「silent」のテーマは「音が奪われた夜」
2020年12月に発売された、SEKAI NO OWARIの楽曲『silent』。
2021年7月発売の6thアルバム『scent of memory』にも収録されており、冬の情景を想像させる歌詞とサウンドが印象的な楽曲です。
クリスマスソングとしても人気の高い『silent』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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街から音が全て奪われていった
こんなに静かだと
閉じ込めた言葉も聴こえてしまいそう
≪silent 歌詞より抜粋≫
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作詞作曲を務めたSEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseは、『silent』のテーマは「音が奪われた夜」だと以前にSNSで話していました。
その言葉通り、冒頭の歌詞からは雪の降る静かな夜が思い浮かぶのではないでしょうか。
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雑音の中、貴方の声だけ心に溶けていく
まるでミルクを溢した様なそんな夜
≪silent 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞で、今度は「雑音」というワードが登場します。
おそらく、主人公にとって大切なのは「貴方」だけであって、周辺から聞こえる音楽や会話には興味がないことを表しているのでしょう。
好きな人と2人きりで過ごしていると、周りを気にせず2人の世界に入り浸ってしまうものですよね。
しかし、冒頭で「街から音が全て奪われていった」とあることから、今は貴方の声さえも主人公には聞こえていないと解釈できそうです。
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空を見上げて一人呟いた
消えて欲しいような言葉だけ
だけど心の音だけは
この雪も奪えない
≪silent 歌詞より抜粋≫
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近くに貴方の姿はなく、1人きりで空を見上げる主人公。
もしかしたら、貴方とは別れてしまったのかもしれません。
「消えて欲しいような言葉」とは、「貴方のことはもう好きではない」「貴方と別れてよかった」というような主人公の投げやりな言葉だと想像できます。
一方、冒頭の「閉じ込めた言葉」や「心の音」とは、おそらく主人公の本音を意味しているのでしょう。
主人公は強がっていて、本当は今でも「貴方と一緒にいたい」と思っているのかもしれません。
1人きりで過ごすクリスマス
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クリスマスなんて無ければ
いつも通りの何にも変わらない夜なのに
聖なる旋律は雪に溶けて
自分の鼓動が響いている
≪silent 歌詞より抜粋≫
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歌詞の通り、クリスマスも1年の内の1日であることに変わりはありません。
ただし、クリスマスというだけで、街はどこかお祭りムードに包まれますよね。
貴方と楽しく過ごすはずだったクリスマスは、雪が溶けていくように主人公から消え去ってしまったのでしょう。
「クリスマスなんて無ければ いつも通りの何にも変わらない夜なのに」の歌詞は、1人で過ごすクリスマスを恨めしく思う主人公の嘆きのようです。
「自分の鼓動が響いている」の歌詞も、主人公が1人きりでいることを強調しているようですね。
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夜を泳ぐように過ごしたあの瞬間を
このスノードームみたいに閉じ込められたら
見えない星に願いを込めて
音が無くなった夜に
≪silent 歌詞より抜粋≫
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「夜を泳ぐように過ごしたあの瞬間」は、貴方と過ごした日々を指しているのかもしれません。
楽しい時間を過ごしているとき、多くの人は「時間が止まってほしい」と願ってしまうもの。
もし楽しい時間をスノードームのように閉じ込めてしまえたら、何度でも繰り返し幸せな気持ちを味わえますよね。
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体温で溶ける雪の結晶 触れることが出来ない
貴方は私の知らない時間の中にいる
≪silent 歌詞より抜粋≫
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しかし、主人公にとっての楽しい日々は過ぎ去ってしまいました。
2番の歌詞では、手に触れられない「雪の結晶」を、そばにいない「貴方」に例えていると解釈できそうです。
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凍える身体、力を抜いたら
震えが少し治まった
でもそれは刹那 無意識のうちに
身体が強張っていく
≪silent 歌詞より抜粋≫
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主人公の体が凍えているのは、雪の寒さが理由かもしれません。
あるいは、1人きりでいる寂しさを意味しているようにも思えます。
何度忘れようとしても、大好きだった貴方を主人公は思い出してしまうのでしょう。
雪を眺める主人公の心情は?
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こんな真っ白な世界の中にいたら
自分だけちょっと汚れてるみたい
静寂の音が煩くて
今夜はきっと眠れない
≪silent 歌詞より抜粋≫
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カップルや家族連れで街がにぎわうクリスマス。
「自分だけちょっと汚れてるみたい」とあるように、1人でいる自分はどこか仲間外れにされたような気分になるのかもしれません。
静寂を「煩い」としており、静けささえも1つの音として捉えているのが印象的ですね。
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時を奏でるように寄り添った 煌めきだとしても
目を閉じると望んでもないのに思い出してしまう
この降り積もる雪は
やっぱり貴方と見たかったな
≪silent 歌詞より抜粋≫
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今までは少し強がった様子の主人公でしたが、2番の歌詞からは主人公の弱さが垣間見えるようです。
「この降り積もる雪は やっぱり貴方と見たかったな」は、ポロリと出てしまった主人公の本音のよう。
真っ白な雪と自分を比較して、主人公は素直になろうと感じているのかもしれませんね。
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純白の雪が降る
「降るなら積もってね、汚くなるだけだから」
そんな事を思った私は
どんな顔してた?
≪silent 歌詞より抜粋≫
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綺麗な雪も、溶けた後は地面がドロドロしてしまって、あまり気持ちのいいものではありません。
どうせなら雪の降り積もった風景が見たいと、誰もが思うのではないでしょうか。
おそらく、主人公も「雪が積もってほしい」と願う1人。
ただでさえ1人で過ごすクリスマスなうえに、雪が積もらなければいたたまれない気持ちになると分かっているのでしょう。
にぎやかな街の中に1人でいる、主人公の切ない心情が伝わってくるようですね。
セカオワの冬の名曲「silent」
SEKAI NO OWARIの楽曲『silent』の歌詞を考察しました。「静けさ」「静か」などを意味する英語『silent』。
楽曲タイトルの通り、歌詞は「音」をキーワードに主人公の心情が描かれている点が印象的です。
2014年発売の『スノーマジックファンタジー』とあわせて、セカオワの冬の名曲として今後も愛されていくでしょう。
ぜひ『silent』を聴きながら、雪の降る季節を過ごしてはいかがでしょうか。
2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 同年1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年にメジャーデビュー。 圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーに浸透し、「セカオワ現象」とも···