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King Gnu「boy」の歌詞の意味はボッジの生き方と重なる

King Gnuの新曲『boy』は、TVアニメ『王様ランキング』のオープニングテーマです。非力な王子・ボッジの生き方と重なる歌詞や『boy』というタイトルに込められた意味を考察しつつ、曲の魅力に迫ります。

国の長としての在り方を描いた『王様ランキング』

▲King Gnu-boy【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

King Gnuが歌う『王様ランキング』主題歌『boy』が、2021年10月15日にリリースされました。

『王様ランキング』は、王子である少年・ボッジの成長を描いた物語です。

作品名にもなっている「王様ランキング」とは、国の豊かさや強者の数、王様自身の強さによってランク付けしていく制度。

物語は、ボッジの父親であるボッス王が亡くなるところから動き出します。

王様ランキング7位という強さを誇った父とは異なり、ボッジは小さく非力な少年でした。

さらに、両親が巨人であるにもかかわらず、ボッジはとても小柄。

口もきけず、耳も聞こえないために周りの人間からもバカにされています。

そんな様子を見て、町の人はボッジがバカなのだと思い込み笑いものにしますが、ボッジはバカではありません。

誰も見ていない場所では、悔しくて、悲しくて涙をこぼしているのです。

それでも、人前では笑顔を絶やさず、優しさを忘れず、弱みを見せない、実は強い少年です。

ボッス王のあとを継いだのはボッジの弟である第二王子・ダイダですが、彼はボッジとは違い、王の器だと言われていました。

しかし、そんな彼は王になるため、強くなるために手段を選びません。

やり方に少々問題はありつつも国民から信頼されているダイダと、王の器ではないとバカにされているボッジ。

『王様ランキング』という作品は、ボッジの成長を描くだけでなく、ランキング上位に君臨するための難しさや、それによって変わっていく人間の心模様まで描いた、非常に深い作品なのです。

ボッジは、どれほどバカにされようと、人から期待されなかろうと、腐ることなく努力を続けられる少年。その姿は、見ている人に勇気を与えます。

King Gnuの『boy』は、そんな温かい物語とリンクするような優しい歌詞が印象的です。

作詞作曲はギターとボーカルを担当する常田大希

アニメ作品の楽曲でありながら、日々を生きる人たちをそっと元気づけるような歌。

優しいメロディーと音で作り出されるKing Gnuの音楽は、作品世界と現実世界、どちらの世界にもリンクしています。

作詞家としての才能を感じますね。

聴けば聴くほどボッジの生き方と重なる『boy』の世界を、さっそく読み解いていきましょう。

弱いからこそ輝くボッジの生き方


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その涙が汗が滲んだ
誰とも違う美しさで
笑っておくれよ
息を切らした君は
誰より素敵さ
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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ボッジは心優しい少年ですが、話すことも聞くこともできないせいで嘲笑の的にされてきました。人知れず流した涙は数知れぬことでしょう。

また、巨人であった父親のボッス王とは異なり、小さく非力な少年。

本来であれば第一王子であるボッジが新しい王となるはずでしたが、その座を弟のダイダに奪われてしまいます。

生まれついた身体の不自由さからバカにされ、力がないから王にもなれない。

自己嫌悪とたくさんの悪意に囲まれ、心を病んでしまってもおかしくない中、ボッジは希望を捨てず、努力を諦めません。

たくさんの涙を流し、陰の努力を積み重ねてきたからこそ、その笑顔が特別に輝いて見えるのでしょう。

汗を流し、息を切らして精一杯生きる姿は間違いなく「誰よりも素敵」です。

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気の抜けた炭酸みたいに
微かに気怠い日々に溶けた
家鴨の侭で翼を広げて
空を舞う白鳥の夢をみる
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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第一王子といえば聞こえは良いですが、ボッジの人生は日陰者のそれでした。

剣術の達人に教えてもらっても、相手のやる気を失わせるばかりで、まったく才能を発揮できないためです。

弟のダイダはメキメキと頭角を現し、部下からも国民からも信頼を集めていました。

腹違いとはいっても兄弟でありながら、兄よりも弟の方が秀でている人生は、辛いことの連続だったことでしょう。

童話『みにくいアヒルの子』では、周りからバカにされていた子が本当は美しい白鳥でしたが、ボッジは白鳥ではありません。

「家鴨の侭で」美しく空を飛ぶ白鳥を夢見ることは、どこまで行っても現実味のないただの夢です。

強くなりたいと願いながら鍛錬を重ね、それでも強くなれない現実の中で生きる、彼の辛さと重なる歌詞ですね。

回り道だからこそ見える景色


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彷徨うくらいなら
一層味わい尽くしましょ
近道ばかりじゃ
味気がないでしょ
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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ボッジの人生はきっと、回り道ばかりだったことでしょう。

