「青春病(Seishun Sick)」とは?
恋をしたり、何かに打ち込んだり、キラキラしながらも何かと不安定な青春時代。
その儚さの虜になり、大人になってからも青春時代の気持ちから抜け出さないままでいるという方も少なくないことでしょう。
それを「青春病」とし、否定するでもなく肯定するでもなく、優しく背中を押してくれるのが藤井風の楽曲『青春病』。
まずは歌い出し兼サビの歌詞を見てみましょう。
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青春の病に侵され
儚いものばかり求めて
いつの日か粉になって散るだけ
青春はどどめ色
青春にサヨナラを
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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振り返ってみると、辛かったことも楽しかったことも全部輝いてみえる青春時代。
だからこそ「戻りたい」と思うことも多いものですが、いつまでも抜け出せずにいたら、何もできないまま人生が終わってしまうという注意が歌われています。
ちなみに「どどめ色」とは青紫や赤黒い色を表すんだそう。
青春というとブルーやグリーンなど、爽やかな色を思い浮かべる人も多いのでは?
しかしここでは、過ぎてしまった青春にはそれほど魅力がないことを表すために、ドス黒い色を用いているのかもしれませんね。
青春を断ち切ることへの葛藤
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ヤメた あんなことあの日でもうヤメた
と思ってた でも違った
僕は 自分が思うほど強くはなかった
ムリだ 絶ち切ってしまうなんてムリだ
と思ってた でも違った
僕は 自分が思うほど弱くはなかった
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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1行目の「あんなこと」とは、おそらく青春時代のこと。
自分では青春を断ち切ったつもりでいたものの、実はその強さはなく、過去に浸ったままであったという後悔が歌われています。
しかし、続いて歌われているのは一歩前へと踏み出した自分の状況。
楽しかったあの日々を断ち切って前に進むのは無理だと思っていたけれど、自分自身はそこまで弱くなかったと悟ったようです。
そんな一歩踏み出すきっかけとなったのが、続く歌詞に登場する「君」の存在です。
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君の声が 君の声が
頭かすめては焦る
こんなままじゃ こんなままじゃ
僕はここで息絶える
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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「君」が誰なのかについては言及されていません。
しかし、「君」の存在があったからこそ「このままじゃダメだ」と思うことができ、一歩前へと踏み出せたようです。
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止まることなく走り続けてきた
本当はそんな風に思いたいだけだった
ちょっと進んでまたちょっと下がっては
気付けばもう暗い空
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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ここで歌われているのも、おそらく「青春時代を経て今まで止まることなく成長してきたつもりだったけど、実はそうでもなかった」という後悔の1つでしょう。
「暗い空」というのは時の経過を表しているのでしょうか?
成長したような、そうでもないようなという葛藤を繰り返しながら、気づいたら歳を重ねていたようです。
この後は先ほど紹介したサビが続き、「青春とサヨナラしよう」というメッセージが歌われます。
一歩踏み出したいけれど…
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そうか 結局は皆つながってるから
寂しいよね 苦しいよね
なんて 自分をなだめてるヒマなんて無かった
君の声が 君の声が
僕の中で叫び出す
耳すませば 耳すませば
何もかもがよみがえる
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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ここで歌われている「皆」は、主に2つの意味が考えられます。
1つ目は「時間」説。
青春時代から今までずっと時の流れは繋がっているから、立ち止まって考えるヒマなんてなかったという意味です。
2つ目は「友達」説。
青春を共にし今は別の道にいるけれど、関係は繋がり続けているから「寂しい」と思うことはなかったという意味であるとも考えられます。
いずれにせよ主人公が現実を変えたがっていて、心の中にいる「君」の声や青春時代の記憶に支えになっていることは確か。
つまり青春時代は青春時代で素晴らしいものであったと肯定しているようです。
その心強さを胸に一歩踏み出したいと思ってはいるものの、なかなか難しい様子が次の歌詞で歌われています。
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止まることなく走り続けてゆけ
何かが僕にいつでも急かすけど
どこへ向かって走り続けんだっけ
気付けばまた明ける空
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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前に進むべきであるとわかっているけれど、どこに進んでいいのかわからない。
目の前や未来の目標がないのは、過去に浸り現実を見ようとしない青春病の症状の1つとも言えるかもしれませんね。
本当の光があるのは青春の中じゃない!
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無常の水面が波立てば
ため息混じりの朝焼けが
いつかは消えゆく身であれば
こだわらせるな罰当たりが
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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ここでは主人公が深く悩む様子が歌われています。
どうしたらいいのかわからないと思いつつも、「これはしたくない」「ああなりたい」というこだわりがあるのでしょうか?
後半の2行は「どうせ死ぬんだからこだわるなよ」と言う投げやりな心情とも解釈できますね。
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切れど切れど纏わりつく泥の渦に生きてる
この体は先も見えぬ熱を持て余してる
野ざらしにされた場所でただ漂う獣に
心奪われたことなど一度たりと無いのに
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞もやや難しい表現が続いていますが、おそらく前半2行は人生は困難続きであること、だけどそれに立ち向かっていくパワーを秘めていることを表現していると思われます。
3行目は「漂う」という言葉をもとに考えると、当てもなく生きている人を表しているのではないでしょうか?
中途半端に生きている姿に、魅力を感じたことはない。
だからこそどうすべきなのか、答えは続くサビにあるようです。
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青春のきらめきの中に
永遠の光を見ないで
いつの日か粉になって知るだけ
青春の儚さを…
≪青春病 歌詞より抜粋≫
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青春はとても輝いて見えるけれど、もっと輝くものが未来にある。
青春は儚いからこそ美しいのだと、いつかわかる日がくる。
その日を目指して、今は前に進め。
つまり藤井風の『青春病』は青春から抜け出せない人を否定する楽曲ではなく、「青春よりも素晴らしいものが未来にある」という希望を感じさせる楽曲なのかもしれませんね。
YouTubeでMVもチェックしてみて!
青春時代の素晴らしさを肯定しつつ、未来にはさらに素晴らしいものが待っていると教えてくれる『青春病』。同曲にはMVが制作されており、YouTubeで見ることができます。
ややレトロな雰囲気の「ザ・青春」を感じさせる映像は必見。
楽曲の世界観をより強く感じさせてくれますよ。
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