サンテFXのCM曲はコロナ禍がテーマ
2021年12月3日にリリースされたサカナクションの新曲『プラトー』は、ボーカル・ギター担当である山口一郎出演のサンテFXのCMソングに起用された楽曲です。
11月に行われたオンラインライブ「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」にて初披露され、2022年3月30日発売のアルバム『アダプト』の収録曲として先行配信されました。
このアルバムはコロナ禍においてミュージシャンとしてどのように適応し、これからどう適応していくのかを表現したコンセプトアルバムとなっています。
その先駆けとなる『プラトー』ですが、タイトルの「プラトー(plateau)」とは日本語で「高原・台地」を意味するフランス語の言葉。
心理学用語では一時的な停滞状態を表す言葉で、特に心的飽和や疲労などが原因で起こる現象のことを指します。
コロナ禍によって音楽業界が停滞し、戸惑いや疲弊を感じている状況を表現していることが伝わってきます。
では詳しく歌詞の意味を考察していきましょう。
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0時以降の二人は
今日と明日を曖昧にしてる
冷蔵庫のノイズが
外の雨も曖昧にしてる
≪プラトー 歌詞より抜粋≫
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1番の歌詞では、不安を抱えている人たちの様子が綴られています。
ここで示されている「0時」という境界は、おそらくコロナ禍になる前後の境を表しているのでしょう。
深夜は「今日と明日」が曖昧になるように、コロナ禍の生活も混沌としたものになっています。
「冷蔵庫のノイズ」というフレーズは、自粛期間で家にいる時間が増えたことを表現していると思われます。
憂鬱な気持ちで家にこもっているために普段は気にならない冷蔵庫の音がうるさく聞こえて、外の雨音も聞こえにくくなっているようです。
そんなコロナ禍の日常と日々への不安に共感できるのではないでしょうか。
ミュージシャンとしての苦悩と宣言
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0時以降の二人は
半分透明になってしまって
真夜中
眠れなくなった
冴えたり曇ったり
行ったり来たりして
≪プラトー 歌詞より抜粋≫
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「半分透明になってしまって」という歌詞は、活動が制限されたミュージシャンとしての気持ちを歌っているように感じます。
ミュージシャンは音楽を発信し、世間に届けてこそ存在意義があると言えるかもしれません。
しかし、コロナ禍のためにライブやフェスが中止になったりグループのメンバーとでさえ集まることがためらわれたりと、思うように音楽活動ができなくなってしまいました。
アイデンティティとも言える音楽を発信できない状況は、ミュージシャンにとってまるで自分自身の存在が消えかかっているように思えたのではないでしょうか。
「明日」という先の見えない未来に思い悩む不安定な心の状態が、この部分で明かされているようです。
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この夜は
目を閉じて見た幻
いつか
君と話せたら
僕が今感じてる
この雰囲気を
いつか
言葉に変えるから
≪プラトー 歌詞より抜粋≫
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サビではコロナ禍が収束した後の情景を思い描いている様子が垣間見えます。
今はまだ「幻」でしかないけれど現実になるよう願っている景色があり、「いつか君と話せたら」と未来への希望を捨てないでいることが伝わってきますね。
そしてその時には「僕が今感じてるこの雰囲気をいつか言葉に変えるから」と宣言しています。
コロナ禍で気が滅入る日々の中でも、この経験があるからこそ生まれる音楽もあるのだと目標を持ってポジティブな気持ちでいると解釈しました。
サカナクションが音楽を通して教えてくれる「この雰囲気」が今から楽しみになりますね。
つらくても希望を捨てないで
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平行線の夜は
息を吸って吐いてるだけです
蛍光灯のノイズが
幸せさえも点滅させてる
平行線の夜は
一回二人を冷静にして
頭の中
掻き回す罠
垂れたり濁ったり
行ったり来たりして
≪プラトー 歌詞より抜粋≫
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「平行線」というフレーズも、変化の見られないプラトーの状態を指しているのでしょう。
「息を吸って吐いてるだけ」の生活は虚しく、いかに自分が無力かを突きつけられるように感じてしまいます。
夜を照らす「蛍光灯」は日常への希望を表している可能性があります。
心が押しつぶされそうな日々に希望を失いかけていると、まるで切れかけた蛍光灯が点滅するかのように今もあるはずの幸せを見えにくくしてしまうでしょう。
どうにもならない生活を必死に過ごすうち、ふと冷静になることもあります。
しかし、冷静になって見つめた現実が「頭の中 掻き回す罠」のように余計に自分を苦しめる様子が想像できます。
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僕はまだ
多分まだ目を閉じてる
だから今
笑えるのか
この風が
悲しい言葉に聴こえても
いつか
それを変えるから
≪プラトー 歌詞より抜粋≫
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未だコロナ禍から抜け出せず、コロナ禍が収束した未来を想像することしかできない現状は「目を閉じて」幻を見ている状態と言えるでしょう。
苦しい状況にいるとついマイナス思考になって、風の音のように何気ない言葉でさえ「悲しい言葉に聴こえて」しまうかもしれません。
一方で、現実逃避して楽しい未来を思い浮かべれば自然と笑うことができます。
そうであれば、その幻を現実に変えるという強い気持ちでいることにより、悲しい言葉に飲み込まれてしまうのを避けられるのではないでしょうか。
自分の手で「いつかそれを変えるから」というストレートな決意表明に、リスナーも背中を押されますね。
ニューアルバム「アダプト」を要チェック!
サカナクションの『プラトー』の歌詞には、学校や仕事を含め当たり前の生活ができなくなったコロナ禍の現状と未来への思いが綴られていました。この楽曲で示されていたように、日常が戻って来た時にはきっとさらに力強い音楽の力を感じられるでしょう。
その序章とも言えるアルバム『アダプト』から、コロナ禍にも前向きでいるための力をもらってください。