血の繋がらない母親と弟、周囲の厳しい目に晒され、自分の非力さも相まって、ボッジは孤独を常に感じていたことと思います。

そんなボッジが遠回りの道を楽しめるのは、孤独を癒やしてくれる友達ができたから。

暗殺者であるカゲ一族の末裔・カゲは、元々は盗人として、ボッジを利用するために近づきました。

しかし、ボッジと触れ合う内に、彼がただのバカでも不自由な子供でも金持ちの王子でもないことが分かってきます。

実は陰で泣いていること、人前では明るく振る舞っているだけのこと。

心根が優しく、努力を忘れないひたむきさに、カゲは少しずつ惹かれ、ボッジの味方になることを誓います。

ボッジも一人、カゲも一人。互いに子供で、互いに孤独を味わった身だからこそ寄り添い合えたのかもしれません。

痛みや喜びを分かち合えるカゲに出会えて、ボッジの人生は輝き出したのではないでしょうか。

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道草を食って
泥濘み飲んで
でも辿り着けなくて
また何度だって
夕暮れを追いかけるの
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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人より多くの努力をして、辛酸を嘗める。悔しさも無力さも味わい尽くしながら前に進む。

突き進む道が朝日ではなく夕暮れというのもボッジらしいですね。

暗闇から一歩踏み出し、明るい世界へ行こうとしているからこそ、追いかけるのは眩しい朝日ではなくほの暗い夕陽なのではないでしょうか。

夕陽は沈み行くもの。明るいイメージではありませんが、夕陽が沈み夜が来て、また朝がやって来るのです。

大きな希望はなくとも、一歩ずつ。確実に前に進んでいくボッジたちの旅にはぴったりの表現です。

王国という場所に見え隠れする本音と建前


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物語の始まりはいつも
静寂を切り裂き突然に
胸の中ざわめく焔に
照れて忘れて大人になる
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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『王様ランキング』は、絵面こそ可愛らしいですが、描かれる内容はなかなかシビアです。

力を付けるために方法を選ばないダイダや、大人たちの薄汚い本心。

自分の力を信じて強い王を目指すダイダを利用しようとする不穏な存在

ダイダはボッジへの当たりはキツいですし、やり方はやや強引ですが、まだ子供で、純粋に自分の力で強くなりたいと願っています。

それでも、周りの大人たちがそれを受け入れてくれません。

欲にまみれた大人たちに利用されてしまう子供

それもまた、王国のリアルかもしれません。

誰もがボッジたちのように健気に生きているわけではないのです。

この歌詞は、子供から大人へ成長しようとする王子たちの、複雑な心や取り巻く環境をも表現しているようです。

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形振り構わず
今日は御仕舞いにしましょ
日溜りの様な
夢を見れますように
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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「形振り構わず」というのが、がむしゃらに突き進むボッジとカゲに重なり、微笑ましくもあります。

どんなに非力でも、諦めず、希望を捨てない。自分に合った方法で強くなる道を見出そうとする姿が頼もしい二人です。

現実の世界では辛い思いをたくさんしてきた二人だからこそ、夢の中くらいは陽だまりのような温かさを感じて欲しいものです。

抗う先にある強さと美しさ


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固唾を呑んで
恥を忍んで
まだ諦めきれなくて
また何度だって
明日を追いかけるの
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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友達のように、時には母親のように、ボッジの成長を見守るカゲ。

目指した自分になれずに涙を飲んでも、周りに笑われても、ぐっと堪えて前に進む。

どれほど悔しい思いをしても諦めきれないだけの強い気持ちがあることが、ボッジとカゲの強さではないでしょうか。

心が折れてしまったらそこで終わってしまいます。

明日を夢見られる内はまだ、この二人は大丈夫なのでしょう。

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声を枯らすまで
泣いていたんだよ
叶わないと判って尚
抗っておくれよ
剥き出しで咲く君は
誰より素敵さ
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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泣くということは弱さの象徴と見られがちです。

ボッジは普段、人前では泣きませんが、カゲの前で思わず泣いてしまったことがありました。

堪えようとしても溢れてしまう涙は、悔しさの表れです。

本気で頑張っているからこそ抑えきれない涙は、弱さではなく、心の美しさや強さの象徴のようにも見えます。

生まれつき力がなく、強くなる才能がないと言われていたボッジ。

可能性がないと言われて落ち込んでも、自分にしかできない方法で強くなる道を選びました。

どれほどバカにされても、ボッジを信じてくれる人がいること。

それこそが彼の強さであり、誰にも負けない魅力なのです。

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走れ遥か先へ
汚れた靴と足跡は
確かに未来へと
今駆けてゆく
息を切らした君は
誰より素敵さ
≪BOY 歌詞より抜粋≫
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ボッジとカゲが目指す未来は、他の誰も歩んだことのない道です。

弱いからこそたどり着ける未来なのかもしれません。

靴が泥まみれになろうと、身体がボロボロになろうと、迷いながらもまっすぐに信じた道を進む。

常に精一杯、不格好でも誠実に生きているからこそ、その姿は誰よりも美しいのです。

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。 その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Guitar/Vocal)、勢喜遊(Drums/Sampler)、新井和輝(Bass.)、井口理(Vocal/Keyboard)の4名体制へ。 SXSW2017、Japan Nite US Tour ···

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