。

いざという時の武器であるなら、やたらに泣くことはできません。だから主人公も何度も「歯を食いしばり堪えた」のです。

ところが涙を堪えてばかりいたことで、泣きたくても泣けなくなってしまいました

自分がどんな気持ちで涙を堪えてきたのかを知っている人はただ一人ですが、その人だけが分かってくれていればいいと思っていたはずです。

しかしその人は亡くなってしまい、泣けないまま迎えた葬式では「何で泣かないの?」「薄情だ」と何も知らない人たちが好き勝手に責めてきます。

信頼できる人がいてくれれば何を言われても耐えられたかもしれませんが、その人を失ってしまえばどうすることもできないでしょう。

彼女の心を知るのは彼女自身だけになってしまい、その孤独感や喪失感は計り知れません。

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殴られるなら触られる方がまだ良いから黙ってた
なんか言えよって笑えよって頬殴られた
誰かが拾った小さな小さな小さな幸せは
わたしからこぼれ落ちたものかもしれない
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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愛した人から傷つけられたくないと思うのは当然の心情です。

どうやら彼女は恋人から日常的に暴力を振るわれていて、そうでない時は拒否権なく体に触られているのでしょう。

「殴られるなら触られる方がまだ良い」と考えて黙っていれば、今度は「なんか言えよ」「笑えよ」と言われ結局殴られてしまいます。

客観的に見ればそんな理不尽な行動を取る恋人とは別れるべきだと感じますが、別れられないのはきっとその恋人に自分自身を求められているから

必要とされたいと願う彼女は、傷つけられても必要とされていることの喜びを選んでしまうのかもしれません。

そうした気持ちに共感できる人は、意外と少なくないのではないでしょうか。

他の人があることにも気づかないような「小さな小さな小さな幸せ」は、本当は「わたしからこぼれ落ちたものかもしれない」。

ふと周囲の楽しそうな様子を見て、自分の苦しい毎日と比べてしまうのは無理もないことでしょう。

悲しい歌がある理由とは?

こんな悲しい気持ちの時に悲しい歌を聴けば、余計に苦しくなりそうです。

ではなぜこの主人公は悲しい歌を聴くのでしょうか?

その答えはサビの歌詞に注目すると見えてきます。

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悲しい歌はあなたを傷つける
古傷を庇うかさぶた 剥がしてしまう
だけどほらみて 皮膚は厚くなって
残る傷跡はその優しさに変わってる
もう痛くないはずだよ
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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1番のサビでまずはっきりと「悲しい歌はあなたを傷つける」と歌われます。

この「あなた」とは、おそらくこの曲を聴くすべての人のことであり、自分自身に対しても語りかけているのかもしれません。

「悲しい歌」はいつか受けた「古傷を庇うかさぶた」を剥がしてしまいます。

それは確かに自身を傷つけたと言えますが、かさぶたが剥がれた後の「皮膚は厚くなって」そこには傷跡が残るだけです。

傷ついた時の痛みはなくなり、痛みを経験した分優しい気持ちになれることもあります。

そうであれば、傷つくことが必ずしも悪いことばかりとは言えないのかもしれませんね。

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悲しい歌はあなたを傷つける
古傷をもう一度斬りつけてしまう
だけどほらみて 同じ痛みじゃない
何度思い出すたび向き合ってきたんだ
あなたはずっと強くなった
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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2番のサビでは「悲しい歌」が「古傷をもう一度斬りつけてしまう」とあります。

あまりに自分の境遇と重なる歌は、時に治ったはずの傷をえぐることがあるでしょう。

しかし「同じ痛みじゃない」とも歌われています。

傷つけば痛いのは当たり前ですが、そうして過去の痛みを思い出す度にその時の状況や自分自身と向き合うことで、痛いけれど痛さが違うと感じたことがあるのではないでしょうか。

それは過去の自分より今の自分が「ずっと強くなった」証拠です。

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悲しい歌はあなたを傷つける
古傷を庇うかさぶた 剥がしてしまう
だけどほらみて 皮膚は厚くなって
残る傷跡はその優しさに変わってる
もう痛くないはずだよ
もう許していいんだよ
≪悲しい歌がある理由 歌詞より抜粋≫
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ラストのサビは1番のサビと同じ歌詞ですが、最後に加えられた「もう許していいんだよ」という一言がとても印象的ですよね。

うまくいかないことが続くと、つい自分を責めてしまうことがあるでしょう。

しかし、傷つき痛みに耐えたあなたは誰よりも頑張っている人

だからそんな自分を「もう許していいんだよ」という優しい言葉が心に迫ります。

悲しい歌を避けて自身の傷に触れないようにすることもできるかもしれません。

それでも悲しい歌を聴けば、傷は痛んでも不思議と前を向けるのではないでしょうか。

苦しんでいるのは自分だけではないこと、今は苦しんでいても必ず強くなれることを音楽が教えてくれるのです。

「悲しい歌がある理由」はきっと人を強くする

作詞家としても活躍するヒグチアイの描く歌詞は飾らず率直で、だからこそ聴く人それぞれの心に響きます

特にこの『悲しい歌がある理由』では、働く女性たちにはきっと覚えのある情景や感情が描かれていました。

頑張っているのに認められない悲しさやもどかしさに、心が折れそうになることもあるでしょう。

そんな時、なぜか悲しい歌に支えられることがあるはずです。

悲しい歌がある理由、それは心を強くするためであり、同時に自分に優しくなるためなのかもしれません。

夢に向かって頑張るすべての人の心に寄り添う楽曲に、きっと心が洗われますよ。



平成元年生まれ。 シンガーソングライター。 生まれは香川、 育ちは長野、 大学進学のため上京し、 東京在住。 2 歳のころからクラシックピアノを習い、 その後ヴァイオリン ・合唱 ・声楽 ・ ドラム ・ギターなどを経験、 様々な音楽に触れる。 18 歳より鍵盤弾き語りをメインとして活動···

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