切ない色 オレンジ
オレンジは、心を切なくさせる色だ。なぜなら、1日の終わりを告げる「夕焼け」を連想させるからだ。実際、秋の季節になると夕焼けを見てセンチメンタルな気分になる人は多いはずだ。
SMAPの名曲「オレンジ」
SMAPの32枚目のシングル「ライオンハート」のカップリング楽曲である名曲『オレンジ』もそのうちの1つだろう。学生時代の学校からの帰り道、友人や恋人とオレンジ色に染まった空を見上げながら帰リ道、それらの思い出もあわさって、心が切なくなる。
オレンジはSMAPにとっても大切な曲のひとつ
また、この楽曲は2002年1月に放送された「SMAP×SMAP」で“SMAPにとって大切な曲のひとつ”として歌われている。歌詞の最期にある“ありがとう。”が元は“さよなら。”だったが、木村拓也の強い想いから歌詞が変更されたことでも有名だ。
そもそも、この曲はシングルカット曲ではなく、カップリング曲として発売された曲。それなのに、カラオケランキングでも常に上位に食い込むほど高い人気を誇っている。SMAPファンの間でならば、なおさらではないだろうか。
この楽曲だけでも十分楽しむことができるが、実は単体ではなく「Song2~the se quel to that」「夏日憂歌」と続きがある。
『オレンジ』の登場人物“僕”のその後が描かれており、別れた“君”への気持ちに折り合いをつけたり、つけられなかったりな内容となっている。
別れから始まる“僕”の物語、その続編を楽しむような気持ちで聴いてみるのも良いかもしれない。
今回は、ひとまずその話は置いておき、オレンジに注目をしていく。
恋人との距離感
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小さな肩に背負込んだ
僕らの未来はちょうど今日の夕日のように
揺れてたのかなぁ
イタズラな天気雨がバスを追い越して
オレンジの粒が街に輝いている
≪オレンジ 歌詞より抜粋≫
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学生時代に初めてのお付き合いをする人は多い。初めての彼氏・彼女の存在に人目を気にせずイチャイチャしたり、四六時中べったりしていることもある。気持ちが有頂天になって毎日、メールで言葉で「好き」と伝え合う。
しかし、その幸せが長く続くことはあまりない。相手の嫌なところが見えた瞬間に気持ちが冷めてしまうこともある。
加えて、“若さ”ゆえに、互いに主張が強すぎてケンカ別れしたという話も珍しくはない。
特に、大きなきっかけともいえるのは“卒業”だ。卒業に限らず言えることだが、進路が違えばすれ違いが多くなる。新しい出逢いによって、価値観も変化していく。すると当然ながら、これまでと同じ気持ちではいられなってしまう…。
相手を想い終わりを告げる
----------------別れを告げるのは、いつでも辛い。
「さよなら。」と言えば
君の傷も少しは癒えるだろう?
「あいたいよ・・・。」と泣いた声が
今も胸に響いている
≪オレンジ 歌詞より抜粋≫
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でもそれは、相手のためを想ってのことでもある。気持ちが空の状態で付き合い続けていてもお互いに辛い結末を迎えることになる。
急に変わってしまった態度は恋人を不安にさせる。やがて、相手を傷付けてしまうことにもなる…。そうなる前に、相手を想い「別れ」を告げるのだ。
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「さよなら。」僕を今日まで支え続けてくれたひと
≪オレンジ 歌詞より抜粋≫
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大人になると想い出が切なくなる理由
ただ、相手を想って別れを切り出したにも関わらず、大人になって切なくなるのはどうしてなのか。胸を締め付けるこの「切なさ」は、年を重ねて気付くことがあるからだろう。
口先では「相手のため」と言いながら本当は自分の気持ちに一区切りをつけたかっただけなのかもしれない。
いつか先に相手の気持ちが離れて自分が傷付いてしまう前に、相手を想う気持ちを誤魔化したかっただけなのかもしれない。
そんな気付きが切なさを生むのだ。
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そして何より二人がここで共に過ごしたこの日々を
となりに居てくれたことを
僕は忘れはしないだろう
≪オレンジ 歌詞より抜粋≫
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この想いが、あの時、自分が“さよなら”と言わなければ…という想いがあるからこそ、泣いていた“君”の声が胸に響くのだ。
学生時代の恋愛は独占欲や嫉妬、愛おしいという想いなど初めて経験することばかりだ。
別れも同じことで、切なさと共にすぐには忘れることなんてできないだろう。けれど、いつかは切ない思い出から卒業できるときがくる。
その時には、きっと相手へ贈る言葉も代わっているはずだ。
“「さよなら。」”から“「ありがとう。」”と。
TEXT:空屋まひろ