櫻坂46がSNS社会へ物申す
2021年10月13日にリリースされた櫻坂46の3rdシングル表題曲『流れ弾』は、改名から1年という節目のタイミングで2期生の田村保乃を新センターに迎えた注目の楽曲です。
疾走感あふれる高速のファンクチューンとなっていて、鋭い言葉で綴られる現代のSNS社会に対する社会風刺に寄せた歌詞が印象的。
また、黒や赤の衣装でメンバーが激しく踊るMVもかっこよく、櫻坂46らしいパフォーマンス力の高さを感じさせると好評を博しています。
どんな内容なのか徹底解釈していきましょう。
----------------
どっから飛んで来た?流れ弾
知らない間に撃たれてた
Where did it shoot from? STRAY BULLET
なぜだか心は血を流してた
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
多くの人がSNSを利用し自由に発信する現代では、何気ない言動が過剰に取り上げられ誹謗中傷の的になることがあります。
「流れ弾」というフレーズは、そんなネット上で繰り広げられる攻撃に巻き込まれる様子を表しています。
主人公は「Where did it shoot from?(どこから撃ったの?)」と、なぜ巻き込まれたのかも分からないままいつの間にか心に深い傷を負ってしまいました。
----------------
Hey! Guys! Did you see that?
真っ黒なワンボックスカー
面白半分に
銃口を向けたのか?
動画 投稿中
どうせ 拡散中
とうとう 急上昇中
Like Like Like
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
街では「真っ黒なワンボックスカー」が停まっています。
ここで出てくる「銃口」は、続く「動画投稿中」という言葉からカメラのことと解釈できますね。
怪しげなワンボックスカーを面白半分に盗撮し、動画をSNSで拡散している人物がいるようです。
拡散された動画にはたくさんの「Like(いいね)」がつき、とうとうトレンド入りしてさらに注目を集める結果に陥ります。
----------------
普通に歩いてるだけでも
不都合な出来事 起きるなんて
それじゃあ生きてるだけだって
ああだのこうだの 貰い事故
(Woo woo...)
誰が?何のために?さあね Beats me!
火だるまになって 炎上!
(Wow wow wow wow wow)
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
時には街を「普通に歩いてるだけでも」盗撮の対象になったりからかいや中傷の言葉をかけられたりすることがあります。
特に芸能人であればメディアからも一般人からも狙われ、小さなことでも面白おかしく取り上げられることでしょう。
何も悪いことをしていないのに被害を被る状況はまるで「貰い事故」のようです。
MVのダンスでメンバーたちが触れたり囲んだりするのも、他人が無遠慮に干渉する様子を表していると思われます。
この部分の歌詞から、特別な理由もなく行われた行為によって巻き込まれた側の人たちが「炎上」してしまうネット社会への問題提起が見えてきますね。
「リンチパーティー」の解釈とは
----------------
今宵もどっかしらで 顔隠してリンチパーティー(リンチパーティー)
ターゲットにはなりませんように・・・
いい子でいますから ねえ
こんなことしてたら 誰も彼も家から出ない(家から出ない)
語り合おう 見つめ合おう 愛がなくちゃ世界は終わる
イェーーイ!!
冗談じゃないよ 流れ弾
そんなこととは 無関係
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
1番のサビでは「リンチパーティー」という鋭いフレーズが使われています。
「顔隠して」とあるように、この歌詞はネット上で多くの人が匿名で一人の人を攻撃する状況を表現しているのでしょう。
いつどのように自分が攻撃されるか分からないので「ターゲットになりませんように…」と怯えています。
しかし、誰にも攻撃されない「いい子」でいようとすると、外に出かけていく人はいなくなってしまうはずです。
主人公はそれよりも愛を持って「語り合おう 見つめ合おう」と語りかけてきます。
平気で人を傷つけるのも人の反応を恐れて避けるのも、人への愛がないからなのかもしれません。
自分はそんな冷たい世界と「無関係」でありたいという思いが感じ取れます。
----------------
Baby! What did you say?
ヤバいナイトクラブで
ここだけのトークは
あいつがやったのか?
マジか? 特定中
嘘だろ? 逃走中
Oh My! 謝罪中
Dang! Dang! Dang!
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
芸能人のスキャンダルが多くニュースで取り上げられる昨今。
多くの場合、親しい人との個人的な集まりで交わされた「ここだけのトーク」がリークされることがきっかけになります。
誰が裏切ったのかと犯人探しをしながら追ってくるメディアから逃げますが、結局公の謝罪が必要になってしまいます。
思わぬ展開に「Dang!(ちくしょう!)」と声を荒らげるも、一度始まった攻撃は誰にも止められません。
----------------
その他大勢の中に紛れて
目立った弱者は袋叩き
さっきまでこっちにいたおまえも
あっちの側から 撃つのかい?
(Woo woo...)
だって・・・やらなかったら きっと My turn
自分守るために放火魔
(Wow wow wow wow wow)
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
表立っては非難できない「目立った弱者」は、対象を攻撃する「その他大勢の中に紛れて」いることに安心して過剰に攻撃していきます。
「さっきまでこっちにいたおまえ」は、少し前まで攻撃される側にいた人のことでしょう。
ターゲットになる怖さを知っていても、また自分が攻撃されないために別の誰かをターゲットにします。
自分を守るためでも加害者になってしまえば余計に自分に返ってくることを恐れなくてはいけなくなるのに、少しでも安心するために攻撃に加わるのです。
大切なのは愛があること
----------------
明日は明日で別の誰かと
エンドレスパーティー(エンドレスパーティー)
欠席裁判 開かれるなら
そりゃ ツルむしかねえ I got it!
疑心暗鬼になって 誰もやめないチキンレースだ(チキンレースだ)
信じようよ 信じられようよ 信じ合わなきゃ世界は終わる
イェーーイ!!
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
今日ターゲットにならなくても明日突然攻撃されることもあり、そうしてネット上でのリンチパーティーはいつまでも続いていきます。
一日SNSを開かないでいるだけで「欠席裁判」のようにいつの間にかターゲットにされていることもあるでしょう。
その隙を与えないために無理して周囲とつるみ、誰に裏切られ攻撃されるかと疑心暗鬼になりながらSNSを使うことをやめられません。
しかし、そんな疑い合う関係ではなく、人と信じ合える関係を築くことがこの世界には必要です。
----------------
Wait a sec.
言いたいこと 言わせてくれ! イェー!
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
言いたいことを言えない人生はきっと苦しいものになります。
自分の「言いたいこと 言わせてくれ!」というストレートな言葉に共感できるのではないでしょうか?
MVでは田村保乃が堂々と歩いていきますが、誰も目線を合わせず近づこうともしていません。
これは誰もが人目を気にせず言いたいことを言える社会の姿を表しているのでしょう。
距離を保っていることが寂しく思えるかもしれませんが、これが人と本当に親しくなるための第一歩のように感じます。
----------------
ある日 ある場所で 敵対するチーム
呼ばれたパーティー(呼ばれたパーティー)
たった一つだけの ルールを決めて・・・
『他人のことは言わない』
誰も彼も自分の事だけ語り合った(語り合った)
そうか みんな 本当は 誰かに話しかけたかっただけなのか?
イェーーイ!!
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
ラスサビではこれまでとは趣向の違うパーティーが開かれています。
そこでは「他人のことは言わない」というルールに基づいて、全員が自分のことだけを話しました。
他人への悪口も批判もなく、ただ自分の好きなことを話す時間は予想以上に楽しかったのでしょう。
MVでメンバーが満面の笑みを浮かべながら踊るパフォーマンスから、好きな人と自由な言葉で話せることがいかに楽しく幸せなことかが伝わってくるようです。
それで主人公は「みんな本当は誰かに話しかけたかっただけなのか?」と気づきます。
攻撃したかったわけではなく、話しかけるきっかけが他になかったために攻撃するしかなかったのかもしれません。
結果は悪いものになってしまいましたが、その純粋な気持ちに立ち返ればSNS社会の悪い風潮も変化できるのではないかと希望が見えてきます。
----------------
飛んで来なくなった流れ弾
窓の外なんか見ちゃいない
週末の夜の街にも
銃声は聴こえない
≪流れ弾 歌詞より抜粋≫
----------------
誰もが流れ弾を恐れて家に閉じこもった結果、そこは「銃声は聴こえない」街に変化します。
一見平和な世界になったかに思えますが、「窓の外なんか見ちゃいない」とあるように人と人とが目を合わせることをしなくなった世界です。
確かに人に近づかなければ流れ弾に巻き込まれることはなくなりますが、人の温もりさえ忘れてしまいます。
櫻坂46が『流れ弾』を通して伝えたいのは、愛がなくてはならないということ。
愛がなければ傷つけ合うばかりですが、愛を持って人と向き合い言いたいことを正直に言う世界は銃声とは違う明るい人の声で賑やかになるでしょう。
曲の結末は悲しいものの、現実がこんな結末を迎えないように見方を変化させる必要があることを教えてくれます。
「流れ弾」のメッセージが心に刺さる
『流れ弾』は日本の新しい女性アイドル像を築いた欅坂46時代から描き続けている社会と個人の対立関係を、現代のSNS社会に当てはめた楽曲でした。しかし、以前のヒット曲とは異なり、自分の意思を貫く強さに加えて愛という温かな感情の大切さを強調していることもこの作品の重要なメッセージです。
ぜひ櫻坂46が見せる新境地に注目してください。