「青空」はアルバム「TRAIN-TRAIN」の収録曲
日本を代表するロックバンドとして、愛され続けるTHE BLUE HEARTS。
『リンダリンダ』や『人にやさしく』などの名曲揃いで、CMソングにも多数起用されています。
なかでも1988年リリースの3枚目のアルバム『TRAIN-TRAIN』に収録されている『青空』は、数多くのアーティストがカバーしてきた代表曲です。
2010年にはアニメ映画『カラフル』のエンディングに、miwaのカバー曲が起用され、ネット配信限定デジタルシングルとしてリリースされています。
『青空』の最大の魅力は、マーシーこと真島昌利の綴る社会を風刺した、リアルかつ文学的な歌詞。
メッセージ性の強いその歌詞と、繊細な音楽に乗せた甲本ヒロトの静かな歌声のギャップがブルーハーツらしい実直さを感じさせます。
リリースから30年を経てもなお変わらず共感できる、『青空』の歌詞の意味を読み解いていきましょう。
差別や不誠実がはびこる社会へ一石を投じる
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ブラウン管の向う側
カッコつけた騎兵隊が
インディアンを
撃ち倒した
ピカピカに光った銃で
出来れば僕の憂鬱を
撃ち倒して
くれればよかったのに
≪青空 歌詞より抜粋≫
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「ブラウン管の向う側」のフレーズは、テレビに映るニュースのことを表しているのでしょう。
そのニュースで報じられる話題は、「カッコつけた騎兵隊がインディアンを撃ち殺した」模様です。
アメリカでは建国以来「インディアン(ネイティブ・アメリカン)」を迫害して、領地を広げてきました。
残念ながら、その名残から現代でも黒人差別はなくなっていません。
主人公はそんな暗いニュースを見ながら、「ピカピカに光った銃で出来れば僕の憂鬱を撃ち倒してくれればよかったのに」と考えます。
これは主人公の精神状態が、かなりひどい状態であることを示しているのではないでしょうか。
自身も似たような差別的な境遇にあるために、ニュースの話題がより身近なものに感じられて憂鬱になっているのかもしれません。
間違った正義を振りかざし、罪のない人が傷つけられる社会のいびつな現実をストレートに描いています。
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神様にワイロを贈り
天国へのパスポートを
ねだるなんて
本気なのか?
誠実さのかけらもなく
笑ってる奴がいるよ
隠している
その手を見せてみろよ
≪青空 歌詞より抜粋≫
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「神様にワイロを贈り」の表現は、おそらく宗教上の献金のことを指していると考えられます。
神様に献金することが幸福に繋がるという宗教的な考え方が、「天国へのパスポートをねだる」というフレーズで表現されているようです。
宗教を真っ向から否定しないまでも、本当に幸福はお金で得られるものなのだろうかと、疑問を投げかけています。
続く「誠実さのかけらもなく笑っている奴」とは、文字通り悪いことを平気で笑ってやっている人たちのこと。
例えば黒人を差別して、暴力を振るう白人やお金や保身のために嘘をつく政治家、クラスメイトにひどいことをするいじめっ子だってそうです。
罪の意識さえなく笑っている人たちは、どんなに良く見せてもその手は汚れています。
そんな悪人たちが自由でいることを許している、社会へのいら立ちや反骨精神が垣間見えまるようです。
どこに生まれても青空の下を生きている
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生まれた所や
皮膚や 目の色で
いったいこの僕の
何がわかると
いうのだろう
≪青空 歌詞より抜粋≫
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ブルーハーツの『青空』といえば、このサビの部分のフレーズが特に印象的ですよね。
国籍や人種だけで人となりを量ることはできません。
世界のどこで生まれようと、どんな肌の色をしてどんな目の色を持っていようと、その事実がその人を形作るわけではないのです。
ほかにも学歴や職業、容姿で差別されたり優遇されたりするのがこの世の常です。
「いったいこの僕の何がわかるというのだろう」という一節に、そんな小さな物差しで一人の人間を量ろうとしないでほしいという実直なメッセージが感じられます。
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運転手さんそのバスに
僕も乗っけてくれないか
行き先なら
どこでもいい
こんなはずじゃ
なかっただろ?
歴史が僕を問いつめる
まぶしいほど
青い空の 真下で
≪青空 歌詞より抜粋≫
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主人公が語りかける「運転手さん」は、目的地まで連れて行ってくれる人なので、この歪んだ世界を変えてくれる存在として描かれているのかもしれません。
そして「歴史が僕を問いつめる」という言葉。
これは、時代を経てもなお受け継がれてしまっている人種差別などの根強い問題が、主人公の心に深く刺さっている様子を表現しているのではないでしょうか。
こんな世界から逃れられるなら、どこでもいいから連れ出してほしい。
タイトルの元にもなっている「まぶしいほど青い空」というフレーズも、そんな希望の象徴なのでしょう。
問題ばかりのこの世界でも、目を上げればどこでも美しい青空を眺めることができます。
その事実は、この世界が必ずより良いものになる可能性を象徴するかのようです。
現実はどうあれ、希望を持って信じ続けることの大切さが感じられる名曲です。
「青空」のメッセージが心に刺さる
ブルーハーツの『青空』の歌詞には、暗い現実がはっきりと綴られていました。
テレビの向こう側で映し出される問題はどこか遠く感じてしまいがちですが、他人事と思わず「自分たちはどうだろう」と、考え続けることが必要なのではないでしょうか。
世界中の人たちが手に手を取り合い、この歌詞を懐かしむ時代が来ればどんなにいいでしょう。
ブルーハーツの『青空』を聴きながら、世界の問題を決して忘れず希望を持って生きていきたいですね。
THEBLUEHEARTS(ザ・ブルーハーツ)は日本のパンク・ロックバンド。 メンバーは甲本ヒロト(Vo.)、真島真利(G.)、河口純之助(Ba.)、梶原徹也(Dr.)。 1985年に甲本と真島を中心として結成。 コード進行は3、4コードを主としたシンプルなものが多く、メッセージ性の強い歌詞とオリジ···