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「うれしいひなまつり」の歌詞は間違いだらけ?怖い・暗いと言われる童謡の意味を徹底解説

作詞者・サトウハチローと作曲者・河村光陽によって生まれた『うれしいひなまつり』は、女の子に人気の童謡の1つ。間違いが多く「怖い」とも言われている歌詞に込められた本当の意味を紐解きます。

間違いが多いと噂の童謡の歌詞を考察


女の子のいるご家庭はもちろん、女性ならいくつになってもひな祭りのシーズンは特別な気持ちになるのではないでしょうか。

日本人にとってなじみ深い伝統行事であるひな祭りは、女の子の健やかな成長を願うもので、雛人形を飾ったり祝いの料理を食べたりと華やかな趣があります。

そんなひな祭りの時期になると、よく耳にし歌う曲が童謡『うれしいひなまつり』です。

作詞者はサトウハチローで、昭和10年頃に娘のために雛人形を買ったことをきっかけに作詞したといわれていて、その歌詞に作曲家の河村光陽が曲をつけて発売されました。

ひな祭りの和やかは雰囲気にぴったりの童謡ですが、改めて歌詞を調べてみると当時作者が言葉を誤用したり勘違いしたまま歌詞にしたりして生まれた間違いがいくつも見えてきます。

さらには「怖い」と言われてしまうようなエピソードが隠れていて、知ると曲のイメージが変わるかもしれません。

では4番まである歌詞を詳しく考察していきましょう。

明かりをつけましょ ぼんぼりに


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あかりをつけましょ ぼんぼりに
おはなをあげましょ もものはな
ごにんばやしの ふえたいこ
きょうはたのしい ひなまつり
≪うれしいひなまつり 歌詞より抜粋≫
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1番の歌詞はひな祭りの情景を描いています。

「あかり(明かり)をつけましょ ぼんぼりに」という歌詞は、世代を問わず歌える親しみのあるフレーズですよね。

「ぼんぼり」とは雛飾りに飾られる長柄の灯具のことで、ろうそく立ての周囲が和紙や絹で覆われているのが特徴です。

ちなみにその優しく柔らかい光を灯す様子から「ほんのり」という言葉が転じてぼんぼりとつけられたと言われています。

雛人形はそもそもお雛様の結婚式を模したものです。

雛人形とぼんぼりが一緒に飾られるようになったとされる江戸時代の結婚式は、亥の刻(21時〜23時頃)に行われていたため、照明器具が必須でした。

ぼんぼりに火を灯すことで、お雛様の結婚式を温かい明かりで照らしてお祝いの手伝いをしてあげるようなイメージに思えます。

続く「もものはな(桃の花)」は、厄除けや不老長寿の意味を持つ花です。

桃の花を飾ることで、主役である女の子の人生が末永く良いものになるようにという願いが込められているのでしょう。

3段目に並ぶ「ごにんばやし(五人囃子)」は笛や太鼓、鼓や謡い手などの奏者のことで、この結婚式の宴を盛り上げています。

「たのしいひなまつり」の賑やかでわくわくするような様子が歌詞から伝わってきますね。

2番の歌詞が怖い?


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おだいりさまと おひなさま
ふたりならんで すましがお
およめにいらした ねえさまに
よくにたかんじょの しろいかお
≪うれしいひなまつり 歌詞より抜粋≫
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雛飾りの1段目に「すまし顔」で並ぶのは、天皇皇后両陛下を表す「おだいりさまとおひなさま(お内裏様とお雛様)」。

この歌詞から男雛と女雛を指して「お内裏様」と「お雛様」と呼ぶ人が多いかもしれませんが、実はこれは間違いです。

「内裏」とは天皇陛下の住む御殿や皇居を意味する言葉で、本来は男雛と女雛の一対の人形を指して「内裏雛(だいりびな)」と呼びます。

そのため「お内裏様とお雛様」という表現では、意味が重複してしまうのです。

雛飾りの男雛と女雛を呼ぶ時には誤用しないように注意が必要ですね。

後半を見ていくと、侍従である三人女官のうちの一人は「およめにいらしたねえさま(お嫁にいらした姉様)」つまりお雛様によく似て色白な顔をしています。

この「姉様」という表現は、作詞者のサトウハチローが自分の姉を暗示していたからという説があるようです。

サトウハチローにとって姉は仲の良い友人のようであり、ピアノの師でもある大切な存在でした。

婚約間もなく18歳の若さで結核で亡くなってしまった実の姉を、せめて歌の中だけでも嫁がせてあげたいという想いが込められていると考えられています。

とはいえ姉が亡くなっているという背景を知ると「しろいかお(白い顔)」もただ色白なのではなく、病気のために血の気が引いている状態を連想してしまうかもしれません。

『うれしいひなまつり』の童謡を怖いと感じる人がいるのは、この歌詞が原因となっているのでしょう。

「赤い顔した右大臣」は勘違いだった!


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きんのびょうぶに うつるひを
かすかにゆする はるのかぜ
すこししろざけ めされたか
あかいおかおの うだいじん
≪うれしいひなまつり 歌詞より抜粋≫
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3番では、金の屏風に映った明かりの光が「はるのかぜ(春の風)」に吹かれて揺れている様子が描かれています。

雛飾りの4段目の右手には「しろざけ(白酒)」というアルコール度数の高い酒を飲んで「あかいかお(赤い顔)」をした「うだいじん(右大臣)」の姿も見えます。

右大臣とは主に政務職の統轄をする役割の人で、平安時代には太政大臣や左大臣に次ぐ位の高い役職でした。

実はこの歌詞にも間違いがあり、雛段飾りの左右はお雛様から見た左右に従って配置されるので、正面から眺めた時の左右は逆になります。

この作者の勘違いから赤い顔をした方が右大臣だと思っている人が多いですが、本当は酔っているのは「左大臣」です。

とはいえどちらにしても、普段は重要な仕事を任されている人もひな祭りという祝いの席では一緒になってその時間を楽しみ、羽を伸ばしている情景が浮かんできます。

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きものをきかえて おびしめて
きょうはわたしも はれすがた
はるのやよいの このよきひ
なによりうれしい ひなまつり
≪うれしいひなまつり 歌詞より抜粋≫
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4番は、今まで雛人形を眺めていたこのひな祭りの主役の女の子の視点で歌われています

いつもとは違う晴れ着の美しい着物を着て帯を締めると、お姫様になったような特別で嬉しい気持ちになるでしょう。

「はるのやよい(春の弥生)」の3月3日という、うららかな日に家族の宝である子どもが喜んでいる姿を想像すると、この日から良い人生が始まる予感がします。

「うれしいひなまつり」は後世に残したい童謡

うれしいひなまつり』の歌詞には確かに間違いがいくつもあり、さらに悲しい背景を知ると少し怖いと感じてしまうのも無理はないでしょう。

それでも、娘や姉といった大切な家族を思って作られた愛情のこもった歌であることは間違いありません

正しい意味を知ったうえで、守り続けていきたい日本が誇るべき童謡です。

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