アニメの世界観に合うオープニングテーマ
秋田ひろむが作詞作曲した『境界線』はアニメ「86―エイティシックス―」の主題歌で、アニメの世界観にぴったりだと話題になっています。
まずはアニメのあらすじと照らし合わせて歌詞を考察してみましょう。
「86―エイティシックス―」は完全自立無人戦闘機械「レギオン」による侵略に、無人戦闘機械「ジャガーノート」で対抗する物語です。
しかし「ジャガーノート」が無人というのは偽りで「エイティシックス」と呼ばれる少年少女が搭乗させられ、闘い続けているというのが現実でした。
エイティシックスは人として認められず、人型の豚として道具のように使われます。
エイティシックスが厳しい現実の中で生きる姿やエイティシックスを犠牲にする国の体制への葛藤が描かれ、「生きるとはどういうことか」「他人を尊重するとはどういうことか」を考えさせられる作品です。
では、このあらすじを踏まえて『境界線』の歌詞を見てみましょう。
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境界線の向こう側で 足掻く人々 嘆く人々 目にしながら
沈黙することを選択するならば 僕らは共犯者 人たりえたのか
≪境界線 歌詞より抜粋≫
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この歌詞をアニメのあらすじに当てはめると、「境界線」というのは「エイティシックスが命を懸けて闘う前線エリア」と「一般的な国民が平和に暮らす世界」の境界線だと捉えられます。
境界線の向こう側にいるエイティシックスが前線で足掻き嘆いているのに、境界線の内側にいる国民はエイティシックスを人として見ることなく、痛みを知らずに生きています。
「人たりえたのか」という歌詞がありますが、「たりえる」は「値する・ふさわしい」という意味の言葉です。
この歌詞は境界線の内側から見て見ぬふりをする行為に対して、「人に値するのか」と問いかけているのでしょう。
アニメでは国民がエイティシックスを「人型の豚」と呼びますが、本当の意味で「人に値しない」のは境界線の外側から目を逸らしている国民の方かもしれませんね。
amazarashiが歌詞で訴えたいことは?
境界線の内側と外側の問題は現実でも起こっています。
「国境を境界線にして起こる戦争」もそのうちの一つでしょう。
現実に起こっている問題の一例として「戦争」に当てはめて歌詞を分析してみます。
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こんな風景見たくはなかった 泣いた声を塞いだ泣き声
「向こうは怖い」とでかい声がして それが伝播して残響が人を刺した
善良を粗暴へ容易く変える その一声は紛れない正義だ
惨い獣に姿を変えるのは いつの時代も守るため
≪境界線 歌詞より抜粋≫
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この歌詞の「向こうは怖い」というのは「境界線の向こう側は怖い」という意味だと考えられます。
「境界線の向こう側は怖い」という恐怖心が「自分たちのいるこちら側を守るためには向こう側を殺さねばならない」という思いを駆り立て、人を粗暴に変えてしまうのかもしれません。
兵士の心に「国を守るため」という正義の想いがあったとしても、問題なのは境界線の向こう側にいる人は殺してもいいのか、守らなくてもいいのか、という点です。
境界線の外側にいる人も内側にいる人も同じ「人間」で、お互いに尊重する必要があるはずなのに、尊重できなくなったときに暴力が発生します。
この歌詞は現実世界にも通ずることとして、境界線の外側と内側を区別することの恐ろしさを訴えているのかもしれません。
「境界線」は身近にもある?
「アニメにおける境界線」と現実問題の一例である「戦争における境界線」に沿って歌詞を考察しましたが、境界線は他にもいたるところにあります。
『境界線』のMVでは「ゲームの中の世界」と「プレイヤーがいる現実世界」の境界線が描かれました。
また、注目すべきは以下の歌詞です。
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存在意義はいつだって自分以外 例えば君 その声だけ
≪境界線 歌詞より抜粋≫
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存在価値はいつだって自分の中 個々に宿る銘々の色
≪境界線 歌詞より抜粋≫
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「自分以外」と「自分の中」という表現が使われています。
私たちは自分を境界線として「自分以外」と「自分の中」を区別し、存在意義を自分の外側に求めます。
その過程で存在価値も自分の外側に探してしまいがちです。
しかし、存在する「意味」は自分の外側にあっても、「価値」自体は個人個人が自分の中に宿すものなのかもしれませんね。
青森県在住の秋田ひろむを中心としたバンド。 日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝だが「それでも」というところから名づけられたこのバンドは、「アンチニヒリズム」をコンセプトに掲げ、絶望の中から希望を見出す辛辣な詩世界を持ち、ライブではステージ前にスクリーンが張···