譜面に抑圧されたボーカロイド
『マシンガンポエムドール』は『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(以下、プロセカ)の1周年記念書き下ろし楽曲です。プロセカは初音ミクなどの注目ボカロ曲を取り扱うスマートフォン向け音楽ゲームで、同曲はプロセカで使用される最高難易度曲として作られました。
再生すると歌詞がマシンガンのような勢いで歌われ、最高難易度曲の貫禄があります。
楽曲のタイトルである『マシンガンポエムドール』は、マシンガンのように歌詞を歌うボーカロイド=初音ミクを表しているのだと考えられそうです。
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几帳面なメトロノームとスピーカー
言いつけ守って品行方正 囀and囀sound
それで何がいけないの?わからなーい
寸分違わずしてほしい事してあげるから
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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タイトルがボーカロイドを表しているのだとすれば、「寸分違わずしてほしい事してあげるから」という歌詞もボーカロイド視点の言葉だと推測できます。
譜面どおりに「寸分違わず」歌うのはボーカロイドにしかできない芸当ですよね。
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「1,2,3,4」
首輪を嵌められ従順 抑圧され高揚
――まだ足りない
感覚を全部 三つ指で差し出して
「まるでバーチャルシンガーみたい!!!!!」
君のために喋る唄う声上げる恍惚
さあさ 共に踊りましょう
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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「首輪を嵌められ従順」という歌詞は、譜面どおりに歌わされるボーカロイドの姿を表しているのかもしれません。
ボーカロイドは譜面に抑圧されてしまう歌い手だといえるでしょう。
最高難易度の曲としてぶっ壊れた音楽
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タブレット越しに覗き込んだその血走る眼でグリグリ見詰めて
刻んだ指指粉々にしても つながってかない譜面に苛立ち
さあさ 共に唄いましょう
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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この歌詞は楽曲の聴き手がプロセカをプレイし、苛立つさまを表現していると考えられます。
「指指粉粉」という歌詞からは、プレイヤーが最高難易度の曲を攻略しようと、指が粉になるほどボタンを連打している様子が浮かびます。
歌詞にも反映しているあたり、本当に最高難易度の曲として作られた楽曲なのだということがよくわかりますね。
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真性完全解放 *ぶっ壊れた音楽*
誰にも愛されなかった君の詩を
私が代わりに拾うの
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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続きの歌詞では「ぶっ壊れた音楽」というフレーズが気になります。
同曲が「ぶっ壊れた音楽」なのだとしたら、壊れてしまった理由はプロセカ最高難易度の曲として作られ、スピードが異常に速くなったことでしょう。
ボーカロイドと同じく、音楽性もまた譜面に抑圧されてしまったのかもしれません。
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ビートマシンとありえないほどの高速縦連リリック
完全性生まれない音楽 狂気を為して存在を示す
沸点バグって泡立つ感情 調子が崩れてしまいそうになる
リズム弾(はじ)くために生まれた歌
「私だけが唄うの」
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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「狂気を為して存在と示す」という歌詞は、ゲーム用のビートマシンと化した音楽の存在意義は、“もはや狂気だけなのだ”と自嘲的に伝えていると解釈できそうです。
ボーカロイドが楽曲を支配している?
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誰にも愛されなかった君の詩を
私が終わらせてあげる
誰にも唄えなかったその旋律を――
「君には私だけでいいの」
≪マシンガンポエムドール 歌詞より抜粋≫
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「ありえないほどの高速縦連リリック」は、歌詞として聞き取れないようなスピードになっており、誰にも愛されない詩になってしまいました。
このリズムで歌えるのもボーカロイドである「私」だけでしょう。
譜面に抑圧されているように見えたボーカロイドですが、実はボーカロイドが“自分にしか歌えないもの”として楽曲を支配している側面もあるのかもしれません。
最も支配されているのは誰なのか
さて、直前に引用した歌詞の最後は「君には私だけでいいの」というフレーズですが、「君」とは誰のことなのでしょうか?「君の詩」という歌詞があるため、「君」は作詞者である暴走Pを指すのだと考えられます。
ボーカロイドは譜面に支配され、音楽性は譜面の難易度を高めたことでぶっ壊れましたが、その譜面を生み出した暴君P自身はボーカロイドに支配されているのかもしれません。
ボーカロイドの魅力に取りつかれた暴君Pと、暴君Pの生み出す譜面に振り回されるボーカロイドの関係性が表現されているのだとしたらおもしろいですね